機械設計のつらいところについて知りたい人:
機械設計の仕事って、つらいとか聞くけど本当かな?就職や転職を考えているけれど、後悔したくないので、機械設計の仕事のネガティブな部分について知りたい。あと、それらって対策できるものなのかどうかについて教えてほしい。
こういった疑問や悩みについて、お答えしていきます。
私は現在、機械メーカーの正社員5年目で、普段は自社製品の設計・開発を行なっております。
私は入社以来ずっと設計として仕事をしているですが、そこで自分が経験したことや、周りの人たちから聞いたことをふまえて、機械設計のつらいところについてお話ししていきます。
私の経験や、他の設計職の人から話を聞いたりすると、ほとんどの人が機械設計の仕事で挫折を経験しています。
細かくいうと、キリがないほど落ち込んだ経験がありますが、だいたい共通するのは以下のような内容についてです。
よく、機械設計の仕事に必要な知識は4力であるという回答をよく見かけます。
4力(よんりき)というのは「材料力学」「流体力学」「熱力学」「機械力学」の4つの学問をまとめた呼び方です。
工学系の学部に行くと、これらの科目はほぼ必修となっています。
これは間違ってはいないですが、回答としては不十分です。
なぜなら、大学で習った4力の知識だけでは、全く設計ができないからです。
これは私がイキっているのではなく、実際に挫折したからです。
じゃあ他に何が必要かというと、機械設計の初心者を卒業するためには少なくとも、次の基礎的な知識を理解する必要があります。
一つの項目をなんとか覚えるだけでも大変なのですが、加工や組立てなどのように「設計そのもの以外の知識」も理解をしなければならないのです。
私の経験談をご紹介しますと、私が初めて設計したのは、人間と同じぐらいの大きさの部品を持ち運びしやすくするための道具(治具)でした。
その設計業務は課長の方針により、構想から図面作成までを全て自分でやる(わからない部分を誰かに相談するとかはOK)というものでした。
しかし、いくら図面を描いて上司に見せても「そんなものを使わなくても、これを使った方がシンプルだ」とか、「そんな構造にしたら組み立てるの大変だ」とか、とにかくダメ出しをされました。
ダメ出しをされたことについて、アドバイスをもとに描き直したとしても「いやいや、あれはあくまで方法の一つだから。もっといろんな視点で考えて構造を決めないとダメだよ」と言われました。
結局、合計で20回以上図面を描き直し、設計が終わった時には3ヶ月以上が経っていました。
当然、期限はとっくの昔に過ぎていたため、私が設計した部品が製作されることはありませんでした。
人によっては、機械設計の奥の深さを知って、ワクワクするという場合もあるそうですが、
当時の私にとっては絶望でしかありませんでした。
学校のテストや演習において出題される問題には、必ず模範解答があります。
よって、テストでそこそこの点数を取ろうと思ったら、過去問をたくさん集めて、問題のパターンを覚えてしまえばよいわけです。
しかし、機械設計の業務はそれとは違って「模範解答のない問題について、その時代その状況における最適解を考えること」です。
学校のテストでいう過去問に相当するものとして、会社では過去の実績というものがあったりしますが、状況によってはその資料ですらも役に立ちません。
そのため、模範解答のない問題をほとんど解いたことがない若手のうちは、そもそもどうやって問題に取り組めばいいのかが、わからないのです。
今の会社に入社したばかりの私はこんな状況でした。
ある日上司に「この部品の強度計算しといてもらえる?」と言われたので、材料力学の公式をググりながら計算しました。
その結果、強度が足りていないことがわかったので「強度が足りていませんでした。」と報告しました。
すると上司から「・・・で?どうするの?」と言われました。
要するに、ダメであれば対策まで考えて来いということでした。
そのため、材料の強度をあげるために、材料のサイズをアップすることにしました。
材料力学の演習問題で「xxの荷重に耐えるためには、丸棒の径はいくつ以上が必要となるか?」というパターンの問題を思い出したからです。
再計算をして、強度が足りていることを確認したのち、上司に「材料をこのサイズに上げれば、強度はOKです」と報告しました。
すると上司から「図面確認したか?材料のサイズなんてアップしたら、たぶん干渉するよ?」と言われました。
確かに、図面で確認してみたところ、他の部品と完全に干渉していました。
すると再び上司から「・・・で?どうするの?」と言われてしまいました。
とりあえず場をしのぐために「ちょっと考えさせてください」と回答したものの、丸 3日間考えても、どうすることもできませんでした。
その時私は、砂漠のど真ん中に一人取り残されたような気持ちになり、「オレって、設計向いているのかな・・・」と激しく落ち込みました。
設計が上手くできるようになるには、とにかく量をこなすことが大切です。
詳しくはこちらの記事で解説をしております。
量をこなすことが大事だと言いましたが、上達をする前に、立ち直れないほど心が折れてしまったら、仕事を続けるのが難しくなります。
そんな不安がある方は、思い切って「自分には難しすぎる」と白旗をあげ、業務のハードルをさげましょう。
ぶっちゃけ、若手の頃の私も何回かやりました。
白旗をあげるというのは、他の人が作成した「図面のチェック」や「計算書の検算」程度に、業務の範囲を狭めるということを指します。いきなり「仕事を辞める」とか「異動を申請する」といった行動に出るということを指している訳ではありません。
白旗をあげたときに「その後のキャリアに傷がつくんじゃないか」「二度と設計をやらせてもらえないんじゃないか」と思う方は、全く心配ありません。
なぜなら、あなたが業務をやり遂げることができなかったのは、あなたの責任ではないからです。
これは誰の責任かというと、課長や部長の責任となります。課長や部長の業務の一つに「部下の力量を見計らって、業務を割り当てる」というのがあるからです。
白旗をあげるのは、最初は勇気が必要です。
会社の就活や研修で「チャレンジ精神」や「困難な課題に積極的に取り組む姿勢」が強調されまくっているのが原因の一つだと思います。
ですが、依頼された業務の内容について、70〜80%以上が自分が知らない・やったことがない分野でしたら、それは明らかなキャパオーバーです。
与えられた業務が滞ると、自分の精神が消耗するだけではなく、同じプロジェクトの仕事をしている他の人にも迷惑がかかってしまいます。
自分の心がポッキリいってしまう前に、潔く降参してしまいましょう。
今回の内容についてまとめると、次のとおりとなります。
挫折をしない人は、天才の人か、就職する以前に設計の経験がある人ぐらいです。
できないことばかりですと、めちゃくちゃ落ち込むのですが、
そんなときはこの記事を読んで「機械設計でご飯食べている人でも、ほとんどの人が通ってきたことなんだなぁ」という風にとらえ、気持ちが少しでもラクになっていただければと思います。
経験が浅いうちから「自分にこの仕事が向いているかどうか・・・」と思い悩む必要はないです。
ただし、まだ上手く設計ができないあなたに対して、周りの人が「頭を使って考えろよ」と言って全く助けてくれなかったり、上司が「なんとかしろ」と言ってあなたに責任を押し付けて、残業や土日出勤を強いて来るようでしたら、その職場から抜け出すことを考えた方がよいと思います。
今回は以上となります。
ご一読、ありがとうございました。
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