就活をしているときは、「我々の求める人材は、失敗を恐れずチャレンジする人です!」ってみんな言っていたんだけれど、実際に会社に入ってみたら「不具合を減らせ!」ってみんなに言われる。すごい矛盾しているような気がするんだけれど、これってどういうこと?
このような疑問を持った人へ、お答えしていきます。
私はつい先日までの5年間、大手機械メーカで働いていました。
5年前までは学生でしたが、その時の就職活動では、「失敗を恐れずに、どんどんチャレンジ!」「困難に屈せず、未来を切り拓く力を求む!」と毎度の説明会で訴えかけられていました。
採用ページとかに行くと、めちゃくちゃかっこよくデザインされていて、その中の「求める人材」というところを見に行くと、だいたいこのようなことが書いてあります。
そのため、当時の私は、自分のチャレンジ精神の高さを全面に押し出した自己PRを作ったりもしていました。
ところが、入社して一通りの研修が終わる頃になると、「チャレンジしよう!」という声は急に小さくなり、同期なども含めて、周りにそのようなことを言う人は激減します。
その一方で「〇〇による不具合で、xx円の損害が出た!不具合を減らせ!」といったように、だいたい決算の時期になるとバッドニュースとともに部課長や役員の訴えがよく飛び交います。
あまりにも言うことが変わるので、「えっ、どういうこと?失敗を恐れずっていうのはウソだったの!?」というふうに叫びそうになりました笑。
ただ、年に一回ぐらい社内に回ってくる社内報の「社長メッセージ」を読むと、やはり「失敗を恐れずチャレンジ!」という言葉は見かけられます。
なにがなんだかわからない状態でしたし、周りの人に聞いても誰も教えてくれませんでしたが、自分なりに考えた結論を言うと、
クライアントに迷惑をかけてしまっているなら、失敗であるし、不具合でもある。
クライアントに迷惑がかかっていないのなら、失敗だが不具合ではない。
ということになります。
イメージで言うと、こんな感じです。
そこで今回は、クライアントに迷惑がかかる・かからないとはどういうことなのか、なぜ社内の人は失敗や不具合を恐れるのか、チャレンジ精神は本当に必要なのかについて、詳しく解説をしていきたいと思います。
この記事を読んだ若手社員や就活生が、入社後にどのように業務をこなしていけばよいかのヒントになれば幸いです。
そもそもクライアント(client)とは何かというと、日本語では「顧客」「お客さん」と訳される事が多いです。
もちろん、自分や自分の会社が作ったモノ・サービスにお金を払ってくれるお客さんはクライアントではありますが、ここではそれだけにとどまりません。
この記事で言うクライアントには「依頼主」という意味も含まれております。
依頼主とはその名の通り「仕事を依頼する全ての人」ということになります。
例えば、私の上司が「リヴィくん、ちょっとこの仕事やっといてくれないかな?」と言えば、上司が私に仕事を依頼しているので、私にとって上司はクライアントということになリます。
では、クライアントへの迷惑となってしまうようなことについて、「お客さん」と「それ以外」とで場合分けをして説明します。
お客さんへの迷惑となってしまうのはズバリ「Quality(品質)、Delivery(納期)、Safety(安全性)に関する不満が発生しているとき」のことです。
例えば、あなたが最新型のスマホを作った際、そのスマホが
などがあれば、お客さんに迷惑をかけてしまっていますので、不具合となってしまします。
このようなスマホだったら、たとえ最新型だとしても、買う気にならなくなってしまいますよね・・・
ただしこれが、まだまだ試作段階で、お客さんへ販売をするような段階でなければ不具合とはなりません。
社内では多少騒ぎになるかもしれませんが、お客さんへは迷惑をかけていないからです。
一方で、上司への迷惑となってしまうのは「上司がコントロールできない事態に陥ってしまうこと」です。
特にコントロールしづらいのは時間に関することです。
例えば、以下のようなことが該当します。
もしこのようなことが原因で、もっと大きな問題へ発展してしまうと、上司は責任を取らなければならなくなります。
「責任を取る」というのは決して「ごめんなさい」を言うだけが求められるのではありません。
「責任を取る」とは、原因究明・問題解決・再発防止をし、信頼回復に努めるところまでが求められます。
ちなみに、法律や社則に違反するようなことは、言語道断ですからね。
これは、対お客さんの話となります。
「メイド・イン・ジャパン」というと、高品質というイメージがある人も多いと思いますが、実は機械設計者は、資格や免許が不要です。
