ねじの規格って、日本で使われているものの中でも、メートルだったりインチだったりするのは何故だろう。全体としてねじの規格ってどういう種類があって、それぞれがどういう用途で使われているのかを教えて欲しい。
このような疑問について、お答えしてきます。
ねじは主に「部品の固定」に使われる機械要素ですが、その固定する「もの」(木材なのか、金属なのか、配管なのかなど)によって、さまざまなねじの形状があります。
また日本では「メートル並目ねじ」が最もよく使われますが、海外では「ユニファイねじ」などのヤード・ポンド法で規定されているねじを通常は使用するという国もあったりします。
このように、同じ目的で使うねじに対しても、国によって規格が異なることもあるのです。
今までの日本のものづくりは「Made in Japan」がブランドとして成立していたため、日本で作った製品を海外に輸出するという戦略が主になっていました。
しかし最近では、安価な上に品質もそこそこ良い海外製品を購入するというケースも珍しくなく、互換性があるかどうかなどを調べる上で、海外の規格を参照することも少なからずあります。
そこで今回は、最も多く使用される機械要素である「ねじ」の規格についてお話ししていきます。
「外径」や「ピッチ」の寸法がミリの単純数値で規定されているねじで、日本では最も広く使用されています。
メートルねじを表記する際は「M(呼び径)×(ピッチ)」とします(例:M 6×1.0)。
JISでは「JIS B 0207」で規定されております。
JISは日本産業規格(Japanese Industrial Standards)の略で、日本の工業製品に関する規格や、測定・試験方法、表記方法などが定められた国家規格です。2019年7月までは日本工業規格と呼ばれておりました。
なおメートルねじには、通常のピッチである「並目ねじ」と、ピッチが小さい「細目ねじ」とがありますが、両者ともねじの表記は同じです。
ただ私の場合、細目ねじを使う際には、そのことを明記するために、ねじの表記と合わせて「(細目)」と記載します。
ちなみに、ねじ山の角度は60°になっています。
アメリカ・イギリス・カナダで統一使用された、外径およびピッチがインチで規定されているねじです。
インチねじのピッチは、メートルねじとは異なり、「1インチの長さの中にどれだけねじ山の数があるか」という表記をします。
ねじを表記する際には、並目ねじと細目ねじとで記号が異なり、並目ねじの場合は「UNC(呼び径)」で、細目ねじの場合は「UNF(呼び径)」で、それぞれ表します。
規格は、並目ねじの場合は「JIS B 0206」「JIS B 0210」で、細目ねじの場合は「JIS B 0208」「JIS B 0212」で、定められております。
ちなみに、ねじの山の角度は60°になっております。
史上初めて作られたねじの規格です。
JISではすでに廃止されている規格ですが、現在でも建築分野や電装品関係のねじで一部使われていたりします。
ねじを表記する際には「W(呼び径)」で(例:W 1/4)表します。
規格は「BS 84」で定められております。
BSとは「British Standards」の略で、イギリスの国家規格です。
ちなみに、ねじ山の角度は55°です。
電気配線に使用するパイプ(電線管)の接続に使用されるねじです。
電線管は、家庭ではあまり見ないかもしれませんが、ビルや大型施設などの電気配線に使われていることが多いです。
電線管には肉厚の厚い「厚鋼電線管用平行ねじ」と、肉厚の薄い「薄鋼電線管用平行ねじ」とがあり、ねじの形状はインチ単位で規定がされております。
ねじを表記する際には、厚鋼電線管用平行ねじの場合は「CTG(呼び径)」で(例:CTG 16)、鋼電線管用平行ねじの場合には「CTC(呼び径)」で(例:CTC 19)、それぞれ表します。
規格はどちらのねじの場合でも「JIS C 8305」で定められております。
ちなみにねじ山の角度は、厚鋼電線管用平行ねじで55°、薄鋼電線管用平行ねじで80°になっています。
