ボルトを使う時って、ワッシャーを入れるのが当たり前みたいになっているけれど、そもそもなんでワッシャーなんて入れるの?あんな輪っかの部品を入れる意味なんてあるの?
そんな疑問について、お話ししていきます。
機械を製作する上で、最も使用頻度が高いものがボルト・ナット・ワッシャーです。
これらは、部品と部品とを固定する用途として、幅広く使用されております。
ただよく考えると、部品を固定するだけであれば、ボルトとナットさえあれば事足りる話ではあるのですが、ワッシャーについては「とりあえず入れておくもの」みたいな暗黙の常識になっていることが多く、そもそもなぜ「ワッシャーが必要なのか」という部分は議論がされないことが多いです。
ワッシャーとは、一般的にはボルトの頭と母材との間に挟み込む、ドーナツ形の板状の部品です。マンションの建設や補修などの工事現場の近くを通ると、よく道に落ちていますよね。
ただ、ワッシャーにもきちんした役割があるため、むやみにワッシャーを取り除くのはよくありません。
そこで今回は、ワッシャーの役割について解説をしていきたいと思います。
この記事を読んで、ワッシャーがどういった役割を果たしているかを理解し、部品の選定に役立てていただければと思います。
ワッシャーには様々な種類がありますが、単にワッシャーというと、一般的には平ワッシャーのことを指します。
この平ワッシャーの役割は主に次の2つです。
ワッシャーを入れることによって、母材の陥没を防ぐことができます。
ボルトは締めるときに軸力が発生し、この軸力によって母材同士が固定をされるのですが、この軸力が狭い範囲に集中してしまうと、その力に母材が耐えられず、陥没をしてしまうのです。
母材が陥没してしまうと、軸力が低下してしまい、だんだんとボルトが緩んでいってしまうのです。
そのため、母材にかかるボルトの軸力を分散させることで、母材の陥没を防ぐ目的でために、ワッシャーが挿入されるのです。
実際に比較をしてみましょう。
例えば、ねじの呼びがM6、バカ穴の径がφ6.6mm、発生軸力が4300Nだとすると、母材に発生する応力はおおよそ以下のとおりとなります。
六角ボルト・六角ナットのみ (座なし) |
六角穴付きボルトのみ | 平座金 | |
---|---|---|---|
座面の面積[mm2] | 52.4 | 34.9 | 62.9 |
発生応力[MPa] | 82 | 123 | 68 |
発生応力の比 (平座金の場合を1とする) |
1.2 | 1.8 | 1 |
例えばアルミの中でもよく使われるA5052の、0.2%耐力は「90MPa程度」なので、平座金がないと陥没する可能性がありますね。
母材陥没のトラブルは、以下のケースでよく起こりやすいです。
このような場合は、普通のサイズのワッシャーではなく、面積の広いワッシャーを入れておくことを強くお勧めします。
ただ、広いものを使うときは、周辺の部品(特に隅部のRや、板金物の曲げR)・溶接ビードとの干渉がないかはチェックしましょう。
平ワッシャーを入れることによって、母材の損傷を軽減することができます。
ボルトの表面はツルツルにはなっていないので、例えば、柔らかい母材を、硬いボルトで締め込んだときに、母材側が傷まみれになってしまい、塗装などが剥がれてしまうのです。
「多少の傷なんて気にしない!」と言っている人もたまにいますが、傷というのは「見た目」の問題だけではなく「錆び」の問題にもつながってしまうのです。
実は塗装は、見た目の問題だけではなく「母材の錆止め」の役割も果たしているため、それが剥がれてしまうのは問題となるのです。
そのため、ボルトと母材との間に緩衝の意味でワッシャーを入れることで、母材の損傷を防ぐことができるのです。
ワッシャーの中には表裏があるものがあります。
片面は、角が丸みを帯びており、表面はつるつるで光沢を帯びています。
もう一方は、角部に若干のバリがあり、光沢は帯びていません。
「どちらの面がどっち向きか」といった向きがあるわけではないようですが、
若干のバリがある側を母材にしたほうが、軸力の分散という意味では若干有利となります。
ただし、母材の塗装が剥がれるのを嫌ったり、わずかでも損傷させたくない場合は、丸みのある側を母材にするのもいいかと思います。
適用するケースごとに、検討してみてください。
これは、ワッシャーの一種である「スプリングワッシャー(ばね座金)」が該当します。
スプリングワッシャーとは、ドーナツ状の一部が切れ、ねじれたような形をしているワッシャーです。
スプリングワッシャーを押しつぶすように力を加えると、このねじれた部分が「ばね」のような役割をし、反力を発生します。
この現象を利用し、ボルトと平ワッシャーとの間にスプリングワッシャーを挿入すると、スプリングワッシャーのばねの反力によって、突っ張ることができます。
そのため、ボルトが若干緩んだとしても、緩みの進行を食い止めることができるので、ボルトの落下を防止することができます。
スプリングワッシャーの注意点として、使用をする際は必ず平ワッシャーとセットであることが必要です。
詳しくは、こちらの記事で解説をしております。
ボルトの緩み止めに使われるワッシャーとして代表的なのが、ノルトロックグループという会社が製造・販売してる「ノルトロックワッシャー」という特殊なワッシャーです。
ボルトを適切に締めたつもりでも時間が経過すると、小さな振動や、地震などの揺れによって、ボルトが徐々に緩んでしまう場合があります。
多くの場合、ボルトの緩み止め対策はナットで行いますが、材料にめねじを立てて直接ボルトを締め付けるなどの「そもそもナットを使わない場合」にはナットによる緩み止めを行うことができません。
そんなときには、ノルトロックワッシャーを使って緩み止めを行うこともできます。
ノルトロックワッシャーの詳しい内容については、こちらの記事で解説をしておりますので、よろしければご参照ください。
ねじ部からの流体の侵入や漏れを防止する目的で使用されるのが、「シールワッシャー」と呼ばれる特殊なワッシャーです。
シールワッシャーは、ドーナツ状の金属の板の内側に「ゴム」が使われているような構造をしています。
ボルトで固定した部分というのは、ほとんど隙間がないようには見えるのですが、それでもわずかに隙間が存在します。
そこで、シールワッシャーを使用すると、ボルトを締めて軸力が発生させたときに、ゴムの部分が隙間を埋める役割を果たしてくれるので、外部からの流体の侵入や、内部からの流体の漏れなどを防ぐことができます。
最近の電気機器の中には、「防水」や「防塵」といった性能が求められているものもあります。(この性能を示したものを「IP規格」といいます)
モーターやシリンダーなど、高いIP規格を満たすために、シールワッシャーは活躍しています。
この目的で使用されるのが、「球面座金」と呼ばれる特殊なワッシャーです。
「アンカーボルトを打つ時にボルトが傾いてしまった!」とか「製缶のフレームの上に基準面となるプレートを取り付けたい」といった時に、それらをある程度補正することができます。
具体的な使い方については以下の記事で解説しておりますので、よろしければ読んでみてください。
今回の内容をまとめると、以下の通りとなります。
設計の際に役立てるよう、ワッシャーの具体的な寸法は以下の記事にまとめております。
今回は以上となります。ご一読ありがとうございました。
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