軸とハウジングとの間にオイルシールが必要でいろいろ調べているんだけれど、そもそもオイルシールってどういう原理で密封されているのかな。オイルシールで両方に固定してしまうと軸が回らなくなるし、隙間が空いているとオイル漏れそうだし。
このような疑問を持った人へ、お答えしていきます。
シール材は、回転・往復運動をする機械や、流体の圧力がかかる場所に対して使用されます。
この中でも一般的に、回転運動をする機械の軸受け(ベアリング)に導入されるシール材が「リップシール」と呼ばれるものです。
軸受け(ベアリング)は回転するものと回転しないものとの間に挿入され、回転するものを支持するための機械要素です。たとえばモーターは、軸は回転しておりますが、ケースは回転しておりません。これは「軸が宙に浮いている」わけではなく、軸とケースとが、ベアリングで指示されているためです。
軸受けは運転をしていくと摩擦熱を発し劣化していくことから、グリースや油による潤滑・冷却がほぼ必須となります。
ただし、グリースや油は流体なので、隙間があると外部へ漏れ出て行ってしまいますので、シール材を使ってグリースや油を密封する必要があります。
回転機械のグリースや油の密封によく使われるシール材は「オイルシール」と呼ばれますが、唇のような形をした「リップ」と呼ばれる部分で密封をすることから「リップシール」とも呼ばれます。
このリップシールは正しく使えばしっかりとグリースや油を密封してくれますが、逆に間違って使用をすると全く密封をしてくれません。
油分が漏れると、軸受けが故障するだけではなく、床や路面が滑りやすくなったり、火事の原因となったりするので、全くシャレになりません。
設計や施工をする際には、正しい知識を身に付けておく必要があります。
そこで今回は、このリップシールによる密封の原理や使い方についてお話ししていきます
オイルシールはリップの部分で流体を密封しておりますが、その原理は相手部材と「軽いタッチ」をすることで、流体を密封しております。
それは「流体を密封する」という機能と「オイルシールが劣化しにくくする」という機能を両立するためなのです。
ここからは具体的な説明をしていきますが、オイルシールを導入する場合はハウジング側に固定されることが多いです。
そのため「オイルシールをハウジングに固定される場合」を前提に話を進めます。
オイルシールはハウジングに固定されておりますので、オイルシールと軸との関係は次の2つのうちのいずれかとなります。
流体を密封しようとすると、しっかりと封じたいところなのですが、
しっかり封じようとしてオイルシールを軸に強く押さえつけてしまうと、リップが摩耗してしまうため、すぐにボロボロになり、流体が漏れる隙間や穴があいてしまうのです。
逆にリップが摩耗するのが嫌だからといって隙間を設けてしまうと、そもそも流体を封じることができなくなってしまいます。
そのため、流体を密封しつつ、オイルシールが劣化しにくくするには、リップを「軽いタッチ」程度にしておく必要があるのです。
オイルを密封するためのオイルシールですが、実はオイルシールのリップ自体、オイルで潤滑されている必要があります。
リップは「軽くタッチしている」とはいえ、乾いた状態で摺動してしまうと、やはり摩耗してしまうのです。
そのため、オイルシールを組込む際には、その直前にリップへ油を指で塗らなければなりません(製造業界では「常識」とされているため、意外と誰も教えてくれなかったりします)。
これを忘れるとリップがすぐに劣化し、グリースや油が漏れ出てきてしまいます。
リップが油で濡れていることで、リップとの間に「油膜」が形成されます。
この油膜が、リップ表面または軸表面のわずかな凹凸を均一にしてくれるので、圧倒的に摩耗しにくくなるのです。
オイルシールのシール性は、流体の圧力が高くなるほど向上していきます。
これは、リップが流体の圧力の高い側に斜めになっているからです
たとえば、右側から左側に向かってオイルが流れようとしているのを、オイルシールで密封することを考えます。
このときリップは右側を向くように、つまり「圧力が高い方」に向くように取り付けます。
すると、リップにオイルの圧力がかかると、リップが軸へ押し付けられるように力を受けるため、オイルシールのシール性がアップします。
さらにオイルの圧力がどんどん上がっても、それに従って軸へリップが強く押し付けられるようになるので、さらにシール性がアップします。
リップと軸はただ接触しているだけにもかかわらずオイルを密封できるのは、このようにリップの形状にポイントがあるためなのです。
オイルシールの原理上、オイルの圧力が高くなるに従ってシール性が向上するのですが、オイルの圧力がどんなに高くても大丈夫というわけではありません。
圧力が高すぎると、リップを潤滑していたとしても摩耗が促進されます。
物理でいうと、リップの潤滑によって摩擦係数を低くしたとしても、垂直抗力が非常に大きければ、摩擦力は大きいということです。
また、リップだけではなく軸側も、金属材料で製作していたとしても傷が入りやすくなる場合があります。
それはリップ部に、外部からの異物や、オイルバス内で発生した歯車の摩耗粉などが噛み込む場合です。
このような異物や歯車の摩耗粉の噛み込みは、研磨剤と同じ役割を果たします。
オイルの圧力が高い上に、摺動までいしていれば、金属材料であれゴリゴリ削れていってしまいます。
今回のポイントをまとめると以下の通りとなります。
なお、今回の内容を踏まえてオイルシールの導入を検討される方は、以下の記事が役に立つかと思います。
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