ヨーロッパで幅広く使われている電線管ねじ
ねじを表記する際には「Pg(呼び径)」で(例:Pg 7)表します。
規格は「DIN 40430」で定められております。
DINとはドイツ工業規格で、日本でも昔のマウスやキーボードと、PC本体とを接続する端子(DINコネクター)がDIN規格に準拠していたようです。
ちなみに、ねじ山の角度は80°です。
インチねじの規格で、配管部品などの「内部を通る流体を気密したいところ」に対して広く使われます。
配管同士が接続される部分や、配管と継手とが接続される部分について設計するときに、この規格を参考にしながら部品を選定することになります。
管用ねじには、ねじ山の高さがどの箇所でも同じである「平行ねじ」と、ねじ山の高さが、ねじ先端部へ行くにしたがって低くなる「テーパねじ」とがあります。
「テーパ(taper)」というのは、「勾配」という意味です。
これらの使い分けですが、配管の気密性能を求める際にはテーパねじ(R、Rc)を使い、単なるパイプの接続には平行ねじを使用するといった感じです。
なお、たとえ気密性能が高いテーパねじと言えども、そのままねじ込んだだけでは流体は漏れますので、雄ねじの部分に「シールテープ」を巻いてから、ねじ込む必要があります。
管用ねじを表記する際は、平行の雄ねじの場合は「G(呼び径)(等級)」で(例:G 1/4A)、平行の雌ねじの場合は「G(呼び径)」で(例:G 1/4)、それぞれ表されます。
なお旧JISでは、雄ねじ雌ねじどちらも、PFという記号が使われておりました。
一方テーパねじの方は、「テーパの雄ねじ」+「テーパの雌ねじ」という組み合わせと「テーパの雄ねじ」+「平行の雌ねじ」という組み合わせで使用されます。
テーパねじを表記する際は、テーパの雄ねじの場合には「R(呼び径)」で(例:R 1/4)、テーパの雄ねじの差し込み用のテーパ雌ねじの場合には「Rc(呼び径)」で(例:Rc 1/4)、テーパの雄ねじの差し込み用の平行雌ねじの場合には「Rp(呼び径)」で(例:Rp 1/4)、それぞれ表記します。
なお旧JISでは、テーパの雄ねじはPT、テーパの雌ねじもPT、平行の雌ねじはPSという記号が使用されておりました。
規格は、平行管ねじの場合では「JIS B 0202」で定められております。
ねじ山の角度は55°です。
アメリカ規格の管用ねじで、JIS管用ねじと同様に「平行ねじ」と「テーパねじ」とがあります。
ねじを表記する際には、JIS管用ねじのように雄ねじと雌ねじとで区別はせず、平行ねじの場合には「NPS(呼び径)」で(例:1/4 NPS)、テーパねじの場合には「NPT(呼び径)」で(例:1/4 NPT)、それぞれ表します。
JISでは規定されていないねじですが、「ANSI/ASME B 2.1」というアメリカ規格で定められております。
タッピングねじは、ねじそのものが母材に雌ねじを形成しながらねじ込むものです。
母材にねじ込むという使い方をするので、基本的にナットは使いません。
母材が木材や樹脂などの、柔らかい材料に対して利用されます。
ただ、タッピングねじが雌ねじを形成しながらねじ込むといいつつも、下穴はあける必要があります(例えば木材の場合は、下穴をあけないとねじ込んだ際に木材が割れる恐れがあります)。
タッピングねじは1種から4種までありますが、4種(AB形)はほとんど使われません。
なお、ねじのピッチについては、1インチ(25.4mm)あたりの山数で表されます。
規格は「JIS B 1122」で定められており、ねじ山の角度は60°です。
最もよく使われるタッピングねじです。
DIYなど、木材の締結に頻繁に使用されます。
ねじの先端が45°に鋭く尖っており、ねじ込む際に位置がずれにくくなっております。
またタッピングねじの中でピッチが最もあらいため、ねじ1回転あたりにねじ込まれる量が多いので、短時間でねじを締め付けることができます。
