機械メーカーで設計の仕事をしようかと考えているけれど、説明会とか参加しても良いところしか言ってくれない。就職してから後悔したくないから、悪いところも知っておきたい。
このような疑問・悩みについて、お話ししていきます。
私は現在、機械メーカーで設計の仕事を始めて5年目です。
大学で機械系の学問を選考していた人の半分近くは、メーカーに就職をしています。
ですが、社会人になってからメーカーに就職をした友達や、会社の同僚と話をしてみると、「最初していた仕事のイメージと違う」「想像以上にきつい」といった声もちらほら聞こえます。
ぶっちゃけた話、私が就職前に想像していた設計の仕事と、この4年半の間にやってきた仕事とは、全く違うものとなっております。
私の場合は「もの」や「機械」と向き合って仕事をしている時が一番楽しいのですが、設計の仕事はそれだけとはいかず、そんなときに「きつい」と感じることが多いです。
そこで今回は、機械設計の仕事のきつい面について、もっと具体的な内容についてお話ししていきます。
この記事を読んで、機械設計の良いところ、悪いところを理解し、職業やキャリア選択をするための判断材料にしていただければ幸いです。
これはよくある話ですが、入社してもしばらくは設計をやらせてもらえません。
設計の業務は、大学では習わない内容が多いですし、覚えなければいけない知識も膨大なので、すぐにはできるようになりません。
一方で、指導をしてくれるような上司は大抵は忙しく、「わからないこと」や「やるべき業務は何か」を聞きたくても聞けないことが多いです。
そのため入社しても、設計としてスタートラインに立てないのです。
ちなみに、私が最初の頃にやった業務は、カタログ棚の整理でした。
本屋さんに置かれているぐらいの大きな本棚に、カタログがびっしり収納されていたのですが、並びがぐちゃぐちゃでしたので、それを「モーター系」「ねじ・ボルト系」など、同じ種類になるように並び替えるというのを、一人でやっていました。
他部署の設計として入社した同期や、後輩は何をしていたかと言うと「放置プレイされている」「庶務の人の手伝い(会議資料のコピー、ホチキス留め、お茶出し、シュレッターのゴミ出し)」「倉庫の整理(図面、ヘルメット、ダンボール、ファイルの整理整頓)」あたりが多かったです。
そして、アルバイトのような業務ばかりにも関わらず、日報を出すよう求められます。
その日の業務から何を学んだかを必死にひねり出して日報を書くのですが、「これは日報じゃなくて感想文だ!」と何度も言われました。
ぶっちゃけ、アルバイトのような業務をやっていても、そこから設計として学べることは何もありません。
考えが古い上司がよく言いがちなのですが、「とりあえず現場を見に行ってこい」と言われたりします。
ですが、とりあえず現場を見たところで、まるで博物館に遊びに来ているような気分にしかならず、そこから大きなことを学べるようなことはほとんどありません。
上司が「とりあえず現場に行ってこい」という理由は「三現主義」の考えがあるためであることが多いです。
三現主義とは「現場」「現物」「現実」という、3つの「現」がつく言葉をまとめた呼び方です。何か問題が起こった時には、机に座ったまま考えるのではなく、まずは問題が起こった現場に行き、現物をよく観察して、現実をしっかり認識した上で解決に取り組むことが非常に重要であるという考え方です。
この三現主義の考え方が、機械設計においては非常に重要であることには間違いありません。
しかしそれは、解決するべき問題がある場合に限ります。
設計業務の経験がなく、何が何だかわからないまま現場に行くことは、三現主義ではありません。
そこを勘違いしている上司をたまに見かけます。
私も、隣の部署の機械の案件について「とりあえず3ヶ月間、一人で海外に行ってきて」と言われたことがあります。
隣の部署の機械なので、当然私はそもそもどういう機械なのかすら知りません。
私が「とりあえず3ヶ月も一人で海外に行ったとして、私は何をするんですか?」と聞いても「何かしら業務はあるから。」と言われました。
そして「なぜ行かないといけないんですか?基本は嫌です。」というと「他のみんなはもう行っていて、あなただけ行っていないから、順番的にあなたになるんだよ。」と言われました。
そしてよくわからない出張が終わると、出張報告書を出した上で、プレゼンをしなければならないのです。
