この記事を読むべき人
こんにちは、リヴィです。
最近販売されている家庭用の家具やガジェットなどは、「購入後に自分で組み立ててね」というものが多くなっています。
でも、自分で家具やガジェットを組み立てた事がある人なら思い当たるかと思うのですが、ドライバーでねじをちゃんと締めたつもりでも、しばらく日が経って気がついたら、なぜか緩んでいたりしますよね?
家庭でねじを締めるときに、ほとんどの人がプラスドライバーを使ってるかと思いますが、
個人的な感覚でいうと、プラスドライバーはトルク(ねじを回す力)をかけにくいのでねじを締めても緩んできやすいです(もちろん、プラスドライバーにもメリットはありますが)。
かといって、ガチガチにねじを締めたらいいかというと、そういうわけでもありません。
つまり、
ということです。
え、ねじ締めるのってそんなデリケートなの?
と思う方もいるかと思います。
そこで今回は、「ねじを緩く締めるとなぜダメなのか。ねじを締めすぎるとなぜダメなのか。」について、初心者にもわかりやすく解説していきます。
今回の記事が、ねじを適切な力で締めることの重要性を学ぶ手助けになれればと思います。
ねじは緩んだまま放置していくと、場合によってはねじが完全に抜けていってしまいます。
あれ?ねじって回さない限りは、緩んだりしないんじゃないの?
そう思う方もいるかと思いますが、
実は緩んだねじは、モータの回転による振動とか、地震・風などによる振動によって、時間をかけてちょっとずつ勝手に回っていくのです。
特に、地面から天井に向かって締められているねじは、緩むと重力のせいでどんどん抜けやすくなっていきます。
そのため食品機械などは、緩んだねじが食品に混入するリスクを避けるために、地面から天井に向かってねじを締めるのは、基本的にNGです。
適切に締められたねじは、外力が働いたときに、母材とねじとで受ける外力を分担するからこそ、外力を受けることができます。
どういうことかを簡単に言うと、
ということです。
ところが、ねじが緩んでいる場合、ねじの締め込み力が不十分なわけですから、部品(母材)の弾性力によって外力を相殺することができません。
そうなると、外力を受けるのは100%ねじになってしまいます。
ねじって金属製のものが多いので、そう簡単に折れたりしないだろって過信している人もたまにいるのですが、
意外とあっさり折れたり、永久変形(塑性変形)して二度と外せなくなったりしてしまいます。
このあたりの詳しい話を知りたい人は、以下の記事を参考にしてみてください。
ねじは締め込むことで部品(母材)同士を密着させるからガッチリ固定されるのですが、ねじが緩んでいては部品(母材)同士は密着しません。
そうなると部品はガタガタ動きやすくなってしまします。
例えばセンサ類のブラケットがそのように振動すると検知不良やノイズの主原因になりますし、
強度部材であれば、強度の向上に寄与していないことを意味します。
また、振動しているということはその度に、ねじに対して振動・衝撃荷重が加わっていることを意味します。
ねじは見た目がギザギザの形をしている見た目の通り応力集中の塊なので、いくら金属といえどもある時ポッキリ折れてしまいます。
特にねじはせん断力に弱く、ねじの折損に関する不具合の中には、「せん断力によって折れた」というものも結構あります。
「ねじが緩いとダメ」なのは素人でも何となく分かるかと思いますが、
締めすぎるとダメな理由をうまく答えられられないどころか、強く締めれば締めるだけ良いと考えている人は多いのではないでしょうか。
そんな人ほど、きっちりと押さえておきましょう。
「ねじを強く締めすぎると、逆に緩む」ってどういうこと?
