ファブレス企業とは?メリット・デメリットを徹底解説

開発

この記事はこのような人に向けて書いています。

  • 独立・起業するために「モノづくりの事業形態」を検討している人
  • 開発企画で、ものづくりに携わっていきたいという人

こんにちはー、おるやまです。

私は、大手美容・健康ファブレス企業の元生産技術職で働いていました。

ところで皆さんは「ファブレス企業」というのを聞いたことあるでしょうか?

ァブレス企業とは、製造工場を自社に保有していないメーカーのことを指します。

え!?メーカーなのに製造工場を持っていないってどういうこと?

もう少し具体的に説明すると、生産や一部設計を外注先の企業に委託して、自社内で企画や開発を中心に行う事業形態の企業を「ファブレス企業」といいます。

代表的なファブレス企業には、アメリカの「Apple」や「インテル」、日本の「任天堂」や「良品計画」などがあります。

どの企業も一度は名前を聞いたことがあるものばかりですが、なんと実は彼らは工場を持っていないのです。

でもさぁ、ものづくりといえば工場で試作や試験を繰り返しながら製品を完成っていうイメージがあるから、工場を持たないっていうのはなんか不思議な感じがするー

確かにものづくりの企業といえば、汚れた作業着で汗水たらして・・・っていうイメージがありますもんね笑

そこでこの記事では、ファブレス企業とはどのような特徴を持つか、そのメリット・デメリットについてわかりやすく解説いたします。

現在、就職や起業を考えている方や、ファブレス企業に興味のある方はぜひ最後まで読んでみてください。

ファブレス企業の特徴とメリット

ファブレス企業の特徴を端的にいうと、「資金確保の容易さ」「開発の柔軟性」があげられます。

というのもファブレス企業には

  • コスト・投資リスクの削減
  • 開発のアウトソーシングによる効率化
  • 商品カテゴリーの多様化

大きなメリットを活用して商品開発をしているためです。

ではこれらのメリットが具体的にどういうことなのか、詳しく解説していきます。

コスト・投資リスクの削減

ファブレス企業は、製造工場を自社に持たないのでコスト・投資リスクを削減することができます。

もし製造工場を保有するとなると、

  • 設備を導入するためのスペースが必要になり、地代がかかる
  • 設備の導入費や維持費がかかる
  • 生産技術部、品質管理部、保全部など多数の従業員を雇う必要があり人件費がかかる

などといった、多大なコストが必要になります。

このような高いリスクを考えると、ファブレス企業は「コスト」と「投資リスク」が圧倒的に少ないというメリットがあります。

コストが掛からない余剰の資金は、新たな事業を展開するために使うことができるのです。

製造工場の保有がきっかけで経営悪化した事例

製造工場のあるなしで、そんなにコストが変わるもんなの?

という方もいると思いますが、めちゃくちゃ変わります。

なんなら、超大手企業だった企業が、製造工場の保有をきっかけに経営悪化し、他社に買収されてしまった事例があるぐらいです。

その企業が「SHARP」です(シャープが鴻海に買収されるまで液晶事業を「変革できなかった」当然の理由, DIAMOND ONLINE)。

SHARPでは大型の液晶ディスプレイを生産するために、多額の資金をかけて工場を建設しました。

しかし工場を完成させたものの、

  1. 海外メーカーのシェア拡大
  2. 価格競争による液晶ディスプレイの価格暴落

により利益を確保することが難しくなってしまいました。

設備の維持管理費や人件費は、売上や利益に関わらず発生し続けます。

これにより、SHAPEは採算が合わなくなり、2016年に台湾の鴻海精密工業という企業に買収されることになりました。

開発のアウトソーシングによる効率化

ファブレス企業では、製造工場を持たないことによって削減された費用を使って、商品の企画・開発に注力することができます。

現在のモノづくりの市場では、

  • トレンドの変化が激しく移り変わる
  • 多くの似たような商品が市場にあふれている
  • 新しい機能の商品が次々に生み出され、新商品がすぐに陳腐化する

などの理由により、「製品ライフサイクル(製品が発売されてから退場するまでの期間)」がどんどん短くなっています。

そのため、企業では企画・開発を効率的に行い、時代の流れに遅れないようにする必要があります。

待望の新製品が発売されても、たった1年で陳腐化っていうは今では当たり前ですからねー

そこでファブレス化することによって、

  • 工場管理や作業者の人員が少ないため、企画・開発の人員を増員できる
  • 外注先の工場へ詳細設計を委託することにより、別商品の企画・開発ができる
  • 新規カテゴリーに強みを持つ外注先の工場と提携することにより、新商品開発の納期を短縮できる

というメリットを活かして開発をしているのです。

ファブレス企業は、時代のトレンドに合わせた魅力のある商品の企画・開発を効率的に行うために、多くのリソースを外注先の企業に委託することで実現しているんですよ。

商品カテゴリーの多様化

ファブレス企業では、既存商品カテゴリーにとらわれることなく、新規の商品カテゴリーの開発・参入を行いやすくなります。 

例えば、「無印良品」ブランドを持つ良品計画は、20年ほど前は文房具などの生活雑貨が主流でした。

ところが良品計画はある時から、生活雑貨だけでなく、家具・眼鏡・食品・化粧品などのような新規カテゴリーの商品展開を始めました。

現在でも幅広いカテゴリーの商品展開をしています。

読者の中には、ファミリーマートでペンやノートを購入したことのある人もいるのではないでしょうか?