周りの人に相談をしても「とりあえず行ってきなよ。」と言われるだけでしたので、私はものすごく抵抗をした挙句、出張の話を白紙にしてもらいました。
現場に行くなら「機械の図面が読めるようになっていること」「上司についてきてもらい、現物の機械や設計に関する解説をしてもらえること」「見るべきポイントがわかっていること」などが必要です。
設計業務をほとんどやれないにも関わらず、入社して一年以内に、一年間の業務を通じて得たことを使って、成果物を求められます。
私の会社の場合は役員の前でプレゼン、友人の会社の場合は論文作成でした。
ですが、いざそれの作成に取り掛かろうにも、作成するためのネタになるような業務をしていないので、ほとんど何も書けないのです。
そして、役員たちから辛口のコメントや、辛口の評価をもらい、とてつもなく気分を悪くするのです。
誰得なのかよくわからないのですが、いまだにそういう文化があります。
設計業務を始めたばかりの頃はわからないことや、覚えなければならないことも多く、一つ一つの業務に時間がかかります。
また、どのような機械の構造にするかを考えるのも、ある程度の経験がないとかなり苦労します。
そして、調べ物をしている時間や、物事を考えている時間は、目に見えるアウトプットが一切発生しないため、上司からは「いつ終わるの?」とプレッシャーをかけられることもあります。
ちなみに私がやったのは「手作業をやっている工程に機械を導入して効率化をはかりたい。だいたい費用とかどの程度かかるかを知りたい。」というお客さんへの対応です。
お客さんのところに出向いて、現場の状況を確認し、職場に戻って構想を練って、お客さんにプレゼンをし、その後基本設計、ベンダーとの打ち合わせ、概算金額の見積の提出をするというものでした。
ここまでを平均して1〜2ヶ月という短い期間でやり、そういった業務を数件行いました。
数件を同時に対応したこともあります。
一生懸命やったとしても、受注できることは多くないため、お客さんへ対応した労力が全て水の泡になることもしばしばあります。
そのため上司からは「とにかく早く見積提出をしろ。」と言われるのですが、機械の構造を考える時間が短すぎるとため、どんどん業務の質が落ちていくということに悩まされていました。
その他できついと感じるところは、以下の記事にまとめてあります。
よろしければ、ご覧ください。
設計業務をはじめてまもない頃は、とにかく設計業務をこなすことが重要でした。
名目上はその業務専門の部署があるのですが、結局対応するのは設計ということもよくあり、
営業活動、企画、研究開発、見積、組立て現場の監督、予算管理、工程管理、検査立会い、試運転・性能試験、不具合対応、アフターサービス、在庫管理まで設計がやることがあります。
例えば「不具合対応」は一見すると品質保証の業務のように思えるのですが、品質保証の人は設計ができませんので、その対策をするのは設計がやらなければなりません。
確かに機械のことを最もよく知っているのは設計ではありますが、さすがに業務の負担が重くないか?と思うことがしばしばあります。
その上、給料は他部署と変わりません。
入社して3年目〜5年目ぐらいから、これについて悩む設計の同期が多く、何人かは転職していきました。
これは私の会社だけではなく、別の機械メーカーで設計をやっている友人の会社でも同様でした。
そうなると、設計職の人がどんどん不足するのです。
設計業務以外の業務が一気に増えたせいで、設計職なのに設計ができる時間がほとんどありません。
設計として出世をしていくと、担当するプロジェクト全体をコントロールする役割を担うことが多いので、
野球で例えると「選手」から「監督」の立場にならなければならないのです。
上司のスケジュールを見ていると、たくさんの会議がずらずら入っている日が多いです。
会議から帰ってきたかと思えば、他部署やベンダーへの業務指示のメールや電話、次の会議の資料作成などを行なっていることがほとんどです。
図面を見る日は少なくなっていき、代わりに工程表や予算管理表を見ている日が多くなっているように思えます。
今回の話をまとめると、以下の内容となります。
この記事を読むと、機械設計の仕事が最低なように思えるのですが、もちろん機械設計のやりがいもあります。
これについては、以下の記事をご覧ください。
今回は以上となります。ご一読ありがとうございました。
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