さて以前、座金は何の役に立つのかということを解説いたしました。
座金の役割の一つは、ボルトの緩み止めでした。
ところで、一般的な座金といえば平座金(ワッシャー)ですが、
これと一緒によく使われる部品としてばね座金(スプリングワッシャー)があります。

ばね座金は、平座金の一部が切れたような形状をしております。
そして、その役割は一般的には、以下のような役割を果たします。
- ボルトやナットと、母材との間に挿入される
- ボルトやナットの締め付けによって、ばね座金が潰される
- ばね座金が潰されたことにより、ばね座金のばね力が働く
- ボルトやナットが、ばね力を受けることによって、摩擦力が向上し、緩みにくくなる
ばね座金は基本的には下の図のように、平座金とセットで使われます。

ところで、何故セットで使われるのでしょうか?
「そういえば、そういう風に使うものとしか思ってなかった・・・」
という方も多いのではないでしょうか。
今回はその理由についてお答えいたします。
ばね座金は、平座金とセットで使用しないとダメ
結論をいうと、基本的にばね座金は、平座金とセットで使用しないとダメです。
その理由は、母材を損傷させてしまうためです。
ばね座金は、平座金のように、平な形状をしていないため、
ばね座金のみでは、ボルト・ナットの締め付け力を、母材へ均等に伝えることができません。
つまり、締め付け力が「強い場所」と「弱い場所」といったように、偏りが発生します。
締め付け力が強い場所では、母材がそれに耐えられずに損傷しますし、
締め付け力が弱い場所では、摩擦力が緩み止めとしてほとんど寄与しません。
また、ばね座金の外径は、平座金の外径に比べて小さいため、
母材に対して、局所的に強い力がかかりやすく、母材を損傷させやすいです。
一度損傷した面は、摩擦力が発生する面が適切でなくなり、
ボルト・ナットが非常に緩みやすくなってしまうので、
二度と使用することができません。

二度と取り外さないのであれば、ダメではない
ばね座金のみを使用して、ボルトで母材と締結したとき、ばね座金は母材に食い込んでいます。
そのため、1回こっきりの締結であれば、ばね座金が母材に食い込んでいることによって、
ある程度は、緩み止め効果を発揮いたします。
ただし、
- 組立と分解とを、繰り返す場合
- ボルトの締結位置を微調整しながら組立てる場合
は、母材の損傷した部分にボルト・ナットを締め付けることになりますので、
ばね座金のみで使用するのはオススメしません。
もっと効果的な緩み止め対策がある
ばね座金は、緩み止めに効果があるという意見はあります。
しかし、これについては定量的なデータが少ないです。
むしろ、振動試験をしてみると、ばね座金をいれてもボルトが緩んでしまったというデータの方が多いのです。
また、もっと効果的な緩み止めの方法があるので、
「平座金を使わず、わざわざばね座金だけを挿入する」ことに意味がないのです。
実際のところ、ばね座金を入れることによる効果は
- ボルトの緩みの進行を少し遅らせる
- ボルトの落下止め
- 軽負荷の場所の、ボルトの緩み止め
といった程度でしょう。
ボルト・ナット締結をする場合は、
緩み止め用のナットで対策をするのが一般的です。
また、ナットを使用しない場合や、母材にナットを溶接している場合は、
- 歯付き座金の使用
- ノルトロックワッシャの使用
- おねじに「ボルト用接着剤」を塗布してから締める
などの対策が挙げられます。

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