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こんにちは、リヴィです。
機械を組み立てる上で、今も昔もボルトやナットは非常に多くの場面で活用されています。
そんな、素人でも知っているボルトですが、実は意外とデリケートな部品です。
ボルトを締めるとき、締めすぎても緩すぎてもNGな部品であり、それによる不具合は今も昔もしばしば発生しております。
じゃあ、ちょうどいい具合でねじが締まっているかどうかを、なにかで測定しながらねじを締めたらいんじゃね?
そのとおりです。そこで考案されたのが「トルク法」です
トルク法とは、トルクレンチというねじ締付けの測定器を使って、ねじを締め付ける方法です。
ねじの締付け具合そのものである「軸力」を直接測定するのは困難ですが、トルクレンチでトルクを測定し、以下の「軸力とトルクの関係式」を使って軸力に換算することで、軸力を求めます(式の導出についてはこちらの記事で解説しています)。
$$T=KF_ad\cdots(0-1)$$
$$T$$ | 締付けトルク[N・m] |
$$K$$ | トルク係数[-] |
$$F_a$$ | 軸力[N] |
$$d$$ | ねじの呼び径[mm] |
さて、ここまででなんとなくトルク法の流れはわかったかと思いますが、実は最後に一つだけ、ある重要なことが抜けています。
それは、「どれぐらいの軸力になるようにボルトを締めたらよいか?」です。
実はここが、非常に重要にも関わらず、めちゃくちゃ曖昧なところだったりします。
でも多くの人は、そんなこと気にしたことがないと思います。
そりゃ、ググればすぐ出てくるしー。普段もそれでボルト締めてるよ?
しかし、ググって出てきた締付けトルクの値は、理論がかなり曖昧だったりします。
「どんな理論で締付けトルクが決められているのか」を理解しないまま使用することは、いつ製品の不具合を起こしてもおかしくないし、その原因究明もできないこと同じことになってしまします。
そこで今回は、ボルトを締める際の軸力の決め方について、詳しく解説をしていきます。
この記事を読み、会社やネットで使われている「締付けトルク」の裏付けとなる理論を理解した上で、トルク法を活用できるような技術者になれるようにしていきましょう。
まず、軸力について話をする前に、ボルトを締めた際、そもそもボルトにはどんな力がかかっているのかについて説明をします。
材料力学でも同じことが言えますが、「物体にどんな力がかかっているか(引張・せん断・ねじれなど)」によって、そもそも評価方法が違うので、そこから理解をする必要があるのです。
ボルトを締める際に、ボルトに掛かる力についてですが、「山本晃著, ねじ締結の原理と設計」より、「軸力による引張応力」と「トルクによるせん断(ねじり)応力」であると仮定します。
$$\sigma=\frac{F_a}{(\pi/4)d_2^2}\cdots(1-1)$$
$$\tau=\frac{T}{(\pi/16)d_2^3}\cdots(1-2)$$
$$\sigma$$ | 軸力による引張応力 |
$$F_a$$ | 軸力による引張応力 |
$$d_2$$ | ねじの有効径 |
$$\tau$$ | トルクによるせん断(ねじり)応力 |
ここで、締付けトルクと軸力の関係式(0-1)式に、(1-1)式、(1-2)式を代入し、指揮を整理します。
$$\tau\cdot(\frac{\pi d_2^3}{16})=Kd\sigma\cdot(\frac{\pi d_2^2}{4})$$
$$\frac{\tau}{\sigma}=\frac{4}{d_2}Kd\cdots(1-3)$$
引張応力だけなら計算できそうだけど、せん断(ねじり)応力も同時にかかっているときはどうやったらいいの?
