ねじの緩み止めで、ナイロンナットを使おうと思っているんだけれど、なんで緩み止めになるのか知りたい。あと、使い方についても教えて欲しい。
このような疑問を持った人へ、お答えしていきます。
私は現在機械設計の仕事を始めて5年目です。私が普段設計をする際には、決められた仕様を満たす製品を作ることはもちろんのことですが、「手離れのいい製品を作ること」も心がけています。
「手離れのいい製品」というのは「不具合が少ない製品」という意味です。
不具合が起こると、お客さんに謝罪したり、原因調査をしたり、対策案を考えたり、といったことを急いで行わなければならず、会社の様々な部署が業務に振り回されます。
その上、保証内容によっては無償で対応しなければなりませんので、仕事が忙しくなるのに、機械メーカーにとっては1円の利益にもなりません。
手離れのいい製品を作る上では、特に不具合の多い「ねじの緩み」について、設計段階で慎重になることが大切となります。
緩み止め対策をするには様々な機械要素がありますが、その中で今回はボルト・ナット締結で採用されることが多い「ナイロンナット」について、原理や使い方の解説をしていきたいと思います。
ナイロンナットについての知識を深め、手離れのいい製品の設計ができるような優れたエンジニアになれるようにしていきましょう。
ナイロンナットは、ロックファスナー株式会社というメーカーが製造している、緩み止め用のナットです。
ナイロンインサートロックナットとも呼ばれます。
元々はアメリカの会社で開発されたものですが、日本では戦後の自動車産業の発展とともに普及しました。
そのため、自動車業界を中心に、さまざまな製品にも使用されているようです。
見た目は、普通のナットの片面が凸形に出っ張っているような形状をしており、その凸形の中にナイロンという樹脂材でできたリングがはめ込まれています。
このナイロンのおかげで、ボルトの緩みに対して抵抗することができるのです。
ちなみにナイロンナットは「材質がナイロンであるナット」のことではないので、注意してください(ナイロンが使われているのはリングの部分だけです)。
ナイロンナットの使い方は、ナットの向きだけ気をつけていただければ、特別難しいことはありません。
ナイロンナットの向きは必ず、ナイロンリングが外側(母材と反対側)に来るようにして使います。
施工については、ボルトや雄ねじが加工された部品に対して、ねじ込んでいくだけです。
新規品のナイロンナットを見てみると、ナットの部分は雌ねじが加工されていますが、ナイロンの部分には雌ねじの加工がされていません。
ですが、雄ねじに対してねじ込んでいく際に、ナイロン部が削れていき、雌ねじが形成されていきます。
ナイロン部が削れ、雄ねじに食い込みながら雌ねじが形成されることで、雄ねじとナイロンの雌ねじとの隙間はほぼ0となります。
そのため、ねじ部に強い摩擦力を発生させることができます。
これにより、通常のナットでは衝撃や振動によって発生する緩みを防止することができるのです。
通常のボルトナット締結だと、雄ねじと雌ねじとの間に必ず隙間ができるので、振動等には特に弱かったりします。
緩み止め用のナットはナイロンナット以外にも「ダブルナット 」「Uナット」「ハードロックナット」など、いくつか種類があります。
そんな中でもナイロンナットの最大のメリットは「施工が簡単でかつ価格が安い」というところです。
緩み止め対策として最も安価なのはダブルナットです(よく普及しているサイズのナットだと、1個あたり10円未満です)。
しかしダブルナットは施工がややこしいというデメリットがあり、正しく施工できていないと、緩み止めとして全く機能しません。
一方でナイロンナットは、ダブルナットよりは価格は高くなるものの、他のナットほど高くはありません。
さらに施工は、通常のナット施工と同様でOKなので、とても簡単です。
今回の内容をまとめると、以下のとおりとなります。
装置によっては、ナットの数が数千点〜数万点になりますので、設計段階からナイロンナットの導入を検討してみるのが大切となります。
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ダブルナットの締付けトルク【目安はあります】
ナイロンナットの再利用の可否【できなくはないですが・・・】