3DCADファイル名の命名ルール【CAD運用ガイドライン】

製図・モデリング 更新:

こんにちは、りびぃです!

私は現在、業務委託で様々な会社さんから機械設計のお仕事を頂いているのですが、お客さんごとに違う設計ルールに従って設計していく中で、

各社、独自でルール作っているけど、中にはかなりイケていないルールあるなぁ・・・

というのを感じています笑

各社が独自でルールを作ってしまっている理由としては、「JIS規格が3DCADに追いついていないから」ではないかと思います。

ただ独自のルールを見てみると

  • 無駄が多い
  • ルールがややこしい
  • BOMや他のシステムなどと連携する際に都合が悪い

というものが多いです。

中には優れた独自ルールもあるのですが、それは「守秘義務だから」という理由でオープンにできないんですよね・・・

そこで「CAD運用ガイドライン」と題して、設計効率を高められるような3DCADの運用ルールを勝手に作ってしまおう!というのが、このシリーズの趣旨です。

そのなかで「3DCADのCADファイルの命名ルール」について私からご提案させていただこうかと思います。

「ファイル名なんて、各自で好きに付けたらええやろ?」って思っているあなた、それは大間違いです!ファイル名の付け方1つで効率は全く違います。

このルールは運用していく中で追加・変更していった方がいいというものがあればブラッシュアップしていく予定ですので、YouTubeライブTwitter DM等で忌憚なきご意見をいただけたら幸いです。

良い命名ルール

最初に結論を言いますと、良い命名ルールとは、

  • エクスプローラやCADのツリービューの画面上で見やすいファイル名
  • ファイルを作成する際に、命名ミスを誘発しにくいファイル名
  • 不必要な情報・システムエラーを誘発しやすい文字が含まれていないファイル名

の3つの原則に従っているものです。

「ツリービュー」とは、CADを開いたときに木の枝状にパーツが並んでいる画面のことです(CADソフトによって呼び方が異なります)。3DCADを使いこなすコツは、このツリービューを使いこなすことだと言っても過言ではない重要な画面です。

先程の3つの原則をより具体的にした命名ルールは以下のとおりです。

  • 使ってもいい文字は、半角英数、「-(半角ハイフン)」「_(半角アンダーバー)」のみ
  • 「-(半角ハイフン)」「_(半角アンダーバー)」などの区切り文字は3つまで
  • ファイル名は20文字程度以内を目安とする
  • ファイル名に入れる必要のない情報は、ファイル名に入れない
ファイル名の意味
TYLXEN-IN2ST-FL001R0 TY:トヨタ(客先名)
LXEN:レクサスのエンジン(ワーク名)
IN2ST:Inspection 2nd Station、検査装置第2ステーション(装置名、ライン名)
FL:フレーム(モジュール名、サブAssy名)
001:パーツNo.
R0:Revision 0(改訂No.)
DEV_CLRBT_BGE_000R0 DEV:Development(開発プロジェクト)
CLRBT:Cleaner Robot(装置名)
BGE:Bogie 台車(モジュール名、サブAssy名)
000:パーツNo.(000はアセンブリファイル用のNo.)
R2:Revision 2(改訂No.)

では「なぜこれが良いルールなのか」を説明したいところなのですが、

これについては逆に「なぜ他のルールは良くないのか?」を解説したほうがわかりやすいので、次のセクションで説明いたします。

良くない命名ルール

全角文字が含まれている

全角文字(全角英数・日本語全般)を含んでいるとよくない理由は、

  1. ファイル名の表示幅を広く取ってしまうから
  2. 半角と全角が混在していると、他のシステムと連携しにくいから
  3. 日本語が使われていると、漢字の変換ミスやふりがな違いを誘発しやすいから

です。

まず(1)についてですが、会社によっては支給されているPCのディスプレイが広いとは限らないので、できるだけ狭いディスプレイでも情報が確認しやすいのが望ましいです。

Windowsのエクスプローラの画面だけではなく、ツリービュー上でファイル名を確認する際にも重要です!

