ステンレスって調べてみると、いろいろな種類があるなぁ。でも、それぞれどんな特徴があって、どういうふうに使い分ければ良いのかな?
このような疑問を持った人へお答えしていきます。
ステンレスは産業用・機械部品用としてだけではなく、家庭用品・医療用などたくさんの分野で使用されております。
たくさんの分野で使用されているが故に、「ステンレス」と一言言っても、そのの種類は、実はJIS規格で70種類以上、海外規格品も含めると200種類以上あります。
「錆びない」という機能を一つとっても、「徹底して錆びないものがいい」「多少錆びやすくてもいいから、硬くて強度が高いものがいい」など、求められる機能は様々あります。
そのため、いざステンレスを使用しようとしても、どれを使えば良いのかわからないという人は多いのではないでしょうか。
また、使用されているステンレスの種類は、それで問題ないのかと思う人もいるかと思います。
そこで今回は、ステンレスの中でも使用頻度の高いものの種類・特徴についてお話していきます。/p>
部品の材質を選定する時に、周りの人にドヤ顔で「バチッ」と決められるようにしていきましょう。
日本で使われるステンレスはJIS規格のものが一般的で、各ステンレスの表記はJIS記号で「SUSxxx」といったように表します(厳密にいうとSUS以外のステンレスもあります)。
SUSは「Steel Use Stainless」の略で、xxxの部分は3ケタの数字が入ります。
呼び方は「サス」と呼び、例えばSUS304は「サス・サンマルヨン」と呼びます。
ステンレスの大きな分類としては以下の5種類が存在します。
これらは「金属の結晶構造の違い」によって分類がされています。
マルテンサイト系は焼入れ性が良好という特徴があり、硬さや強度を向上させることができます。
摩耗やたわみを嫌うようなベアリングやタービン、工具、ボルト・ねじ類、ブレーキディスクなどに使用されることが多いです。
「ステンレスは磁石にくっつかない」というイメージを持っている人もいるかと思いますが、それはオーステナイト系の話であって、フェライト系やマルテンサイト系は磁石にくっつきます。
なので、磁石にくっついたからといって慌てないでください(たまに慌てる人が本当にいますので)。
しかし一方で、ステンレスの中では一番錆びやすいという性質があります。
空気中では錆びにくいですが、雨水が掛かるような場所などの耐食性は十分ではないためため、「錆びないことに期待をして選定する」場合には注意してください。
また、溶接性が悪いというところにも注意してください。
SUS410の最大の特徴は、焼入れをすることができるという点です。
焼入れをすることで、材料を硬くかつ強度を高めるができます。
摩耗や刃こぼれがしにくいため、刃物やドリル、タッピンねじによく使われていたりします。
機械加工性が良いという特徴もあるため、他にも様々な用途に使用されます。
熱処理を施すことによって、ステンレスの中でも最高クラスの硬さ・強度をほこる材料です。
そのため、摩耗を嫌うようなベアリングの材料や、摺動部の受けとしてよく使用されています。
似たような部品に、SUS440BやSUS440Aがありますが、
硬度の観点から言うと、440C>440B>440A、
耐摩耗性および靭性の観点から言うと、440A>440B>440Cとなります。
フェライト系は、強度や耐食性が、マルテンサイト系やオーステナイト系の中間ぐらいという特徴があります。
ある程度強度があり、ある程度硬さがあり、ある程度錆びにくいという感じです。
また応力腐食割れ(Stress Corrosion Cracking)という腐食形態を起こしにくいという特徴があるため、応力腐食割れが想定される条件で使用する際には、フェライト系が好まれます。
応力腐食割れとは、金属の腐食形態の一つで、材料に応力がかかっている状態で腐食環境にさらされると材料が割れてしまう現象です。応力腐食割れでは、材料にかかる応力が少ないにも関わらず割れてしまいます。
耐食性については、少し湿気がある程度の環境なら錆びずに使用することができます。
そのため「オールステンレスキッチン」とよばれるキッチンに使用されるステンレにフェライト系が使用されていたりします。
SUS304と並んで、ステンレスの中では使用頻度は高いです。
価格が安いので、日用品などに使用されることも多いです。
また、耐熱性に優れていることから、放熱器・ヒーターなどの暖房機器にも使用されます。
ただし、SUS304と比較すると錆びやすいという特徴があります。
オーステナイト系は、クロムとニッケルが入った合金鋼です。