大丈夫です、ちゃんと評価する方法はあります。
つづいて、ボルトが許容する応力の条件について考えてみます。
どうするかというと、ボルトの材質に注目します。
ボルトでよく使われる材質は、力を受けると延びやすいという「延性材料」と呼ばれます。
延性材料には、「せん断ひずみエネルギー説(別名:Misesの降伏条件)」という理論を適用できます。
この理論は、「ミーゼス応力と呼ばれる応力が、材料の降伏応力に達すると、材料は塑性変形する」というものです。
ミーゼス応力とは、以下の式で表される応力のことを言います(詳しい導出は、長くなるので割愛します)。
$$\sigma_e=\sqrt{\sigma^2+3\tau^2}$$
$$\sigma_e$$ | ミーゼス応力 |
$$\sigma$$ | 垂直(引張)応力 |
$$\tau$$ | せん断応力 |
ここでボルトの許容応力は降伏応力であるとすると、ボルトが使用できる条件はミーゼス応力を使って、以下のように表すことができます。
$$\sigma_{y}\geq\sqrt{\sigma^2+3\tau^2}$$
$$\sigma_y$$ | ボルトの降伏応力 |
$$\sigma$$ | 垂直(引張)応力 |
$$\tau$$ | せん断応力 |
ところが、実は「ミーゼス応力が降伏応力と同じになるとき=ボルトの限界」というのは、正確ではありません。
「ミーゼス応力が降伏応力になったときとは、どんな状況なのか?」というと、それは「ねじの表面のほんの一部が降伏した」というだけのことです。
ねじは表面がほんのちょっと降伏したとしても、芯部が降伏していなければまだまだ使用可能だとすると、ミーゼス応力の値で判定するには、安全側に過剰となってしまいます。
そのため、山本晃著,ねじ締結の原理と設計では、辻らの行った実験結果データからグラフのフィッティングを行うことで、以下の近似式を用いることとしています(ただし、τ=0以外)。
$$\sigma_y\geq\sqrt{\sigma^2+1.8\tau^2}\cdots(2-1)$$
以上の話を一旦整理するため、(1-3)式の「ボルトに発生する垂直応力とせん断応力の関係式」と、(2-1)式の「ボルトの降伏条件の式」とをグラフとして可視化してみましょう。
これによると、(1-3)式は「ボルトを締めていく過程で、ボルトに発生する垂直応力とせん断応力の状態」を表していることになります。
一方で(2-1)式は、「ボルトの弾性領域と塑性領域の境目」を表していることになります。
そして、これらの線が交わる点が、トルク法におけるボルトの許容応力となります。
式展開を追うのが苦手だという人は、グラフで視覚的に理解すると良いですよー
ここまで難しい話が続きましたが、軸力を決める上ではもうちょっとだけ考えるべきことがあります。
その考えるべきこととは、次の3つです。
このあたりから話が複雑になります。話がわからなくなったら、以下のシリーズの記事を思い出しながら、ゆっくりと読み進めていってください。
締付けトルクの計算に使用するトルク係数Kですが、「〇〇の条件のときはxxという数値」というように、バシッと決まる値ではありません。
トルク係数の中には「摩擦係数」の項が含まれるのですが、この摩擦係数のばらつきが大きいためです。
これはトルク法の最も厄介な点でもあります。
ただ、一つ言えることは、「潤滑剤を使ったときに比べて、潤滑剤を使わなかったときの方がばらつきが大きくなる傾向がある」ということです。
あくまで参考ですが、摩擦係数およびトルク係数の目安を以下の表に示します。
トルク係数は、締付けトルク一定だとすると、低めに設定するほど発生軸力が大きくなります。
$$F_a=\frac{T}{Kd}$$
そのためもし、ボルト締めすぎによる破断リスクを懸念するのであれば、「トルク係数のばらつきの中で、トルクル係数が低い側」に設定を、
逆にボルト緩すぎによるリスクを懸念するのであれば、「トルク係数のばらつきの中で、トルク係数が高い側」に設定してあげてください。
ボルトの表面処理[1] | めねじの材質[1] | めねじの表面処理[1] | 座面の材質[1] | 座面の表面処理[1] | 塗布剤[1] | μの平均値[1] | μの標準偏差 | Kの平均値[2] |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
