これからコンベックスを買おうかと思っているんだけれど、どんなものを選んだらいいのかな。おすすめがあれば教えて欲しい。
このような悩みを持った人に、お答えしていきます。
私は普段、機械メーカーで機械設計の仕事をしているのですが、納めた機械の現地調査や、これから納入をする場所の調査などの目的で、現場へ出張に行くことがたまにあります。
機械を据付たり組み立てたりする上では、それをするための図面を予め作成し、それに基づいて作業が行われるのですが、実物や現物のものは必ずしも図面と一致するとは限りません。
図面には、製作誤差・組立誤差・重力によるたわみなどが反映されませんが、実物や現物ではこれが問題となるケースが少なくないからです。
そのため、図面と現物とでどこが違うのかなどを自分で確かめられるようにするため、コンベックスを含む様々な工具を用意しています。
特にコンベックスは1人でもある程度までの長さ測定ができるため、必需品の1つです。
ただ、コンベックスといっても、Amazonやモノタロウなどを見てみると実に多くの種類があり、どういったものが使いやすいのか迷う方もいるかと思います。
そこで今回は、コンベックスの機能や、おすすめのコンベックスなどについてお話ししていきます。
コンベックスは、テープの先端に「爪」と呼ばれる金具がついており、この部分を測定対象物に当てて測定を行います。
コンベックスの爪の部分がカチャカチャ動くのが「移動爪」で、爪が動かないのが「固定爪」です。
カチャカチャ動くのは、故障や不良ではなく必要だから動いているのです。
コンベックスは、爪の部分を測定対象物に引っかけて測定する方法と、爪の先端側の部分を測定対象物に押し当てて測定する方法とがありますが、
爪の部分がカチャカチャ動くことによって、測定方法の違いによる誤差を補正しているのです(0点補正移動爪)。
ちなみに、固定爪は「爪の部分を引っかけて測定する方法」専用ですが、私が今の仕事を始めてから4年半の間に、わざわざ引っ掛け専用である必要性が生じるような状況になったことがありません。
巻き出したテープが引っ込まないようにロックする機能のことです。
このロック機能がついており、さらにテープが折れ曲がらないからこそ長い距離でも1人で測定することができます。
ロック機能のついていないコンベックスもありますが、ロック機能がないと勝手にテープが巻き戻されてしまいかなり扱いづらいので、購入するならロック機能付きがいいと思います。
ちなみに、テープ面を素手で押えて測定している人をたまに見かけますが、人間の体温によってコンベックスが膨張し測定誤差の原因になるので、そのような測り方はナンセンスです。
テープを伸ばしたあと、ホルダーにあるボタンを手動で切り替えることによってロックすることができます。
もう一度ボタンを切り替えると、テープが自動的に巻き戻されていきます。
おそらく、最も一般的に販売されているタイプのコンベックスだと思います。
巻き出すテープの長さが短いならば特に問題はないですが、巻き出すテープの長さが長い場合、ロックとロック解除を何回かカチカチ切り替えないといけませんので、そのような場合は下の「オートロック」タイプがおすすめです。
ちなみに、ロックと言いつつも、テープの巻き戻りがロックされるだけで、ロックをきかせた状態で爪を引っ張ると、テープを引き出すことができます。
ただ、コンベックスの取説には、ロックをきかせたままテープを引き出すような扱い方は書いていませんので、あまりやらない方がいいかもしれません。
テープを伸ばすと自動でロックがかかるため、自分でロックをかける必要がありません。
ロックを解除するには、ホルダーにあるボタンを切り替えます。
特にテープを長く巻き出す際に、手動ロックのような煩わしさがないため、かなりラクです。
個人的には5m以上の長さを巻き出す状況があるならば、オートロックにした方がよいと思います。
ロック機能が2段階ついており、2段階のロックをかけることによって、テープが強力にロックされます。
墨出しなどの、長くテープを出した状態でピンと張らせないといけない場合などで便利です。
もちろん通常使用する上では、1段階だけのロックでも大丈夫です。
コンベックスの爪の先端に、マグネットがついたものです。
爪を部品に引っ掛けたり、突き当てたりする時に、コンベックスが外れにくくなるため、測定の時にラクになります。
