スケールとか定規に「JIS 1級」って書いてあるものがあるけれども、これってどういう意味?「JIS 1級」があるなら「JIS 2級」もあるの?何が違うの?
このような疑問を持った人へ、お答えしていきます。
結論をいうと「JIS 1級」とは「そのスケールがJIS(日本産業規格)で定められたある許容差内で測定が可能であることが保証されている」という意味です。
私は普段、機械メーカーで設計の仕事をしております。
普段は事務所の自分のデスクで、設計の業務をしておりますが、購入部品のカタログに載っている部品の大きさや、自分が設計をしている部品の大きさが実際どの程度の大きさなのかという感覚をつかむために、スケールを使用します。
スケールは別名「金属製直尺」「ものさし」「鋼尺」「直尺」など、呼び方がたくさんあります。ちなみに「定規」も機能的にはほぼ一緒ですが、定規の形状は必ずしもまっすぐな板状ではなくてもよいため「スケール」はもちろん、「三角定規」「L形定規」「T形定規」なども定規の一種です。
皆さんも、ニトリやIKEAなどで買い物をする時に、大きさや長さを把握するためにメジャーを使うことがあるかと思いますが、そのような感じで私はスケールを使用します。
そのため、私は作業着の胸ポケットの中に150mmのスケールを常に入れたまま、仕事をしております。
ところで、このスケールをよく見てみると「JIS 1級」と書かれていたりします。
一方で、100円ショップで購入したスケールには、このような表記がないものがほとんどです。
実はこのJIS 1級と書かれているかどうかで、測定結果がどの程度信頼できるかが変わってくるのです。
そこで今回は、スケールに書かれた「JIS 1級」の意味について、詳しく解説していきます。
「JIS1級」などというのは、JIS B 7516で定められている「等級」のことを指しており、簡単にいうと「どれだけスケール長さが正確なのか(許容差)」というものになっております。
※ネットで見れるJISの無料版(簡易閲覧)は、図や表がうまく表示されませんし、内容が古い場合があります。見やすくて、最新の資料がほしい人は「JISハンドブック」を購入するのをオススメします。
もちろん、許容差がなるべく小さい方が正確であるため、測定器として優れているということになります。
この等級は全2種類で、「JIS 1級」と「JIS 2級」とがあり、その内容は以下の通りとなっております。
等級 | 許容差[mm] |
1級 | ±{0.10+0.05×(L/0.5)} |
2級 | ±{0.10+0.10×(L/0.5)} |
ここで許容差の計算には以下のようなルールがあり、これに基づいて計算されます。
少々わかりづらいかと思いますので、具体例で説明いたします。
今、室温が20℃の環境で、あるものの長さを「JIS 1級」のスケールで測定したところ「610mm」であったとしましょう。
ここから、このスケールの許容差を計算します。
まず「610 mm = 0.61 m」ですので、許容差の計算式に代入する「L」は、0.61 mから単位「m」を取り除いて
$$L = 0.61$$
となります。
続いて「L/0.5」を計算しますが、1未満の端数は切り上げであることに注意すると、
$$L/0.5 = 0.61/0.5 = 1.22 \simeq 2$$
となります。よって、JIS 1級の許容差の計算式を使うと、
$$\begin{align}
許容差 &= \pm{0.10+0.05\times(L/0.5)}\\
&=\pm{0.10+0.05\times2}\\
&=\pm0.2
\end{align}$$
となります。よって610mmという測定結果は、JIS 1級のスケールですと「610±0.2mm」となるのです。
許容差ですが、実はいちいち測定値ごとに計算をしなくとも、許容差のパターンは数パターンしかありません。
なぜなら、そもそもスケールはどんなに長いものでも、目盛りの最大が2000mmまでしかないからです。
各寸法における許容差についてまとめると以下の表となります。
測定値[mm] | JIS 1級の許容差 | JIS 2級の許容差 |
500以下 | ±0.15 | ±0.20 |
500を超え 1,000以下 | ±0.20 | ±0.30 |