亜鉛めっき | 鋼 | 亜鉛めっき | 鋼板 | 塗装 | あり | 0.29 | 0.0238 | 0.37 |
ばね座金 | 亜鉛めっき | あり | 0.193 | 0.0239 | 0.25 | |||
コイニング鋼 | なし | 脱脂 | 0.271 | 0.0133 | 0.35 | |||
ばね座金 | 亜鉛めっき | 脱脂 | 0.291 | 0.0415 | 0.37 | |||
熱処理 | 鋼 | なし | 鋼 | なし | あり | 0.164 | 0.0183 | 0.22 |
鋳鉄 | 硬平座金 | なし | あり | 0.135 | 0.0123 | 0.18 | ||
鋳鉄 | なし | あり | 0.097 | 0.0062 | 0.14 | |||
亜鉛めっき | 鋳鉄 | なし | 鋳鉄 | なし | あり | 0.124 | 0.0098 | 0.17 |
鋼 | 鋼 | なし | あり | 0.143 | 0.0152 | 0.19 |
$$K=0.556\mu+0.65\mu+0.019$$
続いての誤差要因は、「トルクレンチの誤差率」です。
これはトルクレンチを含む測定装置であるあるな話なのですが、「表示された測定値は必ずしも、実際の測定結果とは限らない」のです。
「うさん臭い哲学の話」ではないですよ!笑
どういうことかというと、
昔のようなアナログ式だろうと、最近のようなデジタル式だろうと、多くの測定器は「測定原理上、仕方なく発生してしまうような誤差」というのものが存在します。
その誤差が、締付けトルクと軸力との関係に影響を与えてしまうのです。
このように、特定の原因によって測定結果が偏ってしまうような誤差を系統誤差といいます。
トルクレンチには様々な種類があるのですが、それぞれの種類に対応した誤差率がJISに掲載されております。
クラス | 名称 | 誤差率 q | |
---|---|---|---|
最大トルク≦10N・m | 最大トルク>10N・m | ||
クラスA | ねじり及び、たわみバー形レンチ | ±6% | ±6% |
クラスB | スケール、ダイヤル及び、表示機付きハウジング形レンチ | ±6% | ±4% |
クラスC | 電気指示計付きハウジング形レンチ | ±6% | ±4% |
クラスD | スケール、ダイヤル及び、表示機付きドライバ | ±6% | ±6% |
クラスE | 電気指示計付きドライバ | ±6% | ±4% |
クラス | 名称 | 誤差率 q | |
---|---|---|---|
最大トルク≦10N・m | 最大トルク>10N・m | ||
クラスA | 目盛及び、表示機付きトルク可変形レンチ | ±6% | ±6% |
クラスB | トルク固定形レンチ | ±6% | ±6% |
クラスC | 目盛なしトルク可変形レンチ | ±6% | ±4% |
クラスD | 目盛及び、表示機付きトルク可変形ドライバ | ±6% | ±4% |
クラスE | トルク固定形ドライバ | ±6% | ±4% |
クラスF | 目盛なしトルク可変形ドライバ | ±6% | ±6% |
クラスG | 目盛付きたわみバー トルク可変形レンチ | ±6% | ±4% |
この誤差によって、かけたトルクに対して誤差が乗るのですが、その最大値と最小値は以下のような関係があります。
$$T_{min}=\frac{1-(q/100)}{1+(q/100)}T_{max}\cdots(3-1)$$
$$T_{min}$$ | 締付けトルクの最小値[N・m] |
$$q$$ | トルクレンチの誤差率[%] |
$$T_{max}$$ | 締付けトルクの最大値[N・m] |
例えば、トルクレンチの誤差が±6%の場合、q=6を(3-1)式に代入すると、
$$T_{min}=\frac{1-(6/100)}{1+(6/100)}T_{max}=0.89T_H$$
となります。
つまり、同じように締付けトルクをかけてボルトを締めたとしても、Tmax〜0.89Tmaxの間でばらつくということを意味します。
え、何それ?そんな宇宙語、初めて聞いたわ!
