材料力学 演習問題 03【熱応力】

材料力学 更新:
演習

不静定や熱応力の問題はつまづきやすいポイントです。

特に熱応力の問題は、一見すると、教科書の説明を見る限りは大したことがなさそうなのですが、いざ問題を解こうとすると、ペンが進まないといったことがよくあります(多くの場合は不静定問題と絡んでいます)。

問題は2問だけですが、つまづきやすいがために、少しハードルは高めです。

今回の演習で、問題が解けるようにマスターしておきましょう。

問題

問1

下図のように、温度T1の環境において、直径d、長さL、ヤング率E、線膨張係数αである丸棒の両端が断熱壁に固定されており、棒材間は隙間なく接触しています。

この状態から温度をT2へ変化させた時、棒材に発生する応力を求めてください。

答え

問2

下図のように、温度T1の環境において、断面積A1、長さL、ヤング率E1、線膨張係数α1である棒材1が2本と、断面積A2、長さL、ヤング率E2、線膨張係数α2である棒材2が1本の左端が断熱壁に、右端が断熱板に固定されています。

この状態から温度をT2まで上昇させた時、各棒材に発生する応力を求めてください。

答え

答え

問1

まずこの問題を見たときに「両端が壁に固定されている=不静定問題」と気づけるとよいですね。

では、どこから手をつけるかですが、まずは問題を別のとらえ方で見てみます。

つまり、「熱膨張するはずの棒が、壁によって拘束されているから変形できない」という発想を、「熱膨張した状態の棒が、壁の反力によって圧縮荷重を受けて変形した」という発想に変換します。

ここから、変形量に着目し「熱による変形量+荷重による変形量」=0という式を立てます。

ΔL=ΔLT+ΔLF=0(1)

ΔL 全体の変形量
ΔLT 熱による変形量
ΔLF 荷重による変形量

熱による変形量は、

ΔLT=εTL=α(T2T1)L(2)

ポイント

εL=ΔL

εT=α(ΔT)

荷重による変形量は次の流れで求めます。

  1. 内力をFと置く(初心者はここから計算するのがオススメ)
  2. 棒を仮想的に切り離し、釣り合いの式を立てる。
  3. 応力を表す
  4. フックの法則からひずみを求める(材料に発生する現象がイメージできる人はここから式を立ててもOK)
  5. ひずみから変形量を求める

内力をFとおいて、棒を仮想的に切り離し、釣り合いの式を立てると、

R1F=0F=R1

ここから、応力の定義より、

σ=Fπd2/4=R1πd2/4

フックの法則より、

εF=σE=R1Eπd2/4

よって、荷重により変形量は、

ΔLF=εFL=R1LEπd2/4(3)

(1)に、(2)と(3)を代入すると、

ΔLT+ΔLF=0α(T2T1)L+R1LEπd2/4=0R1=Eπd24α(T2T1)

つまり、「熱膨張によって、棒はR1に相当する圧縮荷重を受けている」ということができます。

よって、熱応力は、

σ=Fπd2/4=R1πd2/4=Eα(T2T1)

これが答えです。

補足ですがこの方法は、材料に発生してる現象をイメージできるように、「内力を求めてから、応力を求める」という説明をしております。

現象のイメージができているという人は、(3)式を

ΔLF=σLE

とすると、手間が省けます。

問2

問1と違うところは、各棒材の右側は、「板」に固定されているということです。

そのため、膨張したときに棒材は多少は伸び縮みができます。しかし、棒材1と棒材2の線膨張係数が異なるため、変形量が制限されたり、引き延ばされたりします。

複雑そうには見えますが、最初に考えることは問1と同じく、熱と荷重とを分解して考えます。

温度がT1からT2になったときに、各棒材がΔLだけ伸びたとすると、各棒に働く現象は、以下の図のようになります。

ここでは、棒材1に引張荷重が、棒材2に圧縮荷重がかかっているとしておりますが、実際にどちらの材料が圧縮荷重がかって、どちらの材料が引張荷重がかかっているかは、実際の物性値によりますので、上図の関係が逆でもOKです。

この図から、各棒材の伸びに着目すると、以下の関係式が得られます。

2ε1ΔL=ε2ΔL2(εt1+εF1)=εt2+εF22(α1(T2T1)+σ1E1)=α2(T2T1)+σ2E22(α1(T2T1)+F1A1E1)=α2(T2T1)+F2A2E2(1)

ここで、各棒の右端に固定されている断熱板に着目すると、以下の式が得られます。

2P1P2=0(2)

また、各棒を仮想的に切り離し、内力をF1、F2とすると

F1=P1(3)F2=P2(4)

(1)に、(3)と(4)を代入すると、

2(α1(T2T1)+P1A1E1)=α2(T2T1)+P2A2E2(5)

(2)式と(5)式の連立方程式を解くと、

{2P1P2=02(α1(T2T1)+P1A1E1)=α2(T2T1)+P2A2E2

P1=(α22α1)(T2T1)A1A2E1E22(A2E2A1E1)P2=(α22α1)(T2T1)A1A2E1E2A2E2A1E1

よって、各棒材にかかる応力をσ1、σ2とすると、

σ1=(α22α1)(T2T1)A2E1E22(A2E2A1E1)σ2=(α22α1)(T2T1)A1E1E2A2E2A1E1

これが答えとなります。


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りびぃ

この記事を書いた人

機械設計エンジニア: りびぃ

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曲げ応力
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