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こんにちは!リヴィです。
普段は産業機械を中心に、機械設計の仕事をしております。
機械設計という仕事は、機械を設計するために非常に広範囲に及ぶ知識が必要になったりしますが、実は
などによって必要な知識の分野が大きく偏ることが多いです。
そんな中で、ほぼすべての業界・機械において必要となる知識の一つが「ねじ」です。
機械の部品点数を数えると、ほとんどの機械で最も多いのがこのねじで、場合によってはねじだけで数千点にまで及ぶこともあります。
「ねじ」といっても種類がめっちゃ豊富なので、その中から条件に合うものを一つ一つ選択していく必要があります。
ただ、ねじについて勉強し設計スキルをあげたいと思っていても、
などのような状況になることはあるあるで、結構な初心者泣かせな部分があります。
「せっかく参考書買って必死に数式とか理解したのに、実務だとほぼ使わないじゃん!」なんてこともありました笑
こういったことが分からずに闇雲に勉強しようと思っても、なかなかモチベーションを維持するのが大変で「気がついたら勉強やめてた」なんてこともよくあると思います。
そこで今回は「設計者のレベルに応じて、どういった部分からねじの勉強をしたら良いのか」といったことについて解説していきます。
この記事が、ねじに関する勉強のロードマップとして役に立てれば幸いです。
目次
わ、わたし、最近機械設計をやりだしたばかりなんですけど・・・
そんな人のために、どういったところを勉強すればよいのかを解説していきます。
ねじって、結局は部品を固定するのに使う部品でしょ?
まぁ間違ってはいないのですが、これだけだと「ねじの知識」としてはかなり雑なレベルで、設計するための知識としては不十分です。
実際のところ、
といったことが多分にあり、機械設計者はこれらを理解した上で適切なねじを選定する必要があります。
詳しくは以下の記事で解説しておりますので、ご参照ください。
「機械設計の世界へ足を踏み入れた」ということは、おそらく高校物理や高校数学、材料力学をある程度は勉強したことがあると思います。
ではそれらの知識を使って、「なぜねじを締めると部品を固定することができるのか?」を説明できるでしょうか(特に難しい数式はいらないです)。
「あのらせん形状の部品がはめあうと、何で部品が固定できるか」って、言われてみると意外と説明できなかったりします笑。らせん形状がはめあっただけでは、部品を固定できないですからね!
ここの理解が不足していると、
など、実務において様々な支障が発生します。
「なんかちょっと自信ないなぁ」「言われてみれば確かに何でだろ・・・?」という人は、ぜひ以下の記事をご参照ください。
超初心者向けに書いている記事なので、読みやすいと思います。
機械設計の仕事に関する知識は、まだまだ言語化がされておらず、基本的にもかかわらずベテランのおっちゃんの頭の中にしかないノウハウがたくさんあります。
そのため、大学に通ってちゃんと単位を取って卒業した優秀な学生でも、設計の仕事をいざやってみると全然できないということはザラにあります。
ベテラン設計者に教えを請うても、口を揃えて「そんなの、経験と感覚や!」と言われます笑。
でも、そういった基本的なノウハウを教授できなかったばかりに、
なんてことが起こっていては、なんともやっていられないような気持ちになりますよね。
「せめて自社内だけでも、そのへんのノウハウを整理・水平展開してくれくれよ!」とめっちゃ思いましたが、大企業ですらまともにできていないところが多いです・・・
そのような方は、以下の内容について勉強しておくと良いかと思います。
「さぁ、いざボルトをどれにするか選ぼう!」と言いたいところですが、ちょっとググれば分かるとおり、ねじの種類ってものすごい種類があり
といった条件ごとにねじがあります。
その中から、設計する装置に最も適するねじを選ぶことができてこそ機械設計だといえます。
そこで、具体的な使い分けの部分なども含めて、以下の記事で解説しておりますので、よろしければご参照ください。
先ほど初心者の方向けに「ねじによる固定の原理」について解説しましたが、ここではもうちょっと先まで足を踏み入れてみましょう。
このあたりの話はねじに関する書籍にて解説されていることがしばしばあります。
私自身もねじ関連の参考書は複数持っていますが、読む度に思うのが「うん、めちゃくちゃわかりにくい!」ということです笑
私自身も、何十回と読み直し、紙に図などを書きながら噛み砕いていって、ようやく理解できました笑
そのような方に向けて記事を書いています。
この記事を読み進めれば
などなど、ねじに関する多くの知識の土台が完成し、非常に理屈が理解しやすくなります。
数式を多く使用していますが、その分図も多く掲載しておりますので、ちょっとずつ読み進めていただければ幸いです。
設計のとき、いざボルト・ナットを選定しようとするとつまづきやすい「どの材質のボルトを使えばよいのか?」です。
機械の設計でよく使う材質は「鉄」ですが、厳密に言うと「鉄系の合金」です。
私も最初は勘違いしていましたが、機械メーカの業界でいう鉄っていうのは「Fe」ではなく、「鉄系の合金」のことをいい、合金の種類ごとに呼び名(SS400とか)があります。世の中の機械で使われているほぼすべての鉄が「合金」ですからね笑
ボルトやナットの選定は、まずは必要な強度に着目する必要がありますが、そこで重要となる指標が「強度区分」や「保証荷重」です。
ボルトのサイズや本数を考える上でも重要な指標となりますので、「そういう指標があるんだなー」程度に勉強しておくと良いかと思います。
ボルトやナットの強度について重要となるのは、比較的大きい負荷、大きい力を受ける部分についてです。
その一方で、機械のちょっとしたカバーやブラケットについてはそこまで高い強度を求められないことがほとんどで、そういった部分にはよく薄板材などが使われます。
なのですが、
んじゃ、テキトーにねじで固定できるようにしておけばいいんだね?