メートルねじの場合は、ピッチがあらいほど、ねじが緩みやすいのですが、タッピングねじは、ねじ込みと同時に雌ねじが形成されるため、雄ねじと雌ねじとの隙間がほとんどなく、摩擦力が大きいので、あまり緩むことはありません。
1種のように先は尖っていません。ただしテーパ状にはなっており、母材に食い込みやすくなっています。
ねじのピッチは1種よりも細かくなっています。
2種タッピングねじには「B0形」と「B1形」とがあり、B1のものは「溝付き」と呼ばれ、ねじの先端部分が、4分の1カットされております。
このカットした部分が刃の役割をし、母材を削ることができます。
1種のように先は尖っていませんが、テーパ状にはなっております。
ねじのピッチは小ねじと同じになっています。
C1のものは「溝付き」と呼ばれており、タッピングねじの先端部分が、4分の1カットされております。
2種タッピングねじには「C0形」と「C1形」とがあり、C1のものは「溝付き」と呼ばれ、ねじの先端部分が、4分の1カットされております。
2種と同じように、このカットした部分が刃の役割をし、母材を削ることができます。
ミシン専用のねじで、押え金や、定規、ラッパ等に使用されます。
ねじを表記する際は、「SM」という記号が使用され、規格は「JIS B 0226」で定められております。
ねじ山の角度は60°です
腕時計や光学機器、計測器などの精密機器の部品に使われる、非常に小さなサイズのねじです。
ねじを表記する際は、「S(呼び径)」で(例:S 1/4)表されます。
規格は「JIS B 0201」で定められております。
特に自転車に使われるねじです。
ねじを表記する際は「BC(呼び径)」で(例:BC 1/4)表されます。
規格は「JIS B 0225」で定められております。
ねじ山の角度は60°です。
ねじ山の形が三角形ではなく、台形をしているねじです。
ねじは「回転運動を直線運動に変換する」という役割もありますが、「直線運動から回転運動への変換はしたくない」というようなものに台形ねじが使われます。
例えば、万力やジャッキなどはハンドルを回転させることで機能を発揮させますが、これが逆に作用してしまうとうまく使えません。
台形ねじには、ねじ山の角度が30°のものと、29°のものとがありますが、29°の台形ねじの規格は現在では廃止になっております。
ねじを表記する際は、30°台形ねじの場合は「Tr(呼び径)×(ピッチ)」で(例:Tr 8×1.5、旧JISではTM))、29°台形ねじの場合は「TW(呼び径)」でそれぞれ表されます。。
ねじの規格は、30°台形ねじは「JIS B 0261」で、29°台形ねじは「JIS B 0222」で定められております。
様々な用途に使用されているねじですが、実は規格が存在しないねじが皆さんの身近にあります。
それは「ペットボトルのキャップのねじ」です。
ペットボトルのキャップのサイズに関する規格は、JISにもないし、ISO(国際標準化機構)規格にも、ANSI(米国規格協会)規格にもないのです。
規格がないということは、ねじの形状は各ボトルメーカーに委ねられているということになりますので、「ペットボトルのキャップが、容器が変わると閉まらない。互換性がない。」というのは、これが原因だと思われます。
しかし、ペットボトルの飲み口の大きさについては、そのほとんどが内径28mm程度で作られています。
それは、以下の企業や団体が決めたものが、日本で普及していると言われております。
容器のキャップに使われているネジでも、ガラスビンのキャップであれば規格が存在するようです。
DIN 168というドイツの工業規格の中で、呼び径の頭に「GL」という記号がついて寸法が規定されています。
今回のポイントについてまとめると以下の通りです。
なお、今回紹介したねじの規格はあくまで一部であり、厳密にはもう何種類かの規格が存在します。
もしそういった規格が必要な場合には、JISや海外の工業規格などを参考にしてみてください。
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