1,000を超え 1,500以下 | ±0.25 | ±0.40 |
1,500を超え 2,000以下 | ±0.30 | ±0.50 |
JISの等級は、測定値の許容差が重要な内容ですが、それ以外にも様々な許容差も含んでいます。
「スケールの目盛面」と「その端面」とが直角でないと、正確な測定結果を得られません。
そのため、JIS等級では直角度に対しても規定されており、その内容は以下の通りです。
直角度とは、基準となる平面や直線に対しての、対象となる平面や直線の直角の度合いを示します。たとえば、基準面に対して、ある平面の「直角度0.1」であるということは、「2つの平板を基準面に垂直、かつ間隔が0.1mmで平行となるように立てた時、対象となる面がその2つの平板の間(0.1mm)の中に収まっている」という意味になります。
JIS 1級の直角度 | JIS 2級の直角度 |
0.035以下 | 0.050以下 |
目盛の面の真直度についても、規定があります。
真直度とは、理想的に真っ直ぐな(幾何学的に正しい)直線に対して、対象となる線がどれだけ真っ直ぐになっているかを表します。例えば「真直度0.1」であるということは、「間隔が0.1mmとなるように平行に引かれた理想的に真っ直ぐな2本の直線の間に、対象とする直線が収まっている」という意味になります。
もし真直度が悪い場合、目盛りの面がふにゃふにゃ曲がっていたり、斜めになっていたりするということになります。
わかりやすく言えば、スケールを使って鉛筆で直線を引いても、その線が直線にならないということになりますので、進捗度は重要な指標となります。
真直度の場合は、使用するスケールの大きさごと(最大目盛りごと)に規定値が決められております。
スケールの最大目盛り(呼び寸法)[mm] | JIS 1級の真直度 | JIS 2級の進捗度 |
150 | 0.23以下 | 0.36以下 |
300 | 0.26以下 | 0.42以下 |
600 | 0.32以下 | 0.54以下 |
1,000 | 0.40以下 | 0.70以下 |
1,500 | 0.50以下 | 0.90以下 |
2,000 | 0.60以下 | 1.10以下 |
さらに、JISの等級にかかわらず、規定されているものもあります。
これらは真直度と同様、使用するスケールの大きさごと(最大目盛りごと)に規定されており、その内容は以下の3つです。
これを知っておくと、例えば部品同士の隙間を測るのに、測定器具が手元にない状況などで、隙間測定などに使用することができたりします。
(機械の据付現場は、測定器具が用意されていることはほとんどないため、こういった知識は本当に重宝します)
これについてまとめたものが、以下の通りです。
スケールの最大目盛り (呼び寸法)[mm] | 全長寸法[mm] | 全長の許容差[mm] | 厚さ[mm] | 厚さの許容差[mm] | 幅[mm] | 幅の許容差[mm] |
150 | 175 | ±5 | 0.5 | ±0.05 (±10%) | 15 | ±0.3 (±2%) |
300 | 335 | ±5 | 1.0 | ±0.10 (±10%) | 25 | ±0.5 (±2%) |
600 | 640 | ±5 | 1.2 | ±0.12 (±10%) | 30 | ±0.6 (±2%) |
1,000 | 1,050 | ±5 | 1.5 | ±0.15 (±10%) | 35 | ±0.7 (±2%) |
1,500 | 1,565 | ±5 | 2.0 | ±0.20 (±10%) | 40 | ±0.8 (±2%) |
2,000 | 2,065 | ±5 | 2.0 | ±0.20 (±10%) | 40 | ±0.8 (±2%) |
今回のポイントをまとめると、以下の通りとなります。
ちなみに私が使っているスケールはこれです。使いやすく、かなり気に入っています。
目盛の長さがズラされているので、目盛が読みやすいです。
裏面は、スケールを縦向きにした状態でも読みやすいように配慮されています。
なお、JISの正式な資料が必要な人は、以下のハンドブックを使用するとよいです。
ものづくりのススメでは、機械設計の業務委託も承っております。
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