このようにしてファブレス企業では、新規カテゴリーの事業をスムーズに展開するために、すでにそのカテゴリーで強みを持っている企業と業務提携を行って開発・生産していくことができます。

生産工場を建てるところから新規カテゴリーの事業を立ち上げるのは、相当なリスクを抱えますからね。

このようにファブレス企業は、時代のトレンドに合わせて事業展開ができ、商品カテゴリーを多様化できる強みがあります。

ファブレス企業のデメリットと対策

一方でファブレス企業には、その特徴を有するがゆえのデメリットも存在します。

その主な事例や対策について解説をしていきます。

設計・製造ノウハウの蓄積が困難

ファブレス企業には詳細設計を外注先の企業に委託している場合には、設計製造ノウハウ自社に蓄積されにくいというデメリットがあります。

一般的に詳細設計を行う企業は

  • 設計の詳細情報(図面や部品の材質情報)
  • 製造工程における重要管理項目(検査方法や規格)
  • ソフトウェアのソースコード

などの重要な製造情報を保有することになります。

ところがファブレス企業の場合は、こういった重要な製造情報を他社に握られてしまうことになります。

「その製造情報をくれ!」っていう人はいますけど、それって「レストランの料理のレシピを客に渡すようなもの」なので、そう簡単に渡すわけないですよね・・・

そうなるとファブレス企業としては、リスクヘッジやグローバル展開のための二社購買でさえ行うことが困難になります。

このようなリスクを低減させるために以下のような契約書による対策を行う必要があります。

契約書によるリスク低減の対策

  1. 設計に関する情報開示(図面や部品表など)
  2. 製造工程の作業指示書や検査設備の仕様の情報開示
  3. ソフトウェアのソースコードの情報開示
  4. 製造ラインの量産工程の立ち合い  など

仮に、情報開示ができない外注先の企業と取引する場合は、これらのリスクを理解した上でスタートすることをおすすめします。

外注先の企業との連携が困難

開発・製造を委託するとなると、提携先とのミスコミュニケーションが原因で、要求仕様と異なる仕様の商品が開発・生産されるリスクがあります。

例えば、

  • 縫製品の生地感を伝えても、全く異なる生地感のものを試作される
  • 電動製品に使われているモータの動作音の大きさや異音のレベルが異なる
  • 外観品質が取り交わした内容と異なる

などが挙げられます。

このように外注先企業との連携がうまくいかないとなると、最悪の場合、開発工数が増加によって予算オーバしたり、納期遅延で発売を延期することになります。

こういったリスクを回避するために以下のような対策を行う必要があります。

特に、海外の外注先企業と提携する場合は、言葉や認識の違いによるミスコミュニケーションが起こりやすいですねー

リスク低減の対策

  • 詳細設計を委託する場合、設計要求仕様を明確にしておく
  • 製造を委託する場合、品質基準を数値化して明確に取り交わす
  • 製造工程の作業内容は、作業指示書をベースに取り交わす

外注先企業の取引先優先順位で発生するリスク

ファブレス企業の製品の生産は、外注先企業の生産能力や生産スケジュールに依存することになります。

そのため、いざ生産を発注する段階になって、当初予定していた生産納期に間に合わない事態になることがあるのです。

どういうことかというと、実は外注先の企業では、複数の顧客企業から生産を受注していることが多いためです。

一社のファブレス企業からの依頼だけで経営が安定するような、そんな簡単な事業じゃないですからねー

複数社からの生産の依頼を受けるとなると、時期によっては依頼が集中してしまい、生産が回らなくなることがあります。

そのような事態に陥った場合、外注先企業は顧客企業に対して優先度を付け、その優先度が高い企業から順に生産を行っていくようになります。

外注先の企業でよくある優先順位を決めるルールの例として、

  • 長期的な関係構築:取引企業との長期的な関係構築を目指して、実績の多い企業や安定受注を見込める企業を優先的にサポートすると決めている
  • 収益性:高収益が見込める取引企業を優先的に対応すると決めている
  • 緊急性:緊急度の高い依頼や納期が迫っている依頼に対して、工場の信頼を守るために対応を優先すると決めている

などが挙げられますが、もしあなたが勤めるファブレス企業がその外注先工場の中での優先順位が低ければ、工場での生産スケジュールを後ろにずらされることになってしまいます。

スケジュールが後ろにずれれば、機会損失や資金繰りの悪化などにつながるため、小規模のファブレス企業ほど経営的に厳しくなってきます。

このようなリスクを低減するために以下のような対策を行う必要があります。

リスク低減の対策

  • 事前に工場と良好な関係性を作り、優先順位を引き上げる
  • 他社の業務状況を考慮して開発や生産スケジュールを管理徹底する

私も過去に、外注先の工場で量産する際に、大手企業と量産日程が重なり、優先順位で負けて日程を遅らせるという悔しい思いをしましたねー・・・

まとめ:未来を切り開くファブレス企業

本記事では、自社に工場をもたないファブレス企業が、革新的な商品を生み出し続けている理由について解説してきました。

ファブレス企業には、

  • コスト・投資リスクの削減
  • 開発のアウトソーシングによる効率工場
  • 商品カテゴリーの多様化

などのメリットによって、事業を拡大させる可能性があります。

一方で、ファブレス企業はこれらのメリットだけではなく、

  • 設計・製造ノウハウの蓄積困難
  • 外注先の企業との連携が困難
  • 外注先企業の取引先優先順位で発生するリスク

などの解決すべき課題やリスクも抱えています。

これらのメリットやリスクをうまく活用しながら、ファブレス企業は革新的な商品を世の中に送り出すことができています。

目まぐるしく変化する市場環境に適応できるファブレス企業は、未来を切り開いていく可能性が高いと感じます。

この記事を通してファブレス企業を知り、「独立・起業を目指している方」や「就職活動をしている方」にとって、将来のキャリアの参考になれば幸いです。

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この記事を書いた人

oruyama

【商品開発】特許侵害の判断基準

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