鉄骨などを扱う業界では、割と便利な機能だと思います。
ただし、木製や樹脂製品を中心に扱う人や、磁石にくっつくない金属(アルミなど)を中心に扱う人にとっては特に必要のない機能ですので、個人的にはマグネット付きではなくともよいと思います。
また、マグネット付きのコンベックスを電子機器やデジタル系の工具などと一緒に保管してしまうと、それらの機器を壊してしまう恐れがあるので注意が必要です。
目盛りのついた帯の部分を「テープ」と呼びますが、このテープの幅はコンベックスによっていくつか種類があります。
コンベックスのテープの幅は代表的なものですと「13mm」「16mm」「19mm」「22mm」「25mm」「27mm」などの種類があります。
テープの幅が広いほどテープの剛性が向上するため、テープを伸ばしていっても折れにくくなります。
このテープの剛性について、JIS B 7512では「テープ幅が13mm以上のコンベックスルールは、検査台の一端から凹面を上にして長さD(Dはテープ幅の50倍以上)だけ引き出した時に、自重でテープが折れ曲がってはならない」と規定されております。
つまり、Dをテープ幅の50倍であるとすると、コンベックスは最小でも以下の長さでは自重で折れないということになります。
テープ幅 [mm] | 自重で折れないテープの最小長さ[mm] |
13 | 650 |
16 | 800 |
19 | 950 |
22 | 1,100 |
25 | 1,250 |
27 | 1,350 |
実際には、これよりも長い距離巻き出したとしても折れないコンベックスの方が多いようですが、「とにかく折れないコンベックスがいい」という人はテープ幅19mm以上のコンベックスがおすすめです。
あと、テープ幅が広いものほど、目盛りの数字の表記が大きいので見やすいというメリットもあります。
ただし、テープ幅が大きくなるほど、コンベックスがゴツくて嵩張りやすくなるので、注意してください。
コンベックスの表面だけではなく、裏面にも目盛りが書かれているものです。
表側の目盛りは片側しか目盛がないコンベックスと同じですが、裏側の目盛りはコンベックスを垂直で使用する際に読みやすいように、数字が90度回って表示されております。
そのため、天井の高さを測定する時や、Yレベルで測定する時に便利です。
また、表面と裏面とで色分けがされているものであれば、コンベックスがねじれていないかどうかの確認にもなります。
ヨンゴーゴー・ピッチとも呼ばれている目盛で、その名の通り455mmごとに刻まれている表示です。
建築分野でよく使われる寸法で、「尺モジュール」という単位の一つです。
尺モジュールは910 mm = 3尺 = 半間を基本とするもので、建築物の部品(合板やパネル、石膏ボードなど)はその倍数になるように設計されます。
455mmは、910mmの1/2を表すため、目盛りに刻まれていると便利なのです。
おすすめのコンベックスは、どのような場面で使うかによってある程度差があります。
しかし、個人的には少なくとも以下の仕様は必要だと思います。
特に「JISマークを取得していること」は、最も大切です。
どのようなコンベックスを買うにしても共通して言えることは「聞いたことがないようなメーカーが作っている安物」はあまり好ましくないということです。
測定器は「測定結果の信頼性」(例えば10.0mmのものを測ると、ちゃんと10.0mmという測定結果が得られること)が命ですが、安物のメーカーではこのような保証がされていないことが多いです。
長さ:3.5 m | 重量:58 g |
テープ幅:6 mm | ロック:フリー |
目盛:片面目盛 | 爪タイプ:0点補正移動爪 |
455mmピッチ:無し | JIS 1級 |
マグネット:無し |
ロックさえついていないタイプです。
使用には若干不便さがありますが、とにかく軽くてコンパクトなので、胸ポケットに入れたりなど、持ち運びはしやすいです。
ケースの裏面にはメモ書きができるようで、測定した寸法を記入したりできます。
長さ:3.5 m | 重量:107 g |
テープ幅:16 mm | ロック:ロックタイプ |
目盛:片面目盛 | 爪タイプ:0点補正移動爪 |
455mmピッチ:無し | JIS 1級 |
