【よくある