「工具が入らない!」に備えよう!工具干渉の対策に使えるアイデア

ねじ 更新:

 

この記事を読むべき人

  • もうすぐ現場に行くことになるが、組立や分解が上手くいくかが不安な人
  • 現場でトラブルが発生すると、頭が真っ白になってしまう人
  • 職人のおじさんに「工具が入らないんだけど!」と怒られるのが怖い人

こんにちはリヴィです!

普段、機械設計を仕事にしている方にお聞きしますが、最近、現場に出てますか?

機械設計は普段オフィス内にいて、エクセルで計算をしたり、CADで図面を描いたり、会議をしていることが多いのですが、現場に出ることも非常に重要です

ものづくりは三現主義である「現場・現物・現実」が非常に重要であると言われているのですが、

にも関わらずパソコンの前で仕事してばかりいると、この三現主義の感性・感覚が鈍り、それによって現場でドラブルが発生することになりかねません。

現場トラブルの中でも、非常に多いのが、「工具が入らない!」などという工具アクセスに関するトラブルです。

設計している最中は、完成品の状態ばかりに目が行きやすいので、部品を組み立てる最中のことが案外抜けていたりします。

そのせいで、工具をかけて回すためのアクセス・スペースが考慮されていなかったりすると、現場でいざ部品を取り付けようにも、ねじが回せないので施工ができません。

特に小さな案件ですと、設計者自身が工事監督になったり、施工者になったりすることも多く、さらにお客さんが常時見ているという状況です。

そのため、たとえ小さなものだとしても、現場でトラブルが発生すると、結構冷や汗をかきます。

リヴィ

若手の頃、私はちょっとしたトラブルでも寿命が縮むほど慌てるほどの小心者でした。こういった経験をしだしたあたりから、現場に行くのが怖くなってあまり行きたくなくなり、それによってまたトラブルが発生するという悪循環が・・・(笑)

かといって、現場に出てばかりでは本業がはかどりませんし、そもそも上司の判断などによってなかなか現場に行かせてもらえないケースだってあります。

また、どんな設計者も人間である以上、ミスを0にすることはなかなか困難です。

そうなると、現場で工具が入らない事態が発生してもいいように準備をしたり、いざトラブルが発生したときに機転が効かせられるようになっているといいですよね。

そこで今回は、「工具が入らない!」に備えよう!工具干渉の対策に使えるアイデアについてご紹介していきます。

この記事を読んで、現場でトラブルが発生しても、慌てずに対処できるよう役立てていただければ幸いです。

六角穴付きボルトに対する対策

ボールポイントの六角レンチが普及しており施工性がよく、ボルトの入手性もいいことから、機械には六角穴付きボルトがよく使われていたりします。

ところが、六角穴付きボルトを施工する工具である六角レンチは、使用するのに必要なスペースが意外と大きく、工具干渉の問題が起こりやすかったりします

ここでは、六角穴付きボルト関連のボルトアクセストラブルに関する対策方法についてご紹介します。

T字の六角レンチを使う

もし六角穴付きボルトの上面にスペースがあいているのであれば、T字の六角レンチがおすすめです

一般的な六角レンチで、長い側をボルトに差し込んで回すとなると、大きなトルクをかけることができません。

ですがT字六角レンチは、持ち手のところが握りやすく作られているので、トルクがかけやすいという特徴があります

ドライバー感覚でボルトの真上からアクセスできるので、いざというときに重宝します。

リヴィ

M3以下のねじのような、締付けトルクがあまり必要ではないものであれば、ドライバータイプの六角レンチも便利です!

六角レンチの短い柄を、鉄パイプなどで延長する

残念ながらT字の六角レンチを持っていない場合には、六角レンチの長い側をボルトの頭に差し込んで、短い側を鉄パイプ等で延長をして回しましょう。

ただし、注意点が2点あります。

1つ目の注意点は、六角レンチはボールポイントのものではないタイプを使用してください

ボールポイントとは、ねじの施工性を向上させるために、先端を丸めた形をした六角レンチなのですが、一方で大きなトルクをかける目的としては設計されていません。

仮に、ボールポイントをボルトの頭に差し込み、パイプで延長して回そうとすると、ボルトの頭がなめてしまいます。

そのため、持ちての短い側・長い側の両方ともが六角形の形をした六角レンチを使用するようにしてください。

2つ目の注意点は、工具は慎重に回すことです。

締付けでボルトに与えるトルクは「半径×力」となりますが、工具を延長してねじを回すということは「半径」を大きくすることになります。

そのため、小さな力でもトルクをかけすぎてしまうことがあります

トルクをかけすぎるとねじが変形してしまったり、母材を陥没させてしまったりと、やっかいな問題が起こるので注意をしてください。

ショートネックの六角レンチを使う

今度は、ボルトの上面からはアクセスできない場合に有効な方法です。

ボルトをトルク締めをするときは、六角レンチの短い側をボルトに差し込んで回しますが、一般的な六角レンチは短い側の寸法がそこそこあり、高さ方向で干渉するケースもあります。