とはなりません笑
大きい負荷がかからないところに使われる部品に求められるのは「軽量化」であることが多いですが、軽量化をするために板厚を小さくしていくと問題になるのが「ねじのはめあい長さ」です。
「ねじのはめあい長さ」というのは正式な名前っぽいのですが、個人的にこの用語が通じる人は少ない気がします。「ねじの掛かりが何山分か?」といった方が通じやすい気がします。
「ボルトを締めた際にめねじと噛み合っている部分の長さ」のことですが、設計者はよく「ねじ山の数」でカウントしていることが多いです。
このねじ山の掛かりが少ないと、めねじのねじ山が破れてしまいますし、かといって不用意にめねじをゴツくすると軽量化できなくなってしまいます。
さらにこのねじ山の数については、ねじ部を設計する度に頭に入れて置かなければならないにもかかわらず、多くの設計者が感覚で設計してしまっているのが現状です。
そこでこの「ねじの掛かりが何山分か?」について、以前私が調査した記事がございますので、よろしければチェックしてみてください。
ここまでは力学とか強度などを中心に解説してきましたが、設計者が考えるべき要素はまだまだあります。
実は「ボルトで部品を固定する」といっても様々な方法があって、それぞれ作業がしやすい・しにくいなどといった特徴があります。
この「作業がしやすいか・しにくいか」は、現場経験も重ねていかないとなかなか想像しにくいところではあるのですが、
実はQ(品質)・C(コスト)・D(納期)の3大要素にダイレクトに影響する重要なものなのです。
設計ってホントに奥が深いんですよねー笑
ボルトを使った固定方法にはいくつか代表的な構造がありますので、教科書的に参考にしてもらえたら嬉しいです。
設計の仕事が始まってしばらくした頃になると、ふと上司から、
ものづくりで大事なのは「現場・現物・現実」の三現主義や!よし、そろそろ現場行って、感覚身につけてこい!
なんて言われ、普段は事務所で仕事をしている機械設計者も現場デビューを果たすことになります。
そんなとき、
現場かー。まぁ、たまにニトリで家具組み立てたりしてるから、大丈夫でしょ!
いえいえ、ニトリの家具を組み立てると、機械の組立をするのとでは、必要な知識が全然違います。
設計者が現場に出た際に、恥をかいたり、職人さんに怒られたりしないよう、以下のような最低限の知識は身につけて起きましょう。
現場経験の浅い方にあるあるですが、「ねじ締めて部品を取り付ける」という簡単な作業でも、意外と時間がかかったりします。
私も「そんなモタモタしてたら終わらんで?」って言われてました。一方で、普段はお腹がぽっこり出ていて動きの遅い現場のおっちゃんは、ボルト締めるのめっちゃ早いんですよね笑
素人には一見すると何が難しいのかがわからないかと思いますが、何も考えずにねじを締めちゃうと、ちゃんと締めたはずのねじが緩くなっていたりします。
え!?そんなこと、ニトリの説明書になんて書いてなかったよ?
そりゃ、ニトリの家具はそもそも組立に精度がいらなかったり、素人でも組立がしやすいよう設計されているので当然です。
ただ、機械となるとニトリとは話が違ってきます。
家電なんかはおそらくこの辺をしっかり管理しながら組立ててます。もちろんボルトの締め方については説明書には書いてないですが、そもそも素人が簡単にアクセスできないよう工夫して設計されていたりしますからね笑
なかなかねじを締める練習って自宅とかでする機会はないのですが、知らなかった方は知識だけでも身につけておきましょう。
量産品の製品では少ないかもしれませんが、受注生産品の機械だとボルトをトルク締めしたあとで「合いマーク」というマーキングをします。
ねじのトラブルで多いものの一つが「ねじの緩み」なのですが、このねじの緩みというのは言葉以上に厄介なのです。
何故かというと、「すぐに発見できないから」です。
ねじが緩むかどうかは、機械を動かし始めてから数ヶ月とか数年とか経ってから起こることが多いです
さらには、ねじが緩むんだ場合
などなど、被害が大きいものも珍しくないです。
そこで、そういったトラブルを防ぐためのねじの管理方法の一つが「合いマーク」となります。
「ボルトの締め忘れ」もよくやりがちなトラブルですが、「合いマーク」を正しく使えばそれを防ぐこともできます。
現場に出るまでの間に、ぜひ予習をしておきましょう。
機械のトラブルが起こると必ずいるのが、
そもそもトラブルが怒らないよう、ちゃんと考えて設計しておけやー!