おそらく、「軸トルク残留率」という言葉を聞いたことある人なんてほとんどいないと思います。
それもそのはず、この言葉はググっても資料がほとんど出てこないですし、JISの用語としても定義されていない用語なので、もしかしたら山本晃先生の作った用語かもしれません。
はじめに結論だけ言っておくと、「トルク締め後、工具をボルトから離すとボルトねじ部のトルクが減少するのですが、減少した残りのトルクのこと」を軸トルク残留率といいます。
これだけでは、どういうこっちゃ?となると思うので、解説しようかと思います。
まずはねじの技術書に出てくる「締付けトルクと軸力の関係式の前提」について整理しましょう。
なお便宜上、トルク係数を使わない表現で示し、ボルトを締めている最中におけるねじ面で必要なトルクはTs1、座面で必要なトルクはTw1としています。
$$T=T_{s1}+T_{w1}\cdots(3-2)$$
$$T$$ | 締付けトルク[N・m] |
$$T_{s1}$$ | ねじ面で必要な締付けトルク[N] |
$$T_{w1}$$ | 座面で必要な締付けトルク[N] |
この式ですが、そもそもどんな状況を式として表したものなのかというと、「トルクレンチで測定しながらボルトを締めていき、トルクの目標値に達した瞬間を表した式」です。
つまり、作業者がトルクレンチを使って与えるトルクTは、ねじ面で必要な締付けトルク(ボルトに伝達されるねじ部トルク)Ts1と、座面で必要な締付けトルク(座面で摩擦として消費されるトルク)Tw1の和であることを表しています。
ただしこの式は「トルクレンチをボルトから外したあとどうなるか?」については、守備範囲の外にあります。
では、ボルトからレンチを外したとき、ボルトの状態について考えてみましょう。
外部からトルクを掛けていないわけですから、(3-2)式の左辺は0になります。
するとボルトは、発生した軸力の影響でねじ面に沿って緩もうとします(Ts2)。
ところが、座面の摩擦力Tw2がそれに対抗し、結果的に釣り合うようになります。
これを式で表すと以下のとおりです。
$$T_{s2}=T_{w2}$$
このとき、座面の摩擦力が働く向きが反転することに注意してください。
ここで、ボルトを締めている最中のねじ面のトルクTs1と、ボルトを締めたあとのねじ面のトルクTs2を比較すると、
Ts2はTs1に対して、約70%前後の大きさまで減少することがわかっています。
この約70%前後の数値のことを、軸トルク残留率というのです。
ボルトに発生する応力のグラフ上で表すと、以下のようになります。
「福岡俊道著,技術者のためのねじの力学」Ts1からTs2への減少分だけ、ボルトのねじれ変形が解放されたということが考えられるとのことです。
目標の締付けトルクを低めに設定してしまうと、ボルト締め付け後にゆるゆるの状態になってしまいます。
軸トルク残留率は厳密にいえばキッチリ約70%というわけではなく、締付けトルクが低くなるに従って、軸トルク残留率も低くなる傾向にあります。
詳しくは山本晃著、ねじ締結の原理と設計を参照ください。
ここでやっと軸力を設定するための材料が揃いましたので、ここからは軸力の設定と、そこから逆算した締付けトルクについてケーススタディをしていきたいと思います。
もし、過去の実験データ等があれば、それに基づいた締付けトルクを目標値と設定すればよいです。
ただ、材質・表面処理・寸法・工具などが変わるだけで、ボルト締結に影響を及ぼすので、活用できるのはかなり限定的な場面となります。
そこで多くの場面では様々な仮定・前提条件を設定し、それに基づいて計算・決定をしていきます。
この方法で軸力・締付けトルクを設定する方法には、主に以下の2つが挙げられます。
グラフで表すと、以下のような感じとなります。
上限値の方は、点線の方で設定すると良いです。実線のグラフをベースに上限を決めてしまうと、ボルトを締めている最中にボルトを塑性変形させてしまうリスクがあるためです。
では、具体例を挙げながら、目標の締付けトルクを設定していきます。
ここでは、「軸力の上限から決める方法」で求めていきます。
前提条件として、以下の通り設定します。
では計算していきます。
まず、許容応力を降伏応力の90%としているので、許容応力σ’は
$$\begin{align}\sigma’&=0.9\sigma_y\\ &=0.9\cdot640MPa\\ &=576MPa\end{align}$$
となります。
よって、ボルトの弾性域と塑性域の境界線の曲線は、
$$\sigma’=\sigma_e=\sqrt{\sigma^2+1.8\tau^2}\cdots(4-1)$$
となります。
M6並目ねじの場合、有効径d2=5.35mmですから、許容応力σ’を許容荷重F’になおすと
$$\begin{align}F’&=576MPa\times\frac{\pi (5.35mm)^2}{4} \\ &=12900 N\end{align}$$
