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こんにちはー、りびぃです!
私は機械設計の仕事をずっとしてきているのですが、そのうちの一つに「機器の筐体設計」があります。
大半の電気製品は中身の部品が露出していることはなく、プラスチックや板金などでできた「外装」があり、製品によっては内部に骨格となる「フレーム」があったりもします。
例えば、
などなど、これら全て「筐体」と呼ばれているものになります。
筐体は人によって呼び方が違ったりします。大きさにもよると思いますが、私が聞いたことがあるのは「フレーム」「外装」「ケース」「皮(ガワ)」なんて呼ばれていましたね笑
一見すると、
単なる箱みたいな部品だし、特に難しいところとかなさそう。設計してもあまり面白みがなさそうだなぁ・・・
なんていう方がいるかも知れませんが、それは大きな間違いです。
実は筐体には複数の重要な役割があり、そこがうまく設計できるかどうかで機械の品質そのものも大きく変わります。その重要な役割の一つが「熱対策設計」です。
というのも、一般家庭用のものでも産業用のものでも電子機器は熱に弱いため、熱対策がされていないと壊れたり、誤作動を起こしたり、発火したりしてしまうのです。
よくサウナ・岩盤浴の中でスマホいじっている人見かけますが、いつも「あれはやべぇな・・・」って思ってます。熱がこもると中の基盤のはんだが溶けたりもしますからね・・・
ここまで話を聞いた人の中には、
熱が問題なら、たくさん冷却ファンをつけたらええやん?
という人もいると思いますが、それは大きな間違いです。
なぜなら、
などのような問題があるからです。そのため、ファンをたくさんつけるという解決策はあまりいいアイデアとは言えません。
それよりも、筐体の構造の工夫ででいかに熱対策できるかを考える方が、機械を効率的かつ長寿命で使用するために非常に重要なのです。
ということで今回は、筐体設計で熱対策をするためにどのような設計をすればよいかについて、ポイントを解説していきたいと思います。
熱伝導率が高い材質を使うことで、熱を逃がしやすくします。
よく使われるのは、鉄・アルミ・銅などの金属で、中でも銅の熱伝導率は非常に高いです。
TAKACHI, 放熱アルミケースより一方で、放熱のことばかり考えて金属部を積極的に導入してしまうと、製品の重量が増えてしまうというデメリットもあります。
なので、軽量化や持ち運びのことを考慮するならば、そのあたりのバランスを見極めて設計するとよいです。
物質 | 熱伝導率 [W/(m・K)]※1 | 比重※2 |
---|---|---|
ポリエチレン | 0.34 | 0.91~0.96 |
ポリプロピレン | 0.20 | 0.9 |
軟鋼(SPCC) | 51.6 | 7.85 |
アルミダイカストADC10 | 96.2 | 2.70 |
銅 | 398 | 約9 |
※1:機械技術ノート
※2:「砥石」と「研削・研磨」の総合情報サイト
熱を伝える物質同士の接触面積を増やすと、熱を効率よく放出させることができます。
その代表的な例が、ヒートシンクやラジエータです。
これは、電子機器などの発熱する物体から空気へ効率よく放熱させるために利用される部品なのですが、空気との接触面積を増やすために「放熱フィン」と呼ばれる構造が採用されています。
この画像のように溝をたくさん設けることで、空気との接触面積が増えるため、効率よく冷却ができるよう原理になっております。
こういった放熱フィンは、発熱部からたくさん熱を引っ張ってこれるように、金属で作られることが多いです。CPUクーラーなんかもそうなってますよね。
みなさんは暑いときには扇風機やエアコンの風にあたりたくなるかと思いますが、まさにその感覚のとおりで、熱を持った物質に風が当たるとよく冷えます。
これは、風が発生することによって常に放熱部に「常温の空気」が供給されるためです。
逆に風がないと、放熱部周辺の空気が温まってしまい、放熱効率が落ちますからね。
そのため筐体設計するときは、
などといった工夫が重要です。
ただし、防水などの性能が求められるような電子機器だと筐体に穴をあけられなかったりもするので、要求仕様の内容によって判断するとよいと思います。
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