よく機械設計の仕事で、CADオペレーターとか設計者とかって聞くけれど、業務内容は何が違うの?
CADオペレーターとして仕事をしているけれども、今指示を受けているような業務って、本来CADオペレーターの業務範囲なのかな?
このような疑問についてお答えしていきます。
結論からいうと、CADオペレーターと設計者との業務の違いは、実際のところは曖昧になっています。
私は普段、機械メーカー設計で仕事をしており、設計業務の際にはCADオペレーターの人たちとコミュニケーションをとりながら装置の基本設計や詳細設計等をしています。
CADオペレーターと設計者の業務内容について、昔は、設計者は構想を練ったり、基本設計を主に行い、CADオペレーターは設計者からの指示に基づいて詳細設計・図面作成をするというのが、明確になっていました。
体の部位で例えると、「設計者は頭脳、CADオペレーターは手足」というような位置付けです。
しかし、最近ではそのような区別が曖昧になっていることが多く、CADオペレーターでも自身の頭で考えて装置を設計したりもしています。
ですが、このように何となくで仕事をしていると、CADオペレーターは正社員でないにも関わらず、そのCADオペレーターなしでは設計業務ができなくなるという問題が起こったりします。
このような問題に巻き込まれないためにも、今回はCADオペレーターと設計者について、本来の業務範囲と、実際の業務範囲についてお話ししていきたいと思います。
CADオペレーターとは、設計者からの指示にしたがって、CADによって正確に図面を描き起こすという業務です。
そのため「時間あたりで図面何枚書けるか」が、CADオペレーターの評価となります。
具体的にCADオペレーターがやるべき業務は以下のとおりです。
最近は、コンピューターを使って図面を描くのが当たり前ですが、昔は紙で図面が描かれておりました。
そのため、会社や部署によっては、未だに紙の図面が残っていたりします。
紙の図面のままでは、複製したり、編集したり、他の人と共有したりすることが困難です。そのため、電子化をするという目的で、紙図面のトレースをします。
「コピー機とかでスキャンをして、CADに読み込ませればすぐできそうじゃん」
と思う方もいるかもしれませんが、そう簡単にはいきません。
紙図面の多くは20年以上も前に作図されたものであることも多いので、図面が傷んでいたり、目立った汚れがあることも少なくありません。
特に昭和の頃は、事務所のデスクの上でタバコを吸うことなど当たり前のように行われていたため、図面に焦げ跡がついていたりもします。
そのため、スキャンをしてもそれが読み取れなかったりします。
また紙のサイズがA0やA1のものもあったりするので、普通のコピー機では読み取ることができません。
個人的に最も厄介だと思っているのが、手書きで描かれた図面の中で、フリーハンドで描かれた部分がある場合です。
たまに手書きの図面で、なんとなくの曲線が描かれているものもあり、当時製作した際にもグラインダー等で何となく曲線にしていたという部品があったりするのですがですが、
この曲線をCADで表現するのは、とても難しいのです。
図面の作図の手順として「まず装置全体の組立図を作図してから、その中で製作部品についての製作図にバラしていく」というトップダウン式で進めていくことがほとんどです。
バラシというのは、組立図中の部品のうち、製作が必要な部品1つ1つについて、製作図に描き起こす作業のことを言います。製作図では、形状の寸法だけではなく、表面粗さ、塗装やメッキの指示、寸法公差など、部品の細かい仕様について描いていきます。
バラシでは「軸や穴のはめ合い」や「表面粗さ」をどのような値にするかなど、細かいところを決めていく必要がありますが、JISや社内の技術資料などを参考にしていけばOKです。
またその装置に空圧機器や油圧機器が使用されている場合は、その回路図なども作成いたします。
電気回路図については機械設計では描くことはほとんどなく、電気・制御の部門が担当したりすることが多いです。
設計者が考えた装置の構想を、組立図として表現します。
基本設計の段階での組立図では、装置の大まかな大きさと、駆動系の大まかな能力、センサーの種類などを表していきます。
また、複数の装置を組み合わせたシステム(コンベアをつなぎ合わせたものなど)を設計する際には、それぞれの装置をどのように配置するかというレイアウト図も必要となります。