また、
$$\begin{align}\tau=\frac{T}{(\pi/16)d_2^3}\\ \sigma=\frac{F_a}{(\pi/4)d_2^2}\end{align}$$
であることから、(4-1)式に反映させると、ボルトの弾性域と塑性域の境界線の曲線は、
$$\begin{align}12900 N&=\sqrt{\left(\frac{F_a}{(\pi/4)(5.35mm)^2}\right)^2+1.8\left(\frac{T}{(\pi/16)(5.35mm)^3}\right)^2}\times\frac{\pi (5.35mm)^2}{4}\\ &=\sqrt{F_a^2+1.8\left(\frac{T}{(5.35mm/4)}\right)^2}\cdots(4-2)\end{align}$$
となります。
つづいてトルク係数です。
前提条件から、摩擦係数の平均値は0.29、摩擦係数の標準偏差は0.0238です。
摩擦係数のばらつきが正規分布に従うとし、摩擦係数の最低値を標準偏差の3倍とすると、トルク係数の最低値は
$$\begin{align}K_{min}&=(0.556+0.65)\times(0.193-3\times0.0239)+0.019\\ &=0.165\end{align}$$
となります。
よって、軸力とトルクの関係式は、
$$\begin{align}T_{max}&=K_{min}F_{a,max} d\\ &=0.165F_{a,max}\cdot6mm \\ &=0.99mm\cdot F_{a,max}\cdots(4-3) \end{align}$$
となります。
よって、(4-2)式と(4-3)式とで連立方程式を立て、それを解けば良いので、
$$\begin{cases}12900 N=\sqrt{F_a^2+1.8\left(\displaystyle\frac{T}{(5.35mm/4)}\right)^2} \\T_{max}=0.99mm\cdot F_{a,max}\end{cases}$$
$$T_{max}=9.1 N・m\dots(4-4)$$
となります。
(4-4)式から、トルクレンチの誤差分(6%)を取り除けば良いので、締付けトルクの目標値Tは
$$\begin{align}T&=\frac{T_{max}}{1+q/100}\\ &=\frac{9.1 N・m}{1+6/100}\\ &=8.6N・m\end{align}$$
となります。
先程、締付けトルクの目標値Tを計算によって求めましたが、このような手順で締付けトルクを設定している企業は非常に少ないと思います。
どちらかというと多くの企業では「ボルトの降伏応力の〇〇%の軸力となるように、締付けトルクを設定する(誤差は加味しない)」という感じで、エイヤッ!で決定しています。
その多くは、機械設計におけるマジックナンバー70%が使われます笑
そこで比較のために、仮に先程計算で求めた締付けトルクは、理論上(誤差を加味しないときという意味)どのような軸力になっているかを試算してみましょう。
誤差を加味しない場合、トルク係数は
$$\begin{align}K&=0.556\mu+0.65\mu+0.019\\ &=(0.556+0.65)\cdot0.193+0.019\\ &=0.25\end{align}$$
よって軸力は、
$$\begin{align}F_a&=\frac{T}{Kd}\\ &=\frac{8.6 N・m}{0.25\cdot 6mm}\\ &=5.7 kN\end{align}$$
軸力を応力に直すと、
$$\begin{align}\sigma &=\frac{F_a}{(\pi/4)d_2^2}\\ &= \frac{5.7 kN}{(\pi/4)(5.35mm)^2}\\ &=253MPa\end{align}$$
よって、降伏応力に対しての割合はというと、
$$\begin{align}\frac{\sigma}{\sigma_y} &=\frac{253}{640}\\ &= 0.4(40\%)\end{align}$$
といった結果になります。
マジックナンバー70%を使ったトルク設定値は、だいぶ攻めた設定値であることが言えます。もちろん、条件によりけりではありますが・・・
ちなみに今回のケーススタディでは「許容応力は、ボルトの降伏応力の90%」としましたが、この「90%」という数字は「ねじの保証荷重」の考え方から引っ張ってきました。
「外力に対してもうちょい余裕を確保しておきたい!」という人は、もうちょっとだけ低めの許容荷重を設定してあげると良いでしょう。
この例を参考に、しっかり根拠のある数字でトルク管理に活用いただければと思います。
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