マグネット:無し |
「とりあえずロックさえついていればいいや」という人には、この辺りがおすすめです。
長さ:3.5 m | 重量:140 g |
テープ幅:16 mm | ロック:オートロックタイプ |
目盛:片面目盛 | 爪タイプ:0点補正移動爪 |
455mmピッチ:有り | JIS 1 級 |
マグネット:無し |
オートロックタイプ「快段目盛」シリーズのコンベックスです。
「快段目盛」は、新潟精機の測定器具の機能で、隣り合う目盛線の長さをズラしているため、目盛が非常に読みやすいというものです。
長さ:3.5 m | 重量:165 g |
テープ幅:16 mm | ロック:ロックタイプ |
目盛:片面目盛 | 爪タイプ:0点補正移動爪 |
455mmピッチ:有り | JIS 1 級 |
マグネット:無し |
通常のコンベックスでは、内寸(壁と壁との間の寸法など)が非常に測りにくく、コンベックスのテープを無理やり折り曲げて測定している人もいます。
このコンベックスはケースを四角にし、測定時にこのケースも使って測定を行うことで、内寸を測定することができます。
また、内寸および奥行きの測定がしやすいように、ケースの上部と側面に目盛が見える小窓がついております。
長さ:5.5 m | 重量:359 g |
テープ幅:25 mm | ロック機能:Wロックタイプ |
目盛:両面目盛 | 爪タイプ:0点補正移動爪 |
455mmピッチ:有り | JIS 1級 |
マグネット:無し |
1段階目のロックがオートロックになっています。
墨出しなどの用途におすすめです。
長さ:5.5 m | 重量:400 g |
テープ幅:25 mm | ロック機能:ロックタイプ |
目盛:片面目盛 | 爪タイプ:0点補正移動爪 |
455mmピッチ:無し | JIS 1級 |
マグネット:有り |
爪の先端にマグネットがついているのはもちろん、付属のコンベックスホルダーともマグネットでくっつくため、コンベックスの出し入れに煩わしさがないです。
落下防止のためにワイヤーコードが付属しているため、特に高所作業の際の安全対策になります。
また、コンベックスに使われるバネは、サビに強いステンレス製です。
長さ:5.5 m | 重量:355 g |
テープ幅:25 mm | ロック機能:ロックタイプ |
目盛:両面目盛 | 爪タイプ:0点補正移動爪 |
455mmピッチ:有り | JIS 1級 |
マグネット:無し |
ほとんどのコンベックスのケースはABS樹脂でできておりますが、このコンベックスはアルミダイカストを使用しており、上品な外観になっております。
またバネはサビに強いステンレス、爪は衝撃に強いよう焼入れされており、さらにケース側には爪が戻る時に爪への衝撃を守るためバンパーが備わっております。
長さ:5.5 m | 重量:369 g |
テープ幅:25 mm | ロック機能:オートロックタイプ |
目盛:片面目盛 | 爪タイプ:0点補正移動爪 |
455mmピッチ:有り | JIS 1級 |
マグネット:無し |
オートロックな上、爪の耐久性を向上するためにショックアブソーバーが備わっております。
長さ:5.0 m | 重量:410 g |
テープ幅:25 mm | ロック機能:ロックタイプ |
目盛:両面目盛 | 爪タイプ:0点補正移動爪 |
455mmピッチ:有り | JIS 1級 |
マグネット:有り |
爪の部分だけではなく、ケース本体にもマグネットがついております。
そのため、マグネットがくっつく材料であれば、目盛りを読む時にコンベックスを押えている必要がありません。
長さ:10.0 m | 重量:525 g |
テープ幅:25 mm | ロック機能:ロックタイプ |
目盛:片面目盛 | 爪タイプ:0点補正移動爪 |
455mmピッチ:有り | JIS 1級 |
マグネット:無し |
長さ10mまで測定ができるコンベックスです。
また、サビや摩耗にも強い材質で作られております。
今回のポイントをまとめると以下のとおりとなります。
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巻尺とコンベックスとの違い【一般的には別物です】
コンベックスのJIS規格【だいたい十分の一ミリオーダーです】