機械設計ってどうやって進めたら良いのかな?設計できる時間も限られているし・・・。もっとポンポン仕事が進む方法があったら教えてほしい。
このような疑問を持った人へ、お答えしていきます。
私は普段、機械メーカーで機械設計の業務をしております。
担当したプロジェクトは受注してから数ヶ月で終わるような短納期のものが多く、スピード感が求められるような環境で仕事をしております。
更に、下流工程で少しでも不具合が起こったりすると、納期までの余裕日数が少ないため、すぐに解決をしなければなりません。
当然、マニュアルなんてありません。
私が入社して2〜3年ぐらいはそのスピード感に付いていくことができず、思考停止してしまい、すぐに上司に白旗を挙げてしまうような「全く使い物にならない社員」でした・・・
そんな私が、さまざまな経験を経て、今ではスピードが求められるプロジェクトの設計をある程度こなしていけるようになってきました。
時間制限のプレッシャーがあるとにヒヤヒヤすることは以前と変わりないのですが、あまり思考停止することはなく「できそうなところからやってみよう」と頭を切り替えられるようになった、といった感じです。
そこで今回は、私のように悩んでいる機械設計の方のために、スピード感を持った仕事ができるようになるコツについて、お話をしていきたいと思います。
この記事をご覧になり、「動ける機械設計者」として活躍できる手助けができれば幸いです。
まずは、そもそもなぜ設計にスピード感が必要なのかをお答えしていきます。
これはどの製品メーカーにも言えることですね。
例えば、あなたがスマホをフツーに使用していただけなのに、
急にスマホの操作が効かなくなったら、すぐに対応してほしいですよね。
スマホはSNSやYoutube、Lineをするのに使われるだけではなく、GoogleマップやQR決済としても使われるので、スマホが使えないと日常生活に支障をきたします。
「スマホの修理に1週間かかります」なんて言われたら、「1週間もスマホ無しでどうやって生活していけばいいの!?」と発狂する人がほとんどじゃないですかね?
さらに、同じような事例が何十件も見つかったとなれば、そのスマホの設計ミスまたは製造工程の問題が濃厚となります。
問題解決が先延ばしになるほど、会社の売上や信用をどんどん失うことになりますので、
即座に対応をする必要があるのです。
これは、プロジェクトの規模が大きいほど重要になってくるものです。
例えば、機械設計の中でもプロジェクトの規模が比較的大きいものに、プラント設備などがあげられます。
プラント設備では、一日設備を稼働させたときの売上が何千万円、何億円となりますが、
裏を返せば、一日設備を稼働できなかっただけで、何千万円、何億円の売上を損ねることになります。
このような売上の損失のことを、機会損失といいます。
機械設計の業界ではQCD(Quality(品質)・Cost(価格)・Delivery(納期))が大切であると言われますが、
大規模案件では納期遅れによるペナルティがとてつもない金額に至るため、DQC(Delivery(納期)・Quality(品質)・Cost(価格)・)の順番に優先度を設定し、スピード感を重視せよなどと言われたりします。
これは特に開発業務に置いて重要となっています。
製品ライフサイクルとは「ある製品が開発され、世の中に出回るようになってから、陳腐化して世の中で使われなくなるまでの期間のこと」をいいます。
わかりやすく言うと「その商品の寿命のこと」をいいます。
この製品のライフサイクルが、最近はどんどん短くなっているのです。
2015年に経済産業省が調査したデータによると、各業界において製品ライフサイクルが10年前と比べてどのように変化したかを訪ねたところ「あまり変わらない」という割合は多いものの、
すべての業界において「長くなっている」と回答した企業より、「短くなった」と回答した企業の方が多いという結果が得られたのです。
そして「短くなった」と回答した企業について、ライフサイクルの短縮率を調査した結果が以下のとおりです。
これを見ると、全ての業界において製品ライフサイクルが30%以上短縮したという企業が半数を超えているのです。
