今回は荷重の分布についてお話しします。
引張荷重や圧縮荷重の話の際には、サン・ブナンの原理を前提としてお話をしていました。
しかし、曲げ荷重の話では、荷重の分布が、計算モデルに大きく影響を与えます。
そこで、今回は荷重の分布について、わかりやすくお話ししていきます。
梁に対して作用する荷重には、以下の3種類があります。
1点に集中して作用する荷重のことを言います。単位は[N]です。
集中荷重による梁の計算は、比較的ラクに解けることが多いです。
使われる記号は、PやW、Fが多いです。
おそらくPress、Weight、Forceの略だと思いますが、Weightは重さ[kg]なので、計算するときにはWg(g:重力加速度)とすることが多いです。
たまにWの記号なのに、単位が[N]を使っていることもあるので、使われている単位には注意してください。
ある領域に分布して作用する力のことを言います。単位は[N/mm]です。
つまり、「1mmあたりに換算したときに作用している荷重」のことを言います。
荷重の分布は、下の図のように、領域によって梁に作用する荷重の大きさがばらばらであることもあります。
分布荷重の中でも、分布が一様(どの領域を切りとっても、分布荷重が同じになる)であるものを「等分布荷重」と言います。
梁は、梁自体の重さによっても変形します。
梁が一様な形状(途中で太くなったり、細くなったりしない)であり、
かつ水平に固定されているとき、
材料の自重による外力は「等分布荷重」として計算できます。
回転力を作用させるような力のことを言います。単位は[N・m]です。
モデル図で書くとどんな状況なのかがわかりづらいですが、例えば梁に棒を立てて、曲げ荷重をかけるような場合が該当します。
厳密にいうと、現実の世界に「集中荷重」は存在しません。
「いきなり意味のわからないことを言い出してる」と思う方もいると思いますので、詳しくお話しします。
集中荷重は「ある一点」に荷重がかかっているとみなすと定義されておりますが、
そもそも「点」は「領域」の概念を持ちません。
つまり、「集中荷重」=「幅がゼロの分布荷重」ということになります。
高校の数ⅢCを勉強した人はわかると思いますが、もう少し詳しく説明します。
例えば、P=100 N(だいたい10kgの米袋を持つのに必要な力)の「集中荷重」が梁にかかっているとします。
これは、分布荷重w N/mmを幅b mmにかけたとき、P=wbの関係を保ったまま、bを0に近づけていくことを意味します。
[mathjax]
$$\begin{align}
P=wb\\
b\rightarrow 0
\end{align}$$
b=1 mmのときにw=P=100Nとなります。しかし、b=1 mmは十分小さな幅であるかもしれませんが「一点にかかっている荷重」ではありません。
bをもっと小さくしてb = 0.001 mmとすると、「P=wb」となるためにはw=100,000 N/mmである必要があります。
しかしb=0.001 mmもまた「一点にかかっている荷重」ではありません。
この調子で、bをどんどん0 mmに近づけていくと、
[mathjax]
$$\begin{align}
w\rightarrow\infty\\
\end{align}$$
となります。
こんなとてもない荷重が材料にかかっていれば、どんなに強度の高い部材であっても理論上は100%壊れます。
しかし、実際の建物に使われている梁で、たった100Nの荷重で壊れる梁を私は聞いたことがありません。
なぜなら現実の世界では、材料に荷重を加える際には「領域」が存在するからです。
例えば、シャーペンの先端を梁に押し付けたとしても、直径0.5mm程度の領域があります。
では、「集中荷重」はなんの意味があるのか?
それは、計算が簡単になるということです。
基本的に分布荷重の方が計算が複雑であり、荷重の分布が複雑であるほど、計算が複雑になります。
普通は積分をする必要があります。
そもそも、どのような分布になっているかがわからなければ、計算をすることすらできません。
ところが、「集中荷重」としてみなせる場合は、これらのことを考慮しなくても計算できてしますのです。
実際には、どのような場合が「集中荷重」とみなせるか?
というのは、時と場合によります。
例えば、全長4mの梁に対して、分布の幅が1mmであれば、集中荷重としてみなせるかもしれませんが、
全長3mmの梁に対して、分布の幅が1mmであれば、集中荷重とみなせない可能性があります。
また、求められている計算の精度にもよりますので、
実際の設計で、「集中荷重」と「分布荷重」のどちらを使って計算をするかは、
各設計者の「感覚」でやっていることが多いです。
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