ナイロンナットって、ナイロンリングに雄ねじをねじ込んでいるけれど、再利用ってできるの?
このような疑問を持った人へ、お答えしていきます。
結論からいうと、ナイロンナットの再利用はできなくもないですが、場合によってはしない方がいいです
私は普段、機械メーカーで設計の仕事をしています。
機械を設計する際に「緩みそうだな」とか「緩んでいるかどうかを確認しづらいな」と思ったところについては、ナイロンナットなどの緩み止めナットを使用するようにしています。
ナイロンナットの原理は、初回使用時はナイロンリングにねじを形成しながら締め付けを行います。
これにより、ナイロンが雄ねじへと食い込むため、初回使用時は緩み止めの効果が高いということは何となく想像できるかと思います。
では、一度ナイロンナットを取り外して、再度組み立てる時はどうなのでしょうか。
ナイロンナットを取り外すたびに新規品に交換をしていては、部品のコストがかなり高くついてしまいます。
ということで今回は、ナイロンナットの再利用の可否について、機能面と実用面からお話ししていきます。
ナイロンナットが再利用できるかどうかについては、ロックファスナー社のWebサイトをみると、掲載されております。
メーカーのサイトをみると、機能的には反復使用5回まで保証されております。
そのため、組立てにおいて「組立て手順を間違えたから、ナイロンナットを取り外さないといけない」といった事態になったとしても、5回までであればOKのようです。
反復5回というのは、JISに掲載されている数値が根拠になっているようです。
JISというのは、日本産業規格(以前は日本工業規格)の略で、日本のものづくりにおけるルールが定められた、国家規格です。
特別な規定がない限りは、基本的にJISに則って機械を設計します。
ナイロンナットが関係する主なJIS規格は「JIS B 1056」です。
JIS B 1056の資料中では「ナイロンナット」ではなく「非金属インサート付きプリベリングトルク形ナット」と呼ばれ、「軸力」のことを「締付け力」と呼んでいます。
反復5回までの仕様であれば、JIS B 1056に定められた軸力の数値の範囲内に収まるということになります(メーカーカタログには明記されていませんが、おそらくこのようなことを意味しています)。
ちなみにJIS B 1056を見るときに、ナイロンナットの場合は、JIS B 1056に掲載されている値の半分の軸力になりますので、注意してください(注記に書いてあります)。
また、Webの無料版のJISでは、図が掲載されていなかったり、表などの体裁が一部崩れていますので、余裕のある方は購入することをお勧めします。
ロックファスナー社のWebサイトには「反復5回まで」と書かれてはいるのですが、組みつけてから時間が経っているものは、再利用しないほうが良いです。
なぜかというと「何回再利用したかという管理にコストがかかるから」です。
そのため、時間が経っているものについては、思考停止で新規品に交換するのが一番良いです。
例えば、ナイロンナットが使われている装置について、組み立ててから5年経った状態のものを分解し、点検修理するとしましょう(オーバーホールと言います)。
そして、点検後の再組み立ての時を考えていただきたいのですが「そのナイロンナットが何回使われているか」というのは、把握するのが難しいです。
ほとんどの場合、最初に組み立てた時と、オーバーホールの時とで担当者が同じであることはありません。
どの業界でもあり得る話ですが、5年も経てば、当時の担当者が異動や退職している可能性が十分にあります。
仮に最初に組み立てた時の担当者と、オーバーホールの時の担当者が同じであれば、回数を覚えているかもしれません。
しかし、5年前の記憶を明確に覚えている人はまずいません。
もしかしたら「xxの部分のナイロンナットは最初の組み立ての時に、実は2回ぐらい組立て直している」というのがあるかもしれません。
では「各場所のナイロンナットについて何回使ったかを記録する」という方法はどうでしょうか。
実はこの方法も不確実なのでやめたほうがいいです。
そもそも、そのような記録を残しているということを、部署全体で共有しておかなければなりません。
情報共有ができていないことで発生する不具合は、よく聞く話です。
装置本体に回数を書き込んだとしても、数年経てば文字が消えかかっていたりもします(合いマークでさえ消えかかっていることがあります)。
さらにいうと、ナイロンナットの使用回数を記録しながらオーバーホールの作業をするのは、作業効率を大幅に下げます。
このようなことをするよりも、1個あたり数十円のナイロンナットを買い直したほうが、無駄や不具合が少なくて済むのです。
今回の内容についてまとめると、以下のとおりとなります。
また、そもそもナイロンナットについてほとんど知らないという人は、こちらの記事をご覧いただくと、どのようなナットなのかがよくわかります。
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