ナットを単体で使う時にはスプリングワッシャーを使っているけれど、ダブルナットを使う時は、スプリングワッシャーって必要なのかな?ナットが緩むと嫌だから、とりあえず入れたほうがいいのかな?
このような疑問をお持ちの方に、お答えしていきます。
私は普段、機械メーカーの設計として仕事をしていますが、設計をする際は「以前の構造がxxだったから、今回も同じにしている」というような思考停止の設計が非常に嫌いな性格です。
そのため、疑問に思ったことは、本を買って調べたり、物理現象としてどのようなことが起こるのかを考えたりしています。
ダブルナットは、機械部品として使用される例はほとんどなく、具体的にどのように使用すれば良いのかと資料を探しても、なかなか見つからないことが多いです。
ダブルナットとは、ナットを2つ重ねて使用する、ねじの施工方法のことです。適切に施工することによって、ねじの緩み止め効果を向上させることができます。
基本的にナット単一で使用する際にはワッシャーとスプリングワッシャーを併用することが多いですが、ダブルナットの場合も同様に施工しても良いのかどうかについて、お話ししていきます。
なお、今回の話については、参考文献が見つからなかったため、あくまで私の考察であることを、ご了承ください。
ダブルナットを使用する際は、スプリングワッシャーは不要です。
それは、ダブルナットにスプリングワッシャーを使用すると、以下の現象が起こると考えられるからです。
ボルトやナットを使用する際、スプリングワッシャーは平ワッシャーとボルト・ナットとの間に入れます。
しかし、同様にダブルナットの場合で、平ワッシャーとボルト・ナットとの間にスプリングワッシャーを組み込んだとしても、緩み止めの効果は増大しません。
その理由は、スプリングワッシャーのばね力は、下ナットにとっては緩む方向に、上ナットにとっては緩まない方向にそれぞれ作用するためです。
まずは、ダブルナットが適切に施工されている時の力の釣り合いの状態について、考えてみます。
ダブルナットは、上ナットはボルトを上へ、下ナットはボルトを下へ引っ張るように力を加えることによって、ボルトとの摩擦力を向上させて、緩み止めの効果を増大させています。
最大静止摩擦力は(摩擦係数)×(垂直抗力)ですから、ボルトを大きな力で引っ張ると、垂直抗力が増大し、最大静止摩擦力が増大します。
ここの状態から、平ワッシャーと下ナットとの間にスプリングワッシャーを組み込んだ場合について考えてみます。
スプリングワッシャーが組み込まれますと、スプリングワッシャーのばね力によって、下ナットが上方向に力を受けます。
そのため、下ナットとボルトとの間の垂直抗力が低下し、下ナットとボルトとの間の摩擦力が減少してしまうと考えられます。
一方で上ナットに対して、スプリングワッシャーのばね力は、垂直抗力を増加させるように作用するため、上ナットとボルトとの摩擦力は増大します。
ただし、下ナットの現象と上ナットの現象とをトータルで考えますと、結局スプリングワッシャーを組み込まなかった状況と、何も変わらないのです。
今度は、上ナットと下ナットとの間にスプリングワッシャーを入れる場合を考えてみます。
上ナットと下ナットとの間に組み込むことによって、スプリングワッシャーのばね力は、上ナット下ナットどちらにとっても、摩擦力が増大する方向に作用します。
一見効果的であるかのように思えるのですが、私の考えですと、スプリングワッシャーを組み込んだせいでナットが緩む可能性があると考えます。
なぜなら、スプリングワッシャーがへたる可能性があるからです。
単一のナット締結に比べると、ダブルナットによる締結では大きな軸力が発生します。
それは、上ナット、下ナットそれぞれがボルトを引っ張るように力を与えているからでしたが、
この力の反力を考えますと、上ナット、下ナットとの間には、強い圧縮荷重が作用していることとなります。
スプリングワッシャー自体はそこまで強度が高い部品ではありません。
そのため、上ナットと下ナットとの間にスプリングワッシャーが組み込まれると、圧縮荷重によってスプリングワッシャーがへたる可能性があります。
スプリングワッシャーがへたると、ナットとの間に隙間が発生するため、ナットが次第に緩んでいきます。
そのため、緩み止めのつもりで組み込んだスプリングワッシャーが、むしろ緩みの原因となってしまうのです。
今回の話をまとめると、以下のとおりとなります。
ただし、今回の話については、実験をして確かめたわけではありません。
もし、実験をしてみたという方がいらっしゃれば、私宛に報告等していただけると幸いです。
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