Oリングって調べてみるといろんな種類や規格があるけれども、それぞれどういう特徴があって、どのように使い分けたらいいのか、教えて欲しい。
このような疑問・悩みを持った人へ、お答えしていきます。
Oリングはシール材の一つで、断面形状が丸をしてるリング状の部品のことを言
ものづくり業界でいうシール材とは、内部からの流体の漏れを防いだり、外部からの流体の侵入を防いだりする目的で導入される、部品や装置の総称を言います。
Oリングのサイズは「内径」と「線径」とで決められておりますが、Oリングには多くの規格が存在し、その規格ごとに寸法のラインナップが異なるのです。
そのため、初めてOリングのカタログを見た時には、何がどう違うのか、どのように使い分けたらいいのかがわからなくなります。
そこで今回は、Oリングについて「どのような規格があるのか」「どのような特徴があるのか」についてお話をしていきます。
OリングはJIS B 2401-1にて、形状・寸法・外観・材質などが規定がされております。
Oリングの中で、運動用(片側固定・片側運動)に使われるOリングは「P規格」と呼ばれています。
PはPackingの略でして、ものづくりではシール材のうち、運動用に使われるものを「パッキン」と呼びます。
サイズの種類が豊富で、さらに固定用としての使用もできますが、運動による摩擦等に耐えられるようにしているためか、G規格のOリングに比べると形状がゴツくなっています。
運動用として使用する場合、シリンダーなどの「往復運動」をする場所に適用されることがほとんどで、「回転運動」に適応可能なのは特殊なものとなります。
運動用のOリングは「JASO F404」という規格でも規定がされており、その一部はJISのP規格に呼び替えることができます。
Oリングの中で、固定用に使われるOリングは「G規格」と呼ばれています。
GはGasketの略でして、ものづくりではシール材のうち、固定用に使われるものを「ガスケット」と呼びます。
固定用Oリングを使用する場合、P規格に比べてG規格の方が線径が細くなりますので、省スペース化の観点で有利です。
線径は2パターンあり、
内径149.3mm以下では線径が3.1mm、
内径が149.3mm以上では線径が5.7mm
となります。
ちなみに、内径が149.3mm以上で線径が3.1mmのものの場合、G規格からさらに派生した「GS規格」というものになります。
Oリングの中で、真空配管に使われるOリングは「V規格」と呼ばれています。
VはVacuumの略で、日本語に訳すと「真空」です。
高真空にも耐えられるようにされているせいだとはおもますが、P規格やG規格に比べて線径が太くなっています。
一般的にOリングの材質はNBR(ニトリルゴム)が多いのですが、真空用の場合はガスバリア性や耐熱性が重視されていることからFKM(フッ素ゴム)を使うのが一般的になっています。
ただ、P規格やG規格と比較すると用途が限定的であるため、流通量は少なめです。
日本国内で使用されているOリングの規格は、JISだけではなくJASOでも規定がされております。
JASOとは、日本自動車技術会規格(Japanese Automation Standards Organization)の略で、自動車やオートバイに適用することを目的とした規格のことです。Oリング以外にもボルトなどの部品や、車両の走行試験方法などに至るまで幅広く規定されております。一部JISとは異なる内容のものもあるので注意が必要です。
そのJASOの中でOリングについて規定されたものが、JASO F404規格です。
一部のOリングは、P規格にて規定されている寸法と全く同じなので、呼び替えることができます。
SAEインターナショナル(米国自動車技術者協会、Society of Automotive Engineers)が定めた、航空宇宙規格です。
主に、航空機用の油圧機器の運動・固定両用Oリングとして使われています。
米国で作られた規格であるせいか、寸法表をみるとインチで決められているように見えます。
一部製品は、米国AN6227規格(旧JIS W 1516)、AN6230規格(旧JIS W 1517)ともいいます。
AN6227は、米国MIL規格がベースとなったOリングの規格であり、航空機用の運動・固定両用として規定されております。
昔はJISでも、JIS W 1516で規定がされておりましたが、現在では廃止されております。
JISでいうP規格のようなポジションでしたが、現在ではその全てをAS568規格に呼び替えることができます。
AN6230は航空機用の固定用Oリングとして使用されておりました。
昔はJISでも、JIS W 1517で規定がされておりましたが、現在では廃止されております。
線径は3.53mmの一種類のみとなります。
JISでいうG規格のようなポジションでしたが、現在ではその全てをAS568規格で呼び替えることができます。
現在のJISでは規定されておりませんが、ISOにおいて規定がされているシリーズで、油圧機器・空圧機器にて国際的に使用されているものです。
ISOとは国際標準化機構(International Organization for Standardization)の略で、世界規模で使用される標準を作る組織のことを言います。世界規模で使用されていますので、かなり多くの国がこの規格を採用しております。例えば長さの単位は「メートル」以外にも「インチ」や「尺」などたくさんありますが、世界共通で使えるようにするため、ISOでは「メートル法」が採用されております。
ISO規格では、Oリングの線径の寸法精度のランク付けがされており、最も厳しい「クラスA」は航空機などに使われております。
国内では、流通量が非常に少ないです。
以下は、公的に規定された規格ではないのですが、限定的な用途などで使用されているOリングの寸法規格です。
精密機器のような小さな機器でも使用可能なように、省スペース化されたOリングです。
内径22mm以下では、線径が1.5mm、
内径22mmより大きいものでは、線径が2.0mm、
となっております。
SはSmallの略であると言われております。
機器の小型化に対応するため、S規格よりもさらに省スペース化に対応したOリングの規格です。
内径は比較的小さいものばかり(20mm以下)で、線径の太さは1.0mmのみとなります。
SS規格よりもさらに省スペース化に対応したOリングの規格です。
M規格は線径が0.5mmととても細いOリングです。
Oリングの内径も最大で10mm程度しかなく、精密機器などのようなニッチな分野で使用がされております。
ちなみにMは、「Micro」の略です。
もともとN規格は、真空機器向けとして規定されたものです。
線径が5.0mmと1種類しかありませんが、一部はNW規格と同じ寸法であるため、呼び替えることができます。
ちなみNの由来は、ドイツ語で真空管の内径を表す「Nenn Weite」の頭文字のNです。
真空分野で使用されるセンターリング用のOリングの規格です。
センターリングとは、真空用配管の継手の一種で、着脱が容易に設計されたタイプを言います。
使用の際は、センターリングとNW規格のOリングとをセットで使用します。
V規格同様、材質はフッ素ゴムが一般的です。
NW(KF)規格のOリングは全て、N規格に置き換えることができます。
今回のポイントをまとめると、以下の通りとなります。
なお、具体的な寸法について知りたい方は、各OリングメーカーのWebサイト(NOKさん、桜シールさんなど)を参考にするか、下のJISをご参照ください。
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【似た言葉】「パッキン」「ガスケット」「Oリング」の違い
「〇〇リング」と名のつくシールの種類と使い分け【Oとか、Xとか】