そんなときには、ショートネックの六角レンチがおすすめです。

ショートネックとは、六角レンチの短い側の寸法を極力小さくしたもののことをいいます。

そのため、高さ方向にスペースがないような場所でも、割とアクセスが可能だったりします。

ビットを差し込んで、スパナで回す

ビットというのは、ラチェットレンチの先端工具のことです。

本来は、ラチェットレンチに取り付けた上で使用するのですが、ビットだけをボルトの頭に差し込んでスパナで回すという小技があります。

ビットは安いものですと「プラスビット、マイナスビット、六角ビット」の三種類が2~3サイズ分入っているので、六角穴付きボルトだけではなく、プラスねじやマイナスねじの場合にも使えたりします

より幅広いサイズがほしい場合や、特殊ねじの場合はこちらがおすすめです。

六角レンチの先端を切断し、スパナで回す

これは、適用できるビットを持ち合わせていなかったり、ビットが差し込めるほどスペースがない場合の代替策です。

発想自体はビットと同じなのですが、六角レンチの先端を切断するという荒技になります。

安物の、あまり硬くない六角レンチであれば、グラインダー等で切断できるので、よっぽどの緊急であるときや、極端にスペースが厳しい場合には検討してみてください。

六角ボルトに変えてみる

どうしても六角穴付きボルトへのアクセスが悪い場合は、六角ボルトに変更することを検討してみましょう

六角ボルトを施工する工具であるスパナは、ねじの横からアクセスする工具なので、垂直方向のスペースはほとんど必要としません

その上、水平方向のスペースについても、以下の図のようにスパナの表裏をうまく使いこなすことで、30°の回転スペースが有ればなんとかしてボルトを回せるという小技があります。

これは、スパナのヘッドが、持ち手に対して15°程度傾いて作られているからこそできる技なのです。

さらに、スパナヘッドの傾きの角度がより深いスパナも販売されています。

こういった工具を組み合わせることで、より狭いスペースでも、なんとかして施工することができます。

ちなみにモンキーレンチは、1本で様々なボルトサイズに対して適用可能という便利工具ではありますが、意外とゴツく、スペースの狭いところには入らない場合が多いので、別途スパナセットを持っておくほうが良いです。

ラチェットレンチを使う

これは、六角レンチを回すときに、回転方向に十分なスペースがないときに有効な方法です。

六角レンチを使用するには、必ず60°以上工具を回せるだけのスペースが必要です。

それができない場合に重宝するのがラチェットレンチです。

ラチェットレンチはおおよそ5°回せれば、ラチェットの爪が次のストッパーに移行する事ができます。

リヴィ

ただし、「ラチェットレンチのビットがボルトの頭に入れられれば」ということが条件になります。ボルト頭の角度によってはビットが入らない場合があるので、そのときは指でボルトの角度を微調整する必要があります。

ユニバーサルジョイントを使う

ユニバーサルジョイントとは、軸をつなぐジョイントの一種の部品のことを言います。

日本語では「自在継手」とい言いますが、その名の通り、ユニバーサルジョイントの可動範囲内であれば、2つの軸をどんな角度でも連結させた状態でトルクを伝達することができます

六角レンチ・スパナのみの使用では水平方向にしか回せませんが、ユニバーサルジョイントを使うことで水平以外の角度から工具を回すことができます。

そこそこしっかりめのソケットレンチセットを購入すると、1個か2個はだいたい入っています。

ただ、ユニバーサルジョイントはまぁまぁゴツいので、あまりにも狭いスペースのボルトにはアクセスしづらかったりするので、注意が必要です。

リヴィ

ちなみに、ユニバーサルジョイントは、ソケットと組み合わせれば六角ボルトに対しても使用することが可能です。ただ個人的には、よっぽど際どい場合でない限りは、後述する「首振り機能付きメガネレンチ」で十分かなぁという感じです。