たとえば、10年ぐらい前は、一度購入したら3年ぐらいは使ってもらっていた商品が、今では1.5〜2年ぐらいでもう誰にも使われなくなってしまうという意味です。
そして、このスピード感についていけなくなった企業は、市場から姿を消すことになってしまうのです。
どうやったらアイデアが思いつくかというのは人による部分が多いかと思いますが、私は以下のいずれかからアイデアを作ることが多いです。
この中からいくつか使ったり、それでもダメなときには泥臭く手当り次第動きながら、コンセプト・イメージ・発想を創っていきます。
このとき、アイデアをひねり出すのコツは「0からアイデアを作ろうとしない」ことです。
全くの白紙の状態から、画期的なアイデアをひらめくのは、フツーの人にはまず無理です。
そのため、全くの白紙ではなく、既存の技術の良いところ取りでアイデアを創っていくのがコツです。
他社の特許を侵害しない限りは、パクりまくってもOKなので、様々なものをとことん参考にしてみるとよいかと思います。
書籍で言えば、私はこちらの本をよく参考に読んでみたりしています。
一般的な機械設計において、思いついたアイデアはすぐに正式なものになることはなく、
プロジェクトメンバーでDR(デザインレビュー)を行った上で、マネージャーや客先から承認を得ることが必要となります。
ここで、DRメンバーに意見を仰ぐときには、可能であれば複数アイデアを持っていくことをオススメします。
なぜなら、他のものと比較ができないと、アイデアの良し悪しがわからないからです。
アイデアが1つしかないのに、安いとか、性能がいいなんてのはわからないのです
そのため、みんなが評論家のように好き勝手なコメントをした割にはOKもNGもなかったり、誰からもコメントがなく議論が前に進まないという事が多くなります。
複数のアイデアがあると、それぞれ特徴がつかみやすいだけではなく、ボツになったアイデアはバックアップ案となります。バックアップがあると、安心感がありますよね。
DRで説明する際に、機械設計をやっているような工学系出身の人は、文章や言葉での説明よりも、図・グラフ・表での説明を好む人が多いです。
DRではたとえば、以下のような形でアイデアが比較された説明資料を、計画図とセットで用意すると相手はアイデアの選択がしやすいです。
A案 | B案 | C案 | |
---|---|---|---|
概要 | A案の図・説明 | B案の図・説明 | C案の図・説明 |
コスト | ○ | ☓ | △ |
納期・部品入手性 | △ | ☓ | ○ |
施工容易性 | ☓ | ○ | △ |
そして、この資料と一緒に「あなただったらどれを選ぶのか」を、理由を添えて述べることで、議論はぐーんと前進していきます。
ちなみに、納期や予算が許す限りは、複数の案を採用するのもアリです。
DRでいくらみんなが「それっぽい」ことを言っていても、それがどの程度影響してくるのかが試してみないと断定できないのであれば、必ず試作を作って確かめてみましょう。
私の経験をお話すると、ある製品で、アース用のゴムを路面に垂らしながら走る台車があったのですが、ゴムの摩耗があまりにも早いため対策をしてほしいと指示がありました。
私は「単純にゴム1枚で摩耗が早いなら、ゴムを何枚か重ねたら摩耗するまでの時間が伸びる」とアイデアを出したのですが、
一方でとあるベテランのメンバーから「ゴムを重ねたところで、ゴムの重量が増えて路面への押付力が上がるから意味がない」と断言されました。
いかにも「そんなことが起こりそう」なコメントですはありますが、摩耗の量なんていうのは、そう簡単に計算できるものではありません。
そのため、いくら頭で考えてみても断定はできません。
結局は「とりあえずやってみよう」と持ちかけて試験をしたところ、耐摩耗性が大きく向上したため、私のアイデアが採用になりました。
設計段階ではいくら考えてもわからないことというのは、結構多くあります。
そんなときは、収束しない議論を延々と続けるのはやめて、試作・試験をして「百聞は一見にしかず」で確認をしましょう。
今回のポイントについてまとめると、以下の通りとなります。
今回は以上となります。
ご一読ありがとうございました。
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