という人です。
お客さんからクレームがあることはもちろんですが、社内からもこのように言われ、設計者が公開処刑になることがあります。
ホントに炎上しているときって、周りには敵しかいないような気持ちになります。トラブっている時に一番頼りにならないといけないはずの品質保証部すら敵にまわることがありますからね笑
そんなときは結構心が病みそうになりますが、それでも機械設計のプロならば真摯に受け止め、原因究明・対策・予防に泥臭く取り組んでいく必要があります。
ねじは機械に使われる部品の点数が多いせいか、トラブルの数もとても多い部品です。
機械のトラブルが起こると、ほぼ間違いなく「設計者」が呼び出されます。
トラブルを解決するためにはまず原因究明が必要なのですが、設計者はそのトラブル解決を考えるのも仕事の一つになります。
機械を作るだけが設計の仕事ではないのです笑
そんな時に、よくあるトラブル事例について知っておくことは、問題解決を効率よく行うに当たって非常に重要となります。
これについて、以下の記事をご覧ください。
そしてこういったトラブルの中でも非常に厄介となるのが「ねじの緩み問題」です。
ねじが緩んだら、また締めておけばいいじゃん
と思うかもしれませんが、それは対処療法でしかありません。
「いつ頃緩むのか」なんて誰にも予測できませんし、ねじが緩んだことによって機械が壊れたら大惨事ですし、コンタミの可能性だってあります。
そのため、「なんで緩んだのか?」という原因についてしっかり検討し、適切な対策を打つのが基本的な考えとなります。
原因究明ってやってみるとめっちゃ難しいんですが、せめてアタリがつけられるようにしておくのが重要です。
ねじのトラブルでよくある事例と、中でもが緩む原因・仕組みについて、以下の記事で解説しておりますので、よろしければご参照ください。
機械設計の仕事を長くやっていると、高確率で遭遇するのがやはり「ねじの緩み」です。
ねじの緩みは本当に厄介で、設計時に「緩むかどうか」を予測することも難しいです。
合いマークは「ねじの緩みを発見しやすくする手助け」にはなりますが、「ねじの緩みを予防する」という効果はありません。
量産品なんかだと、耐久試験やったりしますねー。手間と時間はかかりますが、大問題を起こして信用を失うぐらいなら安いもんです。
一方で、そもそもねじが緩みにくいような方法を知っておくことも非常に重要です。
そのため、ねじを緩み止め対策の方法の引き出しを多く持っていられるよう、以下の記事の内容をざっくり頭に入れておくと良いかと思います。
また、ねじの緩み止め対策として「ネジロック」という、ねじ専用の接着剤も非常に有効です。
もし機械設計の仕事を長く続けるのであれば、ねじの専門書を購入しておくことをおすすめします。
確かにねじに関する資料については、本ブログはもちろんのこと、他にもさまざまなホームページなどで簡単に入手可能です。
ですが、こういったブログやホームページについては、権威性が低いという欠点があります。
学生時代の研究で、参考文献にWikipediaと書いて怒られた人いませんか?笑。引用元が技術ブログというのは、これと似たような話です。
今でも機械設計は、各設計者の経験と感覚によって構造が決められている部分も多いのですが、そうではなく「なぜそのような構造を採用したのか?」という設計根拠を示した資料が残っていることが本来の姿です。
プロジェクトによっては、そういった資料を作り込んでお客さんへ提出し承認をもらえなければ、そもそも製品を作る事ができなかったりします。
審査の厳しいお客さんだと、1つのことについて「なんで?」を5回ぐらい聞かれます笑
技術ブログ等は「理解がしやすい」というメリットはあるものの、そういった資料を作る際の参考文献としては使用しにくいという特徴があります。
ねじに関して言うと、引用元として権威性が高いのは
等が挙げられます。
このうち、ある程度読みやすく、かつ入手しやすいのが「ねじについて研究されている方が執筆した本」です。
こういった業務をこなしていくためには「経験や勘」だけでは全く歯が立たず、必ず理論武装が必要となります。
以下に、ねじの理論武装をする上で非常に役立つ書籍を紹介しております(機械設計便覧の参考文献になっているレベルです)ので、よろしければ、参考にしてみてください。
ものづくりのススメでは、機械設計の業務委託も承っております。
ご相談は無料ですので、以下のリンクからお気軽にお問い合わせください。
機械設計の無料見積もり
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ねじのトラブル事例と予防・対策
【解説】ボルトの種類・特徴・使い分けについて