ダブルナットを使おうと思うんですけど、締め付けトルクってどの程度にすれば良いのかな。目安だけでも教えて欲しい。
このような悩み・疑問を持った人へ、お答えしていきます。
結論からいうと、上ナットと下ナットの間に規定の軸力を発生させるには、上ナットの締め付けトルクの1.5倍程度が目安となります。
ダブルナットは、一般的に手に入りやすいJIS規格のナットを使った緩み止め対策であることから、比較的導入がしやすい締結方法です。
しかしダブルナットは施工を間違えやミスが起こりやすく、このように施工された締結部は緩み止めとして全く効果を発揮しないという問題があります。
とくに、ダブルナットの締付けの手順については様々なところで解説がされている一方で、ダブルナットの締付けトルクについてはほとんど参考になる資料がありません。
ダブルナットの施工ミスは、組み立て後すぐに見つかるというよりは、装置を組み立ててから時間が経った頃に、だんだん緩んでくることで発覚することが多く、最悪の場合は装置を壊したり、人に損害を与えてしまう可能性があります。
そのようなことを起こさせないためにも、今回の「ダブルナットの締付けトルク」の記事を読んで、正しい施工の知識を身につけていきましょう。
ダブルナットの締め付けは大まかに、
(1)下ナットの締付け
(2)上ナットの締付け
(3)下ナットを緩む側へ回転
(4)下ナットが上ナットと密着したら完了
という手順で施工が行われます。
まず(1)の下ナットの締付けにおいて、通常のナットの締め付けトルクと同様のトルクで締めます。
このときのトルクをT1とします。
そして、(2)の上ナットの締付けトルクT2ですが、これも下ナットと同様のトルク(T2≒T1)で締付けるとします。
この条件で締付けた場合について、
つづいて、(3)で下ナットを緩み側へ回転させるのですが、この緩み側へ回転させる瞬間に必要なトルクは、だいたい1〜1.3T2程度となります。
下ナットが一度逆転を始めれば、T2のトルクで回転させることができますが、最後に下ナットと上ナットとを密着させ、規定の軸力を発生させるためには、1.5T2程度が必要となります。
ダブルナットが適切に施工されていれば、緩み止めとして大きな効力を発揮します。
たとえ、ダブルナットで締結した母材同士が繰り返し滑る(ボルトのバカ穴分だけ動くことができます)ようなことが起こったとしても、ダブルナット部は回転しないぐらい、効果を発揮します。
ただ、基本的にトルク法によるボルト・ナットの締付けは、発生軸力にばらつきがあるという点には注意をしておく必要があります。
冒頭で述べたように、ダブルナットの締め付けトルクに関する情報は、ほとんどありません。
私が調べた限りでも、この記事の最後に紹介する書籍以外では、まだ見つかっておりません。
そのため現状は、施工者の「勘」で締付けが行われていることがほとんどです。
「勘」といっても、ダブルナットの締付け方法のうち「下ナット逆転法」という方法であれば、おおよそ同じようなトルクで締め付けることができます。
しかしそれでも、このような「施工者の腕に左右される締付け」では、ダブルナットの施工にばらつきが発生しやすいという問題があります。
最近のものづくりは、かつての日本のものづくりのように、職人の腕を頼りにするのではなく、「可能な限り数値化しよう」という動きが広まってきています。
物事を数値化することによって、以下のようなメリットが得られます。
ボルト・ナットを、トルク法によって締め付ける場合は、トルクレンチと呼ばれる工具を使って、一定の締め付けトルクで締付けます。
最近ではスパナを使ったことがない人が機械設計をやっているということも普通にあるので、数値化することの重要性は、一層高まっていくと思います。
もし、職人の腕頼りになっている施工のばらつきを少なくすることに取り組むのであれば、実験や解析などを駆使していく必要があります。
今回の内容をまとめると、以下のとおりとなります。
なお、今回ご紹介した内容は、以下の書籍から引用させていただきました。
また、ダブルナットの締め付け手順については、以下の記事をご覧ください。
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