長さを測る道具で、似た言葉に「巻尺」と「コンベックス」とがあるけど、何が違うの?
このような疑問を持った人へ、お答えします。
比較的長い寸法まで測れる測定器具に、「巻尺」や「コンベックス」があります。
おそらく「巻尺」という言葉は聞いたことがある人がほとんどかと思いますが、「コンベックス」という言葉は聞いたことがある人は少ないのではないでしょうか。
ですが、機械の製造業界では「巻尺」と「コンベックス」は全くの別物と認識されているため、これらの区別がはっきりできていなかったり、特徴や用途を理解しておかないと、意思疎通ができなかったり、恥ずかしい思いをします。
そこで今回は、「巻尺」と「コンベックス」との違いについて詳しくお話ししていきます。
巻尺は、収納時はクルクルと巻かれた状態になっております。
目盛りが書かれた帯の部分は曲がりやすく作られているため、例えば円の円周や、人間の胸囲・腹囲といったような、直線以外の長さを測るのが得意です。
また、巻尺の長さのラインナップは「10m」「20m」「30m」「50m」「100m」などと、非常に長い距離まで測れるものが多いことが特徴です。
巻尺には鋼製のものと繊維製の物とがありますが、鋼製は機械に、繊維製は服の採寸などに対して使用されていることが多いです。
一方で、円周のように巻尺を一周させて測定したり、短い距離を測定する分には1人でも測定ができるのですが、それ以外の場合は測定をするのに2人がかりとなります。
具体的には、誰かに巻尺0の目盛りを押さえてもらい、もう一人が巻尺を軽く引っ張りながら目盛りを読むということをします。
巻尺と似たコンベックスですが、正式名称は「コンベックスルール」といい、実はJISでは巻尺の一種として定義されています(JIS B 7512)。
ただし一般的には、「巻尺」と「コンベックス」とは違うものという認識が多く、さらにこれらの特徴や機能が大きく違うことから、この記事でも「違うもの」として扱っていきます。
コンベックスは巻尺と同様に、収納時はクルクルと巻かれた状態となっていますが、測定時に帯の部分を出していくと、帯の部分が幅方向に凸型に曲がり、帯がまっすぐな状態を保とうとします。
そのため、JISでも「直立性に優れた」と表記されています。
余談ですが、コンベックスを英語で書くと「convex」であり、「凸面」という意味があります。
コンベックスの長さのラインナップは代表的なものですと「0.5m」「1m」「2m」「3.5m」「5m」「5.5m」「7.5m」「10m」であり、巻尺よりも短い長さを測定するののに向いています。
また、帯の先端には爪がついており、この爪をうまく活用することによって1人でも長さ測定をすることができるのです。
コンベックスの先端にある爪は、カチャカチャ動くようになっています。
これは「不良品」や「壊れている」という訳ではなく、ワザとこのようにしているのです。
もし爪が動かないと、測定対象物に対する爪の当て方によって、寸法の測定結果が変わってしまうという不都合が生じてしまうのです。
コンベックスの使い方は「爪を引っかけて測定する方法」と「爪を押し当てて測定する方法」とがあります。
下の図を見てみるとわかるかと思いますが、
「爪を引っかけて測定する方法」では「爪の内側を0mmとして、1mm、2mm・・・」に対して、
「爪を押し当てて測定する方法」では「爪の外側を0mmとして、1mm、2mm・・・」となっています。
そのため、爪の厚さ分だけ測定結果がズレてしまうのです。
そこで、このズレを補正するために、あえて爪が動くように作られており、爪の部分の厚さ1mmに対して、爪が動ごく距離も1mmになるように製造されています。
この補正の機能は通称「0点補正移動爪」と呼ばれています。
ちなみ、まれに爪が動かないコンベックスもありますが、これは「爪を引っかけて測定する方法」専用であるようです。
巻尺は「変形しやすい」「長い距離まで測れる」という特徴から、以下のような用途で使用されることが多いです。
ただし、巻尺は引っ張らないと帯部がふにゃふにゃのままになりますし、引っ張りすぎると帯部が伸びて変形するため、力加減には要注意です。
一方、コンベックスは「直立性がよい」「爪を使うことで1人でも測れる」という特徴から、以下のような用途で使用されることが多いです。
コンベックスについては、私も自前のものを持っておりますが、5.5m程度あればだいたい事足ります。
今回のポイントをまとめると、以下のとおりとなります。
ちなみに似た言葉で「メジャー」がありますが、これは巻尺やコンベックスなどを含み、目盛が振られた帯状の、長さを測る測定器具のことをいいます。
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