このような大まかに作成された図面をもとにして、設計者は客先に対して提案をしたり、概算見積を作成したりします。
CADオペレーターの実際の業務は、先ほど述べた「本来の業務」はもちろん行うとして、さらにプラスアルファで業務をやっていることが多いです。
そのプラスアルファの内容は、本来設計者がやるべき業務であったりもします。
契約の内容によりけりな部分もありますが、実際は、設計業務のほとんどをCADオペレーターがやっていることもあります。
特に経験年数が長い人ほど、プラスアルファの業務をやっているように思えます。
その内容は、以下のものがあります。
機械設計をする上では「強度計算」と「能力計算」に基づいて、装置や部品を設計します。
このうち、強度計算については、CADに強度計算ができる機能が備わっている関係上、CADオペレーターがやるということも多いと思います。
しかし能力計算は、本来は設計者がやることであると、個人的には思います。
その理由は、設計士が考えた構想は、計算という裏付けによって初めて、装置として現実味を帯びるからです。
計算の裏付けがない構想は、構想ではなく「ただの思いつき」です。
思いつきだけの指示では、「時間あたりで図面何枚書けるか」というCADオペレーターのパフォーマンスは上がりません。
ですが、ある程度の経験年数でかつ、「自分の業務範囲を多少超えてでも、プロジェクトの工程を遅らせたくない」という健気なCADオペレーターは、ここまでの業務に関わっており、
逆に設計者は、だんだんそれに甘えるようになっていたりします。
これは、経験年数の長いCADオペレーターにありがちなのですが、構想設計ですらCADオペレーターがやっている場合があります。
この場合、設計者は設計業務をほとんどやっていません。
このようなことが起こる要因は様々あるのですが、私が見てきた限りですと以下のようなものがあります。
このように、構想設計までCADオペレーターがやっている場合は注意が必要です。
一番危険なのは、その装置の設計に関わった人が、派遣社員しかいないということです。
派遣社員は、契約が切れれば当然、その会社での業務はしないことになります。
そうなると、その装置に後々問題が起った時や、客先から再度製作依頼がきた時に、対応できる人が誰もいないということになります。
こんな時はよく、派遣元の会社に電話して当時のCADオペレーターに連絡を取るというのを聞いたりしますが、
そのオペレーターからしてみれば、すでに契約は切れているので、対応する義務はないのです。
このような話は、Twitterなどを見てみると、システムエンジニアでもよくある話だそうです。
設計者は本来、設計の頭脳の役割であるのですが、実際は設計業務をCADオペレーターに任せるケースもあり、なかなかカオスな状況で業務が行われています。
では、この状況が完全にNGかというと、そうとも言い切れない部分があります。
CADオペレーターの中には「必要最低限のことしかできない」という人もいれば、「もっと上流工程から設計に携わりたい」という能力もモチベーションも高い人さえいます。
そのため設計者は業務を円滑に遂行するためには「CADオペレーターの業務はここからここまで」と一括りにするのではなく、
CADオペレーター個人個人と密接にコミュニケーションを取り、CADオペレーターのレベルに合った指示をする必要があります。
そのため、必要最低限のことしかできないオペレーターに対しては、その人ができない部分を自分でやるか、他の人に頼むかをする必要がありますし、
能力もモチベーションも高いオペレーターに対しては、暴走しないように進捗をフォローしつつも、問題がない限りはあまり介入しない方が良いです。
基本的に、納期遅れや設計ミスなどの問題が起こった時に、責任が問われるのは設計者の方です。
そのため、CADオペレーターへの放任主義は絶対NGです。
CADオペレーターのレベルに合わせて指示をしつつも、CADオペレーターが作成した図面を読みながら、
「CADオペレーターの設計思想が理解できるか」「設計の要件が満たされているか」をチェックする必要があります。
ただし、これは円滑に業務を進めるという視点での話であり、派遣契約や請負契約の内容によっては適用できないケースもあります。
以上のポイントをまとめると次のとおりとなります。
今回は以上となります。ご一読ありがとうございました。
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