続いて(2)についてですが、社内のシステムとCADファイルとを連携させようとしたときに、例えば同じ「A」という文字でも、「半角のA」と「全角のA」とではシステム的には別扱いとして認識されてしまいます。

なので、

なんで文字間違えていないのにエラーが出たり、システムがおかしくなったりするのかな?

という場合には、半角と全角とがごっちゃになっている可能性があったりします。

最後の(3)については、例を見てみましょう。

例えば、

  • 「架台」と「課題」
  • 「取り扱い」と「取扱い」と「取扱」

といった感じで、日本語入力は変換ミスやふりがな違いを誘発しやすいです。

もちろんこういった違いは、連携するシステムやプログラムからすると全て別物扱いになってしまうので、そもそも日本語のファイル名は好ましくないのです。

そういうのは都度チェックすればいいんじゃない?

と考えている方もいるかも知れませんが、

逆に言うと「都度チェックする必要が発生するし、人間によるチェックの精度は低いし、それは全て工数としてコストになる」ことを意味するので、生産性が低いと言わざるを得ません。

こういった問題を誘発しやすいので、そもそも使用できる文字を半角英数のみに制限した方がよいのです。

半角カタカナが含まれている

日本語で半角入力しようとしたら、唯一「半角カタカナを使う」という手段がありますが、これを使うのは好ましくありません。

なぜなら、半角カタカナは、

  • 読みにくいから
  • 文字数が長くなりがちだから
  • 半角カタカナを入力するには日本語入力モードにしなければならず、誤って全角文字を使ってしまうことが発生するから

です。

例えば「液晶パネル自動組立装置」という名前の装置名を半角カタカナにしてファイル名に落とし込むと、

「ABC-エキショウパネルジドウクミタテソウチ-001R0」となります。めちゃくちゃ読みにくい上に、ファイル名が長すぎます。

また「ABC-エキショウパネルジドウクミタテソウチ-001R0」というように、日本語入力モードでの入力を要求している時点で、半角と全角の混在を誘発するので、好ましくありません。

こういった場合は、アルファベットを使った略称(例:ABC-LCDASS-001R0、LCD Assembly)で表現した方が好ましいです。

スペースが含まれている

これはファイル名だけではなく、フォルダ名にも言えることです。

なぜスペースを含んではいけないかというと、

  • スペースを含む名前は、プログラムや社内システムがファイルを参照しに行こうとする際に参照エラーを起こしやすい
  • ファイル名をパッと見たときに、スペースが含まれているかどうかが判別しにくい

という事情があるからです。

スペース付きのファイル名・フォルダ名はよく海外案件をやる際に付けられがちなのですが、

例えば、「C:\Apple iPhone 2023version\APPIP COV2ST 001R0」というファイル名・フォルダ名になっていたとしましょう。

その上で、業務効率化のために「ファイル名を取得してエクセルに部品リストとして並べるプログラムを作成」しようとしたとき、

「C:\Apple」というディレクトリは存在しません。

「C:\AppleiPhone2023version\APPIPCOV2ST001R0」というディレクトリは存在しません。

といった感じでエラーが出てしまいます。

いやいや、「C:\Apple iPhone 2023version\APPIP COV2ST 001R0」なんだけど!?

という感じに思われる方もいるかと思いますが、これはPCにとっての半角スペースは「コマンドの区切り文字」や「そもそも文字として認識されない」といったように扱われるためです。