極論を言うと、経験がまったくゼロだとしても機械設計者を名乗ることができます。
「日本のものづくり」という、ある意味ブランドのようなものの中身は、これでしかないのです。
「そんなド素人が考えたものかもしれないのに、製品の安全性とかって大丈夫なの!?」と言いたくなりますが、そのための制度や法律が日本にはあるのです。
製造業における「リコール」とは、「一度販売された製品について、その後何らかの問題が発覚したことにより、販売者が回収したり修理したりすること」をいいます。
たとえば、一度多くのお客さんに販売したあとで、この商品がある特定の条件で使用すると危険なことがわかった時、お客さんへ甚大な被害が及ばないようにするために、ホームページやCMで商品の回収を促したりします。
リコール制度は、「法律に基づく場合」と「業者が自主的に行う場合」とがあります。
例えば、自動車・オートバイの製品の場合は「道路運送車両法」という法律内で定められている「保安基準」に、製品を照らし合わせたときに、これに適合していないとメーカーが判断したときに行う改善措置のことを言います。(参考:国土交通省 自動車局 審査・リコール課)
これにはタイヤなどの自動車部品だけではなく、チャイルドシートやエアバッグなども該当します。
有名なのは、タカタ製のエアバッグですね。トヨタ、ホンダ、日産、マツダ、スバル、三菱など、多くの日本車に搭載されているエアバッグです。しかし安全上の問題からリコールとなり、この製品が使われている車種は、車検が通らなくなりました。
該当する車種の一覧は、国土交通省 自動車局 審査・リコール課ホームページに掲載されております。
また、一般的な製品については「消費生活用製品安全法」において、経済産業大臣による「危害防止命令」としてリコールがされることもあります。(参考:経済産業省ホームページ)
ただし実際には、このような事態にまで発展してしまう前に、業者が自らリコールを行うことがほとんどです。
現在でも、毎年何件かはリコールが発生しております。
リコールを実行するとなると、業者としては大きな回収コストがかかるため、決して簡単にできるようなものではないですが、実際に消費者へ甚大な被害が出るよりはマシです。
なお、一般的な製品についてのリコールの一覧は、経済産業省のホームページで閲覧することができます。
ただ、こういった制度はあったとしても、一度市場に出してしまった商品については「どこの誰がいくつ持っているのか」までを追うのは非常に困難であるため、そもそも不具合を出さないようにする必要が製造業者には求められます。
製造物責任法(PL法)とは、製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合における製造業者等の損害賠償の責任について定めた法律のことをいいます。(参考:消費者庁ホームページ)
実際に購入者が被害を被ってしまっているため、裁判が開かれ、訴訟内容として利用されます。
被害の度合いは、悲惨なものですと、後遺症が残ってしまったり、亡くなってしまったりしてしまっており、賠償額は億単位にまでのぼるものもあります。
製造物責任法の裁判事例として、カネボウの化粧品などが挙げられます。
カネボウ化粧品(東京)の美白化粧品を使い、肌がまだらに白くなる白斑症状を発症したとして、広島県内の40~50代の女性4人が同社に計約1億3千万円の損害賠償を求めた訴訟は13日までに、広島地裁(小西洋裁判長)で和解が成立した。(中略)訴状によると、4人はメラニンの生成を抑える美白成分「ロドデノール」が配合された化粧水や乳液などを使用。2011~13年、顔や首などに白斑が発症し、外出時など周囲の目を気にして生活せざるを得ず、精神的苦痛を受けたと主張していた。(参考:2016年7月13日 日本経済新聞より)
その他裁判事例については、消費者庁のホームページから閲覧することができます。
これは、クライアントが「お客さん」であっても、「上司」であっても適用されるものです。
対お客さんについては、不具合が発生してしまうと、お客さんからの信頼が失われ、商品を購入してくれなくなってしまいます。
これにより不具合の対処をした後でも、会社は平気で失速してしまうほどの大打撃を受けます。
こういった事情もあり多くの製造業者にて、出荷前の製品検査にものすごいコストを掛けていたりします。
人間が検査をすると、ついうっかり不良品を見逃してしまったりすることも十分にありえることから、機械による自動化がものすごく推進されている分野でもあります。
上司に対する不具合を起こしてしまうと、上司からの信頼を損ねてしまいます。
