ダブルナットの締付け方法と原理

ねじ 更新:

緩み止めの方法として、ダブルナットっていうのがあるのは知っているけれど、なんでナットを2個使っただけで緩みにくくなるの?

このような疑問を持った人へ、お答えしていきます。

私は普段、機械メーカーで設計の仕事をしているものです。

ものづくりにおいて、「ねじの緩み」の問題は、よく起こる上に、その被害も大きい問題となります。

機械の部品の中でも重要度の高い部品ほど、ねじの緩みどめ対策は必須となりますが、「ボルト・ナット締結」の場合においては、ナットで行うことが多いです。

ボルト・ナット締結とは、その名の通り、ボルトとナットとで部材を挟み込んで固定する締結方法です。おそらく、部品の固定方法の中で最も広く使われている固定方法だと思われます。

そのなかでも、標準のナットを使ってできる緩みどめ対策であることから、比較的導入しやすいのがダブルナットと呼ばれる緩み止め方法です。

このダブルナットは、単純にナットを2個使えばいいという話ではなく、「適切な方法で施工」されることによって、緩み止め効果を十分に発揮してくれます。

そのためには、「ダブルナットはどのように施工させなければならないのか」「なぜナットを2個使う必要があるのか」という根本原理をしっかりと理解しておく必要があります。

そこで今回は、ダブルナットの施工手順と原理について、わかりやすくお話をしていきます。

ダブルナットの施工方法と、その原理

ダブルナットの施工方法は、以下の3ステップから成り立ちます。

  1. 下ナットを締め付ける
  2. 上ナットを締め付ける(下ナットの締め付けよりも、少し強めに締め付ける)
  3. 上ナットを固定して下ナットを逆回転させる

ここで、「下ナット」は母材に近い側のナットのことを、「上ナット」は母材から遠い側のナットのことを指しています。

(1)下ナットを締め付ける

まず最初は、通常ナットを締めるときと同様に、ナットを締め付けていきます。

このときに、ねじ部には何が起こっているのかというと、「おねじ」と「めねじ」との間に存在していた隙間がなくなります。

もう少し詳しく話をしましょう

下ナットを締めようとすると、最初はナットがどんどん奥へ入っていきます。

ですが、そのうちナットが母材にあたり、それ以上ナットが奥へ進まなくなります。

この状態からさらにナットをまわすとどうなるかというと、ナットが動けない代わりに、おねじであるボルトが力を受けて伸びるように変形するのです。

このボルトの変形によって、「おねじ」と「めねじ」との間に存在していた隙間がなくなり、摩擦力が発生するのです。

この摩擦力が、ねじが緩もうとしたときに、それに対抗する力となります(このとき、ナットと母材との間にも摩擦力が働きます)。

ねじの締結と、隙間のコントロール

そもそも「おねじ」と「めねじ」との隙間ですが、なぜ隙間があいていたり、なくなったりするのでしょうか。

まず、ナットをボルトにいれようとする状況について考えてみると、隙間がなかった場合は、ねじを締めるときに硬すぎて締めることができません。

ねじが硬いにもかかわらず無理に締め込もうとすると、ねじ部が摩擦熱によって溶着し、ビクともしなくなってしまいます。

これがいわゆる「かじり」とか「焼付き」と呼ばれる現象です。

こうなってしまうと、非常に厄介で、最悪の場合は母材ごと作り直すような事態になってしまします。

一方で、最後にボルト・ナットを締め切って部品を固定したいとき、ねじ部の隙間があると、すぐに緩んでしまいます。

これでは、「部品を固定する」というねじ本来の役割が果たせなくなってしまいます。

そのため、ねじの締め始めは「隙間があること」が必要で、ねじの締め終わりは「隙間がないこと」が必要なのです。

(2)上ナットを締め付ける

続いて、上ナットを締付けていきます。

このときのコツとして、「上ナットの締め付けは、下ナットの締め付けよりも強く行う」ということです。

上ナットの締め付けを、下ナットの締め付け力よりも強く行うと、上ナットのめねじと、おねじとの隙間がなくなり、緩みに対する摩擦力が働くようになります。

一方でこのとき、下ナットは上ナットよりも締め付け力が弱くなるため、 母材の締め付け力は上ナットが保持することになり、下ナットの締め付け力はゼロになります。

そのため、締め付け力は、上ナットが受けることとなります。

(3)上ナットを固定して下ナットを逆回転させる

最後に上ナットを固定したまま、下ナットを逆方向(上ナット側)に回転させます。

このようにすることによってボルトのねじ部は、上ナットと密着している面とは反対の面で、下ナットと密着することになります。

そうすることによって、上ナット・下ナットの両方でねじ部の摩擦力を発揮させることができるので、緩み止め効果を高めることができるのです。

ダブルナットは施工を誤っている人が多い

このダブルナットは意外にも、職人さんであっても施工方法に誤りがあることがしばしばあります。

当たり前ですが、ダブルナットは正しく施工を行わないと、緩み止め対策としての機能を全く発揮しません

そしてこの施工方法ですが、特殊な技能が必要といったことはなく、ただ単に「やり方を知っているかどうか」というだけの問題です。

詳しくは以下の記事で解説しておりますが、そこで紹介しているような施工をしていないか、チェックしてみてください。

まとめ

今回の内容についてまとめると、以下の通りとなります。

  • ダブルナットは、簡単に導入できる緩み止め対策である。
  • ダブルナットの緩み止め原理の本質は、ねじ部の摩擦面を増やすことである。
  • 最後に下ナットを逆回転させるのを忘れがちなので注意が必要
  • 職人さんでも、ダブルナットの施工を間違えている人はしばしばいる

今回、参考にした書籍はこちらです。より詳しい説明を知りたい方はご参照ください。

以上がダブルナットの基本的な締付け方法・原理となります。

実はダブルナットの締付け方法はもう一つあるのですが、そちらはオススメしません。

詳しくは以下の記事で解説していますので、興味のある方はご一読ください。



ものづくりのススメでは、機械設計の業務委託も承っております。
ご相談は無料ですので、以下のリンクからお気軽にお問い合わせください。

機械設計の無料見積もり

機械設計のご依頼も承っております。こちらからお気軽にご相談ください。

構想設計 / 基本設計 / 詳細設計 / 3Dモデル / 図面 / etc...

ものづくりのススメ

りびぃ

この記事を書いた人

機械設計エンジニア: りびぃ

ねじのはめあい長さについて【何山かかっていればよいか?】

ダブルナットのよくある間違い・ミス【使う人は要チェックです】

console.log("postID: 251");console.log("カウント: 41987");