【解説】締め付けトルクと軸力の関係式の導出(4)

ねじ

前回、三角ネジの場合についての力の関係式について説明をしました。

そこから得られた関係式は、次のとおりです。

ボルトを締めるための条件

$$F_s>F_atan(\rho’+\beta)\cdots(1)$$

ボルトを緩めるための条件

$$F_s>F_atan(\rho’-\beta)\cdots(2)$$

Fs:(軸直断面における)ネジ部の接線力
Fa:軸力
ρ’:ネジ部の摩擦係数μsをcosαで割った値の、摩擦角
β:リード角

ですが、この中でρ’がどのような値になるのかが不明です。
そこで今回は、前回導出した、三角ネジに関するボルトを締める・緩める条件式について、もう少し式変形をして、実際に計算できる形にしていきたいと思います。

「リード角βは十分に小さい」からこそできる近似

並目ネジなどに使われる一般的な三角ネジの場合、リード角は十分に小さい値となります。
並目ネジの場合、だいたい0.05〜0.06ラジアン程度(3°程度)となります。

このことから、いくつかの近似を行うことができます。

まずは、物理ではおなじみの近似ではありますが、

$$tan\beta\simeq\beta\cdots(3)$$

となります。

続いては、「αとα’がほぼ同じ値である」と言うことができます。
つまり、ネジ軸を含む断面で見たネジ山の半角も、ネジ山直角断面で見たネジ山の半角も、ほぼ同じ値ということです。

$$\alpha\simeq\alpha’\cdots(4)$$

さらに(4)式から、摩擦係数および摩擦角についても、以下のように近似を行うことができます。

$$
\mu_s’=\frac{\mu_s}{cos\alpha’}\simeq\frac{\mu_s}{cos\alpha}\\
tan\rho’\simeq\frac{tan\rho}{cos\alpha}\cdots(5)
$$

このように、角度が十分に小さい時に、三角関数は近似式を適用することができます。
tanの他にも、物理では以下のような近似をよく行います。

ポイント

θが十分小さい時
$$sin\theta\simeq\theta\\cos\theta\simeq1\\tan\theta\simeq\theta$$※θはラジアン

ただしこの近似は「リード角βが十分に小さいとみなせる」からこそできるのであり、リードが長いネジ(多条ネジやハイリードネジなど)では成立しない場合がありますので、ご注意ください。

ネジ部の接線力と軸力との関係

先ほどの(3)(4)(5)式を、(1)式に適用していきます。

まず、tanの部分を加法定理で展開します。

$$\begin{align}
F_s&>F_atan(\rho’+\beta)\cdots(1)\\
&=F_a\frac{tan\rho’+tan\beta}{1-tan\rho’ tan\beta}
\end{align}$$

tanの加法定理

$$tan(\alpha+\beta)=\frac{tan\alpha+tan\beta}{1-tan\alpha tan\beta}$$

ここで、tanρ’×tanβは、値がほぼ0になるため、分母の値はほぼ1とみなすことができます。

$$\begin{align}
F_s>F_a(tan\rho’+tan\beta)
\end{align}$$

(3)(5)式を代入しますと、以下のようになります。

$$\begin{align}
F_s>F_a(\frac{\mu_s}{cos\alpha}+tan\beta) \cdots(6)\\
F_s>F_a(\frac{\mu_s}{cos\alpha}+\beta) \cdots(7)
\end{align}$$

(7)式は、ネジのリード角が既知のときに使用できる式です。
リード角が既知ではない場合、tanβを別の形で表します。

下図のように、1ピッチ分のネジを、平面に引き伸ばした図について考えてみます。

長さと角度の関係について考えると、tanβは以下のように記述することができます。

$$tan\beta=\frac{P}{\pi D}\cdots(8)$$

(8)式を(6)式に代入すると、以下のようになります。

$$F_s>F_a(\frac{\mu_s}{cos\alpha}+\frac{P}{\pi D}) \cdots(9)$$

これが、ネジを締める時の条件式となります。

同様に、ネジを緩める時には以下の条件式となります。

$$F_s>F_a(\frac{\mu_s}{cos\alpha}-\frac{P}{\pi D}) \cdots(10)$$

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