信頼を損ねてしまうと、レベルの高い業務をいつまで経ってもやらせてもらえず、機械設計者として成長・活躍することができません。
そうなると、上司から厳しく管理されたりするようになります。会社の中で居場所がなくなってしまいます。
こういった状況になったとしても日本では社員を簡単には解雇できないようになってはいます。
しかし、2019年の働き方改革法が適用されたあたりから、いくつかの企業で実質のリストラが実行されるようになっています。
もともと無理のある期限設定の場合もあるので、必ずしも部下が悪いというわけではありません。ただし、仮に上司が悪かったとしても、部下の評価するのは上司ですからね・・・。上司からの信頼が得られていない職場環境は、部下にとっては正直きついです。
もし、部下の立場でいて今の職場がツラい、ほんとうにこの仕事があっているのかなぁと思った方は、こちらの記事の内容を参考にしてみてください。
経営者の人たちは、チャレンジャーを求めている人が多いような印象です。
その背景には、日本のものづくり自体が衰退していっていることもありますし、少子高齢化によるものもあります。
私は前職で、様々なメーカーの工場見学に行き、自動設備の提案をしていた事があるのですが、そこで経営者の方からは「人手が足りなくて困っている!」「何かすごい自動設備を考えてくれ!」といった依頼が多かったのです。
ドル箱のような商売ができている企業はごく一部で、多くのメーカーでは何もしなければ緩やかに滅びていきます。
経営者の方は、従業員の生計を支えなければならない立場にもあるので、従業員のチャレンジを促している場合が多いのです。
とくに大企業の中間管理職には、安定を求めている人が多いという印象があります。
中間管理職の性格によりけりでもありますが、安定を求めている一例を挙げると以下のような感じです。
会社の上司との雑談や、飲み会の席などで話を聞いていると、こういった事情が容易に推測できます。
たまに「何か新しいことを・・・」ということもありますが、よくよく話を聞いてみると「いや実は社長から、なんか考えろ!なんていう指示が飛んできちゃってねー。めんどくさいよなー・・・」ってなることも多いです。基本的に新しいことへのモチベーションは低いですね。
これは、年功序列・終身雇用である日本の働き方の問題点とも挙げられます。
さらに深い内容については、こちらの本が参考になります。
若手や中堅社員にとっては、経営者や役員がどうであるかよりも、直属の上司がどうであるかという、いわゆる「上司ガチャ」が非常に重要となります。
ただ、その肝心の上司がチャレンジへのモチベーションは低いことが多いため、若手や中堅社員からしてみれば、対策のやりようがありません。
だからといって何もしないでいると、企業の衰退は加速的に進行していくので、失敗に否定的な上司の言うことを真面目に聞いていたとしても、数十年後までその企業が生き残っている保証なんてどこにもないのです。
そんな過酷な状況になったときに、あのとき失敗を否定してきた上司は満額の退職金とともにとっくにいなくなっているので、近々予想されるリストラ祭りの被害を最も被るのは、今の若手・中堅社員の人たちなのです。
日本のものづくりを代表するトヨタの社長でさえ「終身雇用は難しい」って言っていましたからね。
今回のポイントについてまとめると、以下の通りとなります。
もしあなたが、今のうちから失敗を受け入れつつも挑戦し、人生を豊かにしていきたいと思うのなら、私が実施したようにチャレンジ精神のある企業へ思い切って転職してみるのも一つの手段だと思います。
私は「マイナビエージェント(マイナビのプロモーションを含みます)」や「JAC Recruitment(JAC Recruitmentのプロモーションを含みます)」どちらも活用しましたが、担当の方はとても真摯に対応してくれたので良かったです。
「転職の決断はまだできていない、でもちょっと相談したい。」「他の会社はどんな感じなのかっていう様子見だけでもしたい。」という場合でも、お金は一切かからないのでおすすめです。
今回は以上となります。ご一読、ありがとうございました。
ものづくりのススメでは、機械設計の業務委託も承っております。
ご相談は無料ですので、以下のリンクからお気軽にお問い合わせください。
機械設計の無料見積もり
機械設計のご依頼も承っております。こちらからお気軽にご相談ください。
構想設計 / 基本設計 / 詳細設計 / 3Dモデル / 図面 / etc...
機械設計は在宅ワークで仕事ができるか?【業務内容の仕分けが大事】
【機械設計者向け】大企業・ベンチャーの仕事の違い