機械設計における安全への考え方【責任は重いです】

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機械の設計って楽しそうではあるんだけれども、責任が重そう。ニュースとかで、子供が事故にあったとかよくやってるけれども、自分が設計した機械が原因だったらって考えると・・・。安全面でどのように設計したらいいかを教えて欲しい。

このような悩み・疑問についてお答えしていきます。

普段私は、機械メーカーで設計の仕事をしており、市場調査の結果や、お客さんからの要望を基に「求められる機能をどのように実現するか」を考えてながら業務を行なっております。

ただし機械設計は、求められる機能を実現するだけではなく、機械の使用などについての安全性についても考慮する必要があります。

製造された機械が「安全性」を欠いている場合、最悪は人命に関わることにもなります。

今回は、そんな機械設計をする上での安全の考え方についてお話をし、機械設計者の責任や、それに対する取り組み方について解説をいたします。

機械設計の仕事に資格はいらないけど、責任は重い

機械の設計の仕事は、実は資格が必要ありません。

つまり機械設計は、業務独占資格が存在しないのです。

業務独占資格とは、資格がないと業務ができないと、法律で定められている業務のことを言います。例えば建築関係の設計であれば「建築士」という資格がないと業務をしてはいけませんし、電気工事をであれば「電気工事士」という資格がないと業務ができません。

よく言われる、機械設計関係の資格には、以下のものがあります。

  • 技術士(機械部門)
  • 機械設計技術者
  • CAD利用技術者試験

実際私も、機械メーカーの5年目で、バリバリ設計業務をこなしておりますが、これら資格は一切持っていません。

ですが、日本には製造物責任法という法律があり、設計・製造した製品が原因でユーザーが何らかの損害を受けた際には、メーカーは責任を取らなければなりません。

製造物責任法(PL法)

機械のユーザーは、製造物責任法によって守られております。

製造物責任(PL, Product Liability)法とは、製造物の欠陥により損害が生じた場合の製造業者等の損害賠償責任について定めた法規のことをいます。

たとえば、以下のような不具合があった場合には、製造物責任法に則り、機械メーカーは責任を負う可能性があります。

  • 買ったばかりの新車を普通に運転していたら、ブレーキがきかなくなり、交通事故になった。
  • 扇風機を普通に使っていたら、羽根が折れて飛んでいき、それによって怪我をした。
  • スマホが急に異常発熱をし、それが元となって火事になった。

事案紹介 さいたま地裁(平成13年9月28日 判決)

クリーニング工場に納入された集塵機の内部から、自然発火による火災が発生したということで、クリーニング工場(原告)が集塵機メーカー(被告)に対して訴えを起こしました。

訴えられた集塵機メーカーは、自ら製造した製品について、欠陥があることを自認し、

本来は水道管と一体となっているはずの湿式集塵機が、そのような構造になっていないこと、

また、設計上の欠陥として、高温になって集塵機内に堆積すると予想される綿埃が、ごみ取り箱以外の場所において、清掃により除去ができない構造となっていることを主張しました。

裁判では、原告側の請求が容認されました。

デザインレビューとは

メーカーに責任がある以上、テキトーに製品を作るわけにも、そのため多くの会社では、設計業務で作成された図面に対して複数人によるレビュー(審査)が行われます。

このレビューのことを、デザインレビュー(DR)といいます。

DRでは、構造の妥当性、誤記の有無などがチェックされ、問題がなければ直筆でサインをします。

サインをする人についてのルールは会社により異なりますが、図面の作成者、設計担当者、プロジェクトマネージャー、決裁権限を持ったポジションの人(課長や部長)あたりが一般的です。

特に、プロジェクトマネージャーや決裁権限を持った人のサインがないと、実際に部品や装置を作ることができないというルールが多いです。

DRが行われていれば、設計担当だけが責任を問われることはないが・・・

設計ミスは事態の規模によっては大問題となりますが、DRが適切に行われていれば、設計担当者が個人レベルで責任を問われるはありません。

基本的にプロジェクトマネージャーや決裁権限を持った人のサインがなければ、部品を作ることができないわけですから、

逆にいうと、設計ミスというのは、そんな設計のプロたちの目をすり抜けてきてしまったものということになります。

ただし会社としては、その不具合の原因究明や対策をするのに追加の支出が発生するだけではなく、世間や客先からの信頼を失い、その後の営業活動などに支障をきたす可能性があります。

会社の利益が減少すれば、当然ボーナスが減額になったり、事業撤退に追い込まれたりします。

安全に対する設計上の考え方

設計した機械がユーザーへ損害を及ぼさない、あるいは損害を最小限にするために、機械を設計する上での安全に対する考え方として、主に次の3つがあります。

  • フェールセーフ
  • フールプルーフ
  • フォールトトレランス

フェールセーフ

フェールセーフ(Fail Safe)とは、機械の故障、誤操作、誤動作が発生した際に、その被害が必ず最小限になるよう、または安全が維持されるように設計をする思想のことをいいます。

基本的に設計は、機械が壊れたり、誤動作しないようにするのが当たり前なのですが、フェールセーフは「ものはいずれ壊れるもの」という思想からくるものです。

例えば機械でいうとストッパーを設けることによって、たとえ機械が暴走しても、ストッパーで強制的に止まるような構造にしたりしています。

福島第一原子力発電所の事故をきっかけに「想定外を想定せよ」などと言われるようになりましたが、それがまさにフェールセーフの考え方となります。

フールプルーフ

フールプルーフ(Fool Proof)とは、機械を使う人が誤った操作方法や使用方法をしても危険が生じない、あるいはそもそも誤った操作方法や使用方法ができないような構造となるように設計をするという思想のことをいいます。

「人は間違えるもの」「素人が扱う場合もある」という思想からくるものです。。

例えば電子レンジや洗濯機は、扉がちゃんとしまっていないと動かないような構造になっています。

最近ですと、高齢者等による自動車の誤発進を防止するような構造なんかも、フールプルーフであるといえます。

フォートトレランス

フォールトトレランス(Fault Trerance)とは、機械の構成部品の一部が故障をしても、正常に稼働が続けられるようにするという思想のことをいいます。

例えば、航空機が飛行中にエンジンが止まってしまうと、墜落してしまいます。そのため複数のエンジンを搭載しエンジンの一つが故障し稼働できなくなったとしても、飛行ができるようにしています。

また病院では、災害等により停電をすると、人工呼吸器をつけている患者さんは命の危機にさらされます。そのため、停電をしても大丈夫なように、非常用の発電機を病院に備えていたりします。

まとめ

今回のポイントをまとめると、以下のとおりとなります。

  • 機械設計に資格はいらないが、問題が起これば責任を取らなければならない
  • 機械設計は、ユーザーの安全に十分配慮しなければならない
  • よく使われる安全に対する設計思想が3種類ある

より詳しい内容については、以下の書籍に記載されております。

今回は以上となります。

ご一読ありがとうございました。


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りびぃ

この記事を書いた人

機械設計エンジニア: りびぃ

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