不静定や熱応力の問題はつまづきやすいポイントです。
特に熱応力の問題は、一見すると、教科書の説明を見る限りは大したことがなさそうなのですが、いざ問題を解こうとすると、ペンが進まないといったことがよくあります(多くの場合は不静定問題と絡んでいます)。
問題は2問だけですが、つまづきやすいがために、少しハードルは高めです。
今回の演習で、問題が解けるようにマスターしておきましょう。
下図のように、温度T1の環境において、直径d、長さL、ヤング率E、線膨張係数αである丸棒の両端が断熱壁に固定されており、棒材間は隙間なく接触しています。
この状態から温度をT2へ変化させた時、棒材に発生する応力を求めてください。
下図のように、温度T1の環境において、断面積A1、長さL、ヤング率E1、線膨張係数α1である棒材1が2本と、断面積A2、長さL、ヤング率E2、線膨張係数α2である棒材2が1本の左端が断熱壁に、右端が断熱板に固定されています。
この状態から温度をT2まで上昇させた時、各棒材に発生する応力を求めてください。
まずこの問題を見たときに「両端が壁に固定されている=不静定問題」と気づけるとよいですね。
では、どこから手をつけるかですが、まずは問題を別のとらえ方で見てみます。
つまり、「熱膨張するはずの棒が、壁によって拘束されているから変形できない」という発想を、「熱膨張した状態の棒が、壁の反力によって圧縮荷重を受けて変形した」という発想に変換します。
ここから、変形量に着目し「熱による変形量+荷重による変形量」=0という式を立てます。
$$\begin{align}
\Delta L=\Delta L_T+\Delta L_F=0\cdots(1)
\end{align}$$
$$\Delta L$$ | 全体の変形量 |
$$\Delta L_T$$ | 熱による変形量 |
$$\Delta L_F$$ | 荷重による変形量 |
熱による変形量は、
$$\begin{align}
\Delta L_T&=\varepsilon_T L\\
&=\alpha(T_2-T_1)L\cdots(2)
\end{align}$$
ポイント
$$\varepsilon L=\Delta L$$
$$\varepsilon_T=\alpha(\Delta T) $$
荷重による変形量は次の流れで求めます。
内力をFとおいて、棒を仮想的に切り離し、釣り合いの式を立てると、
$$\begin{align}
R_1-F&=0\\
F&=R_1
\end{align}$$
ここから、応力の定義より、
$$\begin{align}
\sigma&= \frac{F}{\pi d^2/4}\\
&=\frac{R_1}{\pi d^2/4}
\end{align}$$
フックの法則より、
$$\begin{align}
\varepsilon_F&=\frac{\sigma}{E}\\
&=\frac{R_1}{E\pi d^2/4}
\end{align}$$
よって、荷重により変形量は、
$$\begin{align}
\Delta L_F&=\varepsilon_F L\\
&=\frac{R_1L}{E\pi d^2/4}\cdots(3)
\end{align}$$
(1)に、(2)と(3)を代入すると、
$$\begin{align}
\Delta L_T+\Delta L_F=0\\
\alpha(T_2-T_1)L+\frac{R_1L}{E\pi d^2/4}=0\\
R_1=-\frac{E \pi d^2}{4}\cdot\alpha(T_2-T_1)
\end{align}$$
つまり、「熱膨張によって、棒はR1に相当する圧縮荷重を受けている」ということができます。
よって、熱応力は、
$$\begin{align}
\sigma&=\frac{F}{\pi d^2/4}\\
&=\frac{R_1}{\pi d^2/4}\\
&=-E\alpha(T_2-T_1)
\end{align}$$
これが答えです。
補足ですがこの方法は、材料に発生してる現象をイメージできるように、「内力を求めてから、応力を求める」という説明をしております。
現象のイメージができているという人は、(3)式を
$$\Delta L_F=\frac{\sigma L}{E}$$
とすると、手間が省けます。
問1と違うところは、各棒材の右側は、「板」に固定されているということです。
そのため、膨張したときに棒材は多少は伸び縮みができます。しかし、棒材1と棒材2の線膨張係数が異なるため、変形量が制限されたり、引き延ばされたりします。
複雑そうには見えますが、最初に考えることは問1と同じく、熱と荷重とを分解して考えます。
温度がT1からT2になったときに、各棒材がΔLだけ伸びたとすると、各棒に働く現象は、以下の図のようになります。
ここでは、棒材1に引張荷重が、棒材2に圧縮荷重がかかっているとしておりますが、実際にどちらの材料が圧縮荷重がかって、どちらの材料が引張荷重がかかっているかは、実際の物性値によりますので、上図の関係が逆でもOKです。
この図から、各棒材の伸びに着目すると、以下の関係式が得られます。
$$\begin{align}
2\varepsilon_1\Delta L&=\varepsilon_2 \Delta L\\
2(\varepsilon_{t1}+\varepsilon_{F1})&=\varepsilon_{t2}+\varepsilon_{F2}\\
2(\alpha_1(T_2-T_1)+\frac{\sigma_1}{E_1})&=\alpha_2(T_2-T_1)+\frac{\sigma_2}{E_2}\\
2(\alpha_1(T_2-T_1)+\frac{F_1}{A_1E_1})&=\alpha_2(T_2-T_1)+\frac{F_2}{A_2E_2}\cdots(1)\\
\end{align}$$
ここで、各棒の右端に固定されている断熱板に着目すると、以下の式が得られます。
$$\begin{align}
2P_1-P_2=0\cdots(2)
\end{align}$$
また、各棒を仮想的に切り離し、内力をF1、F2とすると
$$\begin{align}
F_1=P_1\cdots(3)\\
F_2=P_2\cdots(4)
\end{align}$$
(1)に、(3)と(4)を代入すると、
$$\begin{align}
2(\alpha_1(T_2-T_1)+\frac{P_1}{A_1E_1})&=\alpha_2(T_2-T_1)+\frac{P_2}{A_2E_2}\cdots(5)
\end{align}$$
(2)式と(5)式の連立方程式を解くと、
$$\begin{align}
\begin{cases}
2P_1-P_2=0\\
2(\alpha_1(T_2-T_1)+\frac{P_1}{A_1E_1})=\alpha_2(T_2-T_1)+\frac{P_2}{A_2E_2}\\
\end{cases}
\end{align}$$
$$\begin{align}P_1=\frac{(\alpha_2-2\alpha_1)(T_2-T_1)A_1A_2E_1E_2}{2(A_2E_2-A_1E_1)}\\P_2=\frac{(\alpha_2-2\alpha_1)(T_2-T_1)A_1A_2E_1E_2}{A_2E_2-A_1E_1}\end{align}$$
よって、各棒材にかかる応力をσ1、σ2とすると、
$$\begin{align}\sigma_1=\frac{(\alpha_2-2\alpha_1)(T_2-T_1)A_2E_1E_2}{2(A_2E_2-A_1E_1)}\\\sigma_2=\frac{(\alpha_2-2\alpha_1)(T_2-T_1)A_1E_1E_2}{A_2E_2-A_1E_1}\end{align}$$
これが答えとなります。
ものづくりのススメでは、機械設計の業務委託も承っております。
ご相談は無料ですので、以下のリンクからお気軽にお問い合わせください。
機械設計の無料見積もり
機械設計のご依頼も承っております。こちらからお気軽にご相談ください。
構想設計 / 基本設計 / 詳細設計 / 3Dモデル / 図面 / etc...
釣り合いの式だけでは解けない、不静定問題の解き方
【解説】曲げ荷重とは何か