ミリとインチの併記について【実は違法です】

雑学 更新:

ミリとインチとをいちいち変換するのが面倒臭いのだけれど、ミリとインチとが併記されている直尺とかノギスってないの?

このような疑問・悩みについてお答えしていきます。

結論を言うと、そもそもインチ表記の測定器の販売が日本では違法なので、基本的には存在しません。

私は普段、機械メーカーの設計職として仕事をしています。

設計において、各部品の選定をすることもあるのですが、日本製のものでも一般的にインチで表記される部品もあったりします。

例えば、配管の直径や、自転車のタイヤの大きさなどが代表的です。

1インチは25.4ミリですが、普段ミリやセンチ、メートルに慣れている私たちにとって、いきなりインチ表記をされても、どれぐらいの大きさなのかわかりません。

そんなとき「直尺とかノギスに、ミリとインチが併記されていたら、めっちゃ便利なのになぁ」と私はずっと思っておりました。

しかし基本的に、ミリとインチの併記は違法であるため、そのような測定器具は存在しません。

ここで「基本的に」とわざわざ書いているのは、ネット通販とかを見ると併記されている測定器具が販売されてしまっていたりするからです(もちろん国内では法律的にアウトです)。

これの法律を知らないで「いいこと思いついた!」といってこのような商品を販売してしまうと、罰則を受けてしまいます。

そこで今回は、なぜミリとインチとの併記が違法であるのかについて、詳しくお話ししていきます。

計測に関する規定は「計量法」で定められている

この計測機器の作り方については「計量法」という法律によって規定がされています。

リヴィ

計量法とは、「軽量の基準を定め、適正な計量の実施を確保し、もって経済の発展及び文化の向上に寄与することを目的とする」法律です(計量法第一条 一部抜粋)。直尺やノギスのような長さの測定器だけでなく、計量ができるもの全て(質量、時間、温度など)が対象です。

この計量法の第九条では、「非法定計量単位による目盛又は表記を付したものは、販売し、又は販売の目的で陳列してはならない(計量法第九条 一部抜粋)」とあります。

法定計量単位と非法定計量単位

法定計量単位とは、経済産業省が定めた、計量単位に使っても良いと定める単位のことです。

ここでは長さに限って話をしますが、長さに関する法定計量単位は「メートル」だけです(「海里」「オングストローム」は限られた用途で使用可能です)。

ちなみに、メートルの頭に「ミリ」や「キロ」などの接頭語をつけるのはOKです。

それ以外の長さの単位は非法定計量単位となります。

そのため、インチやフィート、ヤードなどの非法定計量単位を計測器に表記したものを販売するのは違法となってしまうのです。

併記どころか、そもそも表記されているものを販売するのが禁止なので「インチ表記のみ」の直尺もアウトです。

ちなみに違反すると、50万円以下の罰金となるようです。

一応逃げ道もある?

法律で禁止となるとなんだか残念な気分になりますが、一応グレーゾン的な逃げ道があります。

メートル法で表記されていればよい?

計量法では長さの単位は「メートルやミリメートルしか使ってはいけない」と定めていますが、逆に言えば「メートルやミリメートルで表記されていればよい」ということです。

どういうことかというと、1インチは25.4ミリメートルですので、25.4ミリメートルごと(または2.54ミリメートルごと)に目盛が振られた直尺はグレーゾーンです。

最もわかりやすいのは455mmピッチのコンベックスで、半間ではなく455mmごとで表記することで、なんとか販売しております。

リヴィ

455mmピッチ(ヨンゴーゴー・ピッチ)とは、よく建築分野で使用される単位です。455mmの2倍である910mmは、910mm = 三尺 = 1間であり、石膏ボードやパネルなどの壁材などの寸法で採用されております。

現在でも日本の建築物のほとんどは「尺」を基準に寸法が決められているので、尺に相当する目盛りを全面的に禁止されると、ものすごく不便になります。

そのため、このあたりについては、杓子定規に禁止するのではなく、臨機応変に対応をしているのだと思われます。

調理器具はグレーゾーン

もっと身近なもので、計量スプーンや計量カップはどうでしょうか。

計量スプーンは「小さじ」「大さじ」と表記されていますし、計量カップは「1/2カップ」「1カップ」などと表記されております。

これらは「体積」を表す単位ではありますが、体積の法定計量単位は「立法メートル」と「リットル」だけです。

これだけ聞くと、「小さじ」と書かれた計量スプーンや、「1/2カップ」と書かれた計量カップは販売が違法であるようにも思えるのですが、

実は計量カップや計量スプーンは、計量法の特定計量器ではないのです。

リヴィ

特定計量器とは、計量法の中で「取引や証明における計量に使用され、又は主として一般消費者の生活の用に供される計量器のうち、適正な計量の実施を確保するするためにその構造又は器差にかかる基準を定める必要があるもの」と定義されております。たとえば「水道メーター」やスーパーで使われる「はかり」、「タクシーメーター」までもが特定計量器と定められており、これらはその構造や誤差などの基準が定められているのです。

そのため、非法定計量単位が書かれていたり、mlと併記されているものが販売されていても問題ないとされているようです。

ただし、これらは一般家庭における使用に限った話です。

計量カップで測定したものを販売する(たとえば、計量カップで1カップを測った醤油を販売する)などはNGです。

特定計量器の詳細についてはこちらをご覧ください。

計量法における計量器の規制の概要(経済産業省)

まとめ

今回のポイントについてまとめると、以下のとおりです。

  • 国内ではインチなどの非法定計量単位が表記された測定器の販売は禁止
  • 一部の分野では、臨機応変に対応しているところもある
  • 特定計量器ではないものは計量法の範囲外だけれども、取引(商売)や証明(公的なデータ)などには使えない

ミリとインチとが併記された測定器がOKとなってしまうと、ミリとインチとがかなり混在してしまうので、法律で規制をしているのだと思います。

ただ、個人的にはミリとインチとが併記された測定器があったら便利そうだなぁと思います。

リヴィ

というか現に私の職場でも、「ニュートン」で話をする人と「キログラム重」で話をする人とが混在していますからね・・・

法定計量単位の一覧については、こちらを参照ください。

法定計量単位(経済産業省)


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りびぃ

この記事を書いた人

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