六角ボルトに対する対策

六角ボルトは、六角レンチと比較すると、工具アクセスによるトラブルは少ないです。

とはいっても、トラブル発生率は0%ではありません。

また、六角ボルトの締付けは、六角レンチと比較すると手間がかかるケースもあり、ボルト本数が増えるほど侮れなくなってきます。

そのため、六角ボルトの施工に対する対策もしっかり押さえておくようにしましょう。

メガネレンチを使う

一般的なスパナや、ソケットレンチのソケットのヘッドの形は、六角ボルトの頭の形にあわせて六角形になっています。

そのため、60°よりも狭いスペースで回すためには、スパナの場合は施工の際に裏表を上手く使いこなす手間が発生しますし、

ソケットレンチの場合は、セットで持ち歩くとなるとかなりゴツくて重たくなるので、持ち運びに不便だったりします。

一方、メガネレンチの場合は、穴の形が六角形2つを30°ズラして重ねたような形をしており、一般的なスパナやソケットレンチのデメリットを極力低減させたような特徴を持ちます。

メガネレンチは「ボルトを30°回したら、ボルトにかける穴を一つずらす」というのを繰り返すことで回せますので、スパナのような手間が少ないです。

また、メガネレンチのセットは、スパナセットと同程度のコンパクトさなので、そんなに大きな工具箱ではなくても入れることができます。

さらに上位互換のものとなると、さらに小さなスペースでも回せるようラチェット式メガネレンチがあったり、よりボルトへのアクセス性が高い首振り付きのものがあったりもします。

ナットを高ナットに変える

ねじが密集していたり、ねじが奥の方にある場合、横から工具にアクセスしようにも、他のが邪魔でアクセスできないことがあります。

そんなときには、高ナット(または長ナット)にすることをおすすめします。

高ナットとは、標準のナットよりもナットの高さが高くなっているナットのことです。

ちなみに、高ナットと六角支柱は、見た目が非常に似ていますが、両者は全く異なるものなので注意してください。

高ナットはめねじが貫通して切られているものですが、六角支柱はねじが非貫通で切られているもので、主にスペーサやねじ径変換のジョイントとして使用します。

リヴィ

慌てて手配・購入をしたときに、間違えないようにしましょう。あと、高ナットを採用する際には、ボルトの長さを長くすることにも注意です。

速攻で部品調達ができる準備を!

ここまで、さまざまな対策方法について、解説をいたしました。

じゃあ、何でも対応できるように、大きな工具箱やコンテナを抱えなければならないのでしょうか?職人さんみんなが、こういったことを想定して用意周到に準備しているのでしょうか?

もちろん、多くの対策部品を常備していれば慌てずに済みますし、実際準備のいい業者さんなどにそういう人はいます。

でも、工具って思った以上に重く、現場に持ち込んだり、持ち帰ったりするのは大変ですし、さまざまな工具を揃えるには費用もかかります。

そういうときのために、現場に行く際は必要なものをすぐ現地調達できるように、現場近くに大型のホームセンターがあるかをチェックしておきましょう。

有名どころだと、以下のようなホームセンターが挙げられます。

  • コーナンPRO
  • カインズPRO
  • ロイヤルホームセンター
  • SUNDAY
  • おうちDEPO
  • スーパービバホーム

大型のホームセンターは、現場で急遽必要となった資材や部品を調達するのに便利で、しかも朝6時台、7時台から営業を行っています。

リヴィ

朝の時間帯の店内は、ほぼほぼ職人さんばかりです(笑)

また、ネットで頼めばすぐ届くようなECサイトも活用すると良いです。

以下の記事で、ECサイトについてまとめているので、よろしければご参照ください。

まとめ

今回の内容をまとめると以下のとおりです。

  • 工具アクセスは、工夫された工具を使うことで、ある程度は対策できる
  • 最悪、便利工具がなくても、対策することができる場合がある
  • 現地調達できるよう、準備しておくことも重要

設計者が現場で出向くと、周りからは「設計者=責任者」のような目線で見られます。

そのため、設計者が現場を経験するようになってくると、だんだんと自前の工具や工具箱が増えてくるんですよね(笑)。

この記事を読んで、工具アクセスの視点でのDRや、現場に行く前の準備等にご活用いただければと思います。

今回は以上となります。ご一読、ありがとうございました。


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りびぃ

この記事を書いた人

機械設計エンジニア: りびぃ

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