ニッケルという成分が入っているため、一般的な鉄材や他のステンレスと比較すると高価ですが、耐食性が高く、機械加工したらすぐ使える(塗装等による防錆処理が不要)というメリットがあります。
また、全ステンレスの製造量の半数以上がこのオーステナイト系であることから、入手性も良いです。
なので私は、とにかく納期が急ぎの場合は、他に不都合がない限りオーステナイト系を使用するようにしています。
オーステナイト系は磁石にくっつかないという性質があるため、磁石を使った工具等を使用する際には注意してください。
ステンレスの中で最も一般的なSUS304などもありますが、オーステナイト系の一部は特定の条件で応力腐食割れが発生してしまいます。
そのため、応力腐食割れを嫌う場合には、フェライト系を用いたりします。
オーステナイト系は焼入れ硬化性がないので、機械の回転軸(シャフト)などのように材料の硬さが必要な部品に対してはあまり使われません。
ステンレスの中で最も一般的なものです。
単に「ステンレス」「ステン」「サス」と呼ぶときは、このSUS304であることが多いです。
磁石にはくっつきませんので、SUS304で製造されたボルト・ねじは、磁石付きのドライバーにくっつきません。
そのため、「ステンレス=磁石にくっつかない」というイメージを強く持たれている人も多いです。
また磁石にくっつかないため、組立の調整をする際に、マグネットスタンド+ダイヤルゲージが使えません。
そんなときは、SUS304の上に鉄板を挟んで固定し、その鉄板にマグネットスタンドを固定させるようにすると良いです。
機械加工については、SUS304は粘っこく、加工がしにくいというデメリットがあります。
溶接が不要で、機械加工をするだけであれば、後述するSUS303を使用するのをおすすめします。
「L」というのは「Low Carbon(低炭素)」という意味です。
低炭素にすることによって、粒界腐食と呼ばれる材料の腐食形態への耐性を向上させたものです。
金属を顕微鏡等で覗いてみると、ある程度の大きさの粒(結晶)がぎっしり詰まったような構造をしております。この粒と粒との境目に沿って材料が割れてしまうような現象を「粒界腐食」といいます。粒界腐食は、炭素成分がたくさん入っているほど発生しやすいです。
SUS316はモリブデンが含有されているステンレスになります。
モリブデンが高価であるため、材料の値段が高くなりますが、「孔食」と呼ばれる腐食への耐性はSUS304よりも更に上です。
そのため、沿岸地域や海中など、非常に錆びやすい環境で使用する機械で使用することができます。
また、高温環境への耐性もあるため、発電設備の熱交換部品等に使用されていたりします。
SUS316の炭素成分を減らし、更に耐粒界腐食した材料にSUS316Lというものもあります。
SUS304に比べて切粉がきれいに出るので、削りやすい(機械加工がしやすい)という特徴があります。
SUS304は熱膨張しやすく、さらに熱が逃げにくいで問題であった
そのため、公差が入る場合に適しています。
ただし、溶接は不可なので注意してください。
熱処理により硬化できないという特徴のオーステナイト系を改良し、熱処理によって硬化できるようにしたステンレスです。
耐食性はオーステナイト系には及びませんが、マルテンサイト系やフェライト系に比べると高いです。
分類の仕方によっては、析出硬化系もオーステナイト系の一種としているものもあります。
JISでは種類が少ないですが、海外品ではたくさんの種類があります。
分類によってはマルテンサイト系に属していることもあります。
切削性はSUS304と同等ぐらいですが、熱処理により強度を高めることができます。
錆びに強く、硬さが必要である場合に適しており、シャフトやばね材、エンジン、航空機などにも使用されています。
また、溶接性もいいです。
その名の通り、オーステナイト系とフェライト系の両方の金属組織を持つステンレスです。
このように、一つの材料の中に二つの組織を持つようなものを「二相」ということから、別名「二相系」とも呼ばれます。
海水環境に強く、応力腐食割れへの耐性も高いことから、海中で使用する部品に使用されます。
応力腐食割れに対する耐性も、SUS304より上です。
耐腐食性のが高いのと引き換えに、材料の値段は非常に高価です。
今回の内容についてまとめると、以下の通りとなります。
材料は非常に奥深く、大手機械メーカーは材料そのものを研究する部署もあったりします。
もし今回の記事を読んで、ステンレスについてより詳しい知見を得たいという人が入れば、以下の図書を参考にしてみると良いと思います。
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