そんな人も多いのではないでしょうか。
ねじを締めていくと、部品(母材)は若干押しつぶされ(圧縮力を受ける)、それと同時に部品が元に戻ろうとする力(弾性力)が働くことでしっかり固定されるのですが(詳しくはこちらの記事で)、
ねじを強く締めすぎると、その締め込み力に部品(母材)が耐えられなくなり、永久変形(陥没)したり、割れたりしてしまします。
部品が永久変形すると、部品が元に戻ろうとする力が失われるので、摩擦力はほぼゼロになります。
摩擦力がほぼなくなったねじは、ちょっとした振動などで簡単に緩みが進行し、「ねじが緩すぎるとダメな理由に挙げたような種々の不具合を発生させてしまいます。
このような現象は、
などに発生しやすいです。
特に部品を分解した際に、母材にねじのあとがくっきり残っている場合は、ねじを強く締めすぎである証拠です。
「ねじを強く締めても、めちゃくちゃ強力なボルトを使っているから大丈夫!」と思っていても、めねじが持たなければ意味がありません。
ねじの強度について考えるとき、ついついおねじ側だけを気にしてしまいがちなのですが、めねじ側の強度も同時に考えなければなりません。
めねじがねじの締め込み力(軸力)に耐えられなくなった場合、めねじが傷んで塑性変形し二度と取り外せなくなったり、めねじが破損してなめてしまったりします。
「母材がアルミや樹脂などの柔らかい部品だけど、どうしてもきっちりねじを締め込みたい」という人は、
ナットを使うようにしたり、母材にヘリサートやインサートを埋めこんだり、ねじ山のかかり代を多めに確保したりなどの対策が必要です。
ねじは緩すぎても外力に弱くなりますが、締めすぎても外力に弱くなります。
実はねじは、締めていくと、ねじ自体が伸びていきます。(引張荷重を受ける)
材料力学を勉強した事がある人ならわかるかと思いますが、材料はある程度の荷重以下であれば元に戻ろうとする力(弾性力)が働きますが、それ以上の荷重を受けると塑性変形してしまいます。
これはねじも例外ではありません。
適切なねじ締結であれば、外力を受けたとしても弾性力の働く範囲内に収まるのですが、
ねじを強く締めた場合、締めた段階ですでに塑性変形まであとちょっとしか余力がないため、
ちょっとした外力が発生しただけで、ねじが塑性変形してしまします。
あまりにもねじを強く締めると、ねじの締め込み力自体にねじが持ちこたえられなくなることもあり、
ねじが永久変形(塑性変形)して二度と外せなくなったりしてしまいます。
なんかさぁ、「ねじは緩すぎてもダメ、締めすぎてもダメ」とデリケートな割には、ねじが使われているものってめちゃくちゃいっぱいあるよね?それ、大丈夫なん?
このように不安に思う方もいるかと思います。
それもそのはずで、ねじは家具やガジェットだけでなく、家電・自動車・建築物など幅広く使われています。
そんな幅広く使われているねじですが、ねじが緩すぎることもなく、締めすぎることもなく、適切に締められていることはどのように保証されているのでしょうか。
メジャーどころでいえば、以下のような方法が採用されます。
このような対策のうちのいずれか、あるいは複数を組み合わせて、ねじに関するトラブルのリスクを下げているのです。
どうしてもねじを締める感覚を身に着けたいんだけど、どうしたらいいの?
このような、モチベーションが高い人もいるかと思います(こういう人は、好きです笑)。
そんな人は、トルクドライバーを使って感覚を覚えるのがいいかと思います。
手順としては、
といったな感じです。
私はこのトルクドライバーを、会社に経費で買ってもらって、それで練習しましたねー!それでも、しばらくねじを締めていないと、やはり感覚が鈍っちゃうんですよねー
家庭用で買うには値段が張るので、もし使ってみたい人がいれば、会社に買ってもらうのがいいと思います。
ただし、ねじ締めの練習をする際には、いくつか注意点があります。
ねじを締める際の締付けトルク(ねじを回す力の目標値)については、可能な限り社内基準の値を使うのがいいでしょう。
実はググると「T系列の締付けトルク表」というものが出てくるのですが、ちょっと問題があったりもします。
以下の記事でその内容を解説しているので、T系列の締付けトルクを使用する際には、その注意点を承知の上で使うようにしてください。
「すでに締めたねじが、どれぐらいのトルクで締められたか」を測定する際は、必ず「ねじを締める方向」で測定を行ってください。
なぜかというと、「ねじを締める力」と「ねじを緩める力」とはイコールではないからです。
実は、ねじを緩めるときに必要な力というのは、ねじを緩める力よりも小さかったりするのです。
これ、機械設計として仕事している人ですら、勘違いしている人が多いんですよねー
もっと詳しく知りたい人は、以下の記事を参考にしてみてください。
ねじを締める上で、はじめは「クルクル」っと軽快に締めていっても構いませんが、締切る直前は慎重に締めるようにしましょう。
「慎重に」というのは、「ちょっと締めて、一旦締めるのをやめて、またちょっと締めて・・・」という意味です。
ねじの締付けはかなりばらつきやすく、同じように締めたつもりでも「緩すぎたり、締め過ぎたり」しやすいのですが、
その主な原因が、ねじの摩擦力です。
勢いよく締めると、ねじの摩擦力が一時的に低くなるので、ねじを締めすぎてしまう原因になるのです。
ねじをちょっと締めたあとに、「一旦締めるのをやめる」ことで、ねじを締めるときの勢いを殺すことができるので、締めすぎを防いだり、締付け力のばらつきを極力抑えることができます。
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