またフォントによって、「i」や「j」などの文字が幅広に表示されたり、幅狭に表示されたりします。

フォントによって表示幅が異なっていると、パッと見たときにスペースが入っているのか、入っていないのかが非常に判別しにくいのです。

そのため、そもそもフォルダ名・ファイル名にスペースを使わないようにしましょう。

図枠サイズが含まれている

たまに以下のようなファイル名で、図枠サイズの情報を入れている方がいます。

  • A3_DEV_CLRBT_BGE_001R0
  • A1_DEV_CLRBT_BGE_002R0
  • A4_DEV_CLRBT_BGE_003R0

ですが、このようにファイル名の中に図枠サイズの情報は入れてはいけません。

なぜかと言うと、ファイル名をパーツNo.順に並び替えることができず、ファイルを探しにくくなるためです。

ファイルはほとんどの場合においてアルファベット順に並べられるのですが、先程のファイルをアルファベット順に並べると・・・

  • A1_DEV_CLRBT_BGE_002R0
  • A3_DEV_CLRBT_BGE_001R0
  • A4_DEV_CLRBT_BGE_003R0

となります。

これでは、エクスプローラやツリービュー上でファイルを探すときに、ものすごく探しにくいです。

じゃあ、ファイル名の末尾に図枠サイズを書けば問題ないんじゃないの?

 

という方もいますが、それでもダメです。

なぜなら、構想設計が終わってバラシを始めるときにならないとファイル名を確定させることができないからです。

これについては、「ファイル名をコロコロ変えてはいけない理由」のセクションで解説いたします。

担当者名が含まれている

例えば、私りびぃを略称で「RV」と表して、

  • DEV_CLRBT_BGE_RV001R0
  • DEV_CLRBT_BGE_RV002R0

などのように、ファイル名に担当者名を入れている会社さんがいらっしゃりますが、これはダメです。

なぜなら、担当者が異動や転職をした瞬間に、ファイル名に記入されている担当者名が何の役にも立たなくなってしまうからです。

ファイル名がやたらと長い

ファイル名がやたらと長いと、Windowsのエクスプローラ上や、CADのツリービュー上でファイルがめちゃくちゃ探しにくくなります。

例えばファイル名が、

  • ABCDEF-GGGGGG-HIJI-0000-XYZ-001R0
  • ABCDEF-GGGGGG-HIJI-0000-XYZ-002R0
  • ABCDEF-GGGGGG-HIJI-0000-XYZ-003R0

と並んでいたとすると、各ファイルを識別するために重要な部分は「001, 002, 003」のファイル末尾部です。

ですがファイル名がやたら長いと、わざわざ画面を横にスクロールしないとファイルを識別できなくなってしまいます。

かといって、エクスプローラやツリービューのウィンドウの幅を広げてしまうと、他の作業(3Dモデリングなど)をする際の画面が小さくなってしまいます。

良い例のところで申し上げたとおり、目安として20文字程度以内であれば問題ないかと思います。

「-(半角ハイフン)]や「_(半角アンダーバー)」の使用は3つまでとしているのも、文字数が長くなりすぎないようにするためです。

かといって、あまりにも短いファイル名をつけると、プロジェクトの実績が増えていったときに名前が被ってきます。ファイル名が被るとCADファイルの読み込み不具合を起こす場合があるので注意です。

ファイル名をコロコロ変えてはいけない理由

色々と命名ルールについてご提案させていただきましたが、おそらく読者の方の中には、

なんかルールとか面倒くさいから、不都合になったときにファイル名変えるなりしてなんとかするよ

という方がいらっしゃるかと思いますが、これはやらない方がいいです。

なぜなら3DCADでは、むやにファイル名を変更してしまうと、アセンブリ等のCADデータが参照エラーを起こしてしまうリスクが非常に高いからです。

一応、特定の手順を踏んでファイル名を変更すれば参照エラーを起こさずにできるのですが、それを公言してしまうと、いつの間にか「ファイル名を変更しても問題ない」というふうに、都合よく言葉を切り取られてしまうというのは、よくある話です。

CADファイルが参照エラーを起こすと、それを修正するのが非常に困難になります。最悪の場合、ファイルを最初から作り直さないといけなくなります。

なので、

  • バラし終わった後でファイル名変更すれば、図枠サイズをファイル名に記入できるでしょ?
  • とりあえずテキトーにファイル名を付けてといて、あとで変更すればいいでしょ?
  • なんか、社内ITから言われたときに対応すればいいや。

これは、間違いなく事故の元になるので、CADファイルを作成するときから命名ルールを守っていきましょう。

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りびぃ

この記事を書いた人

機械設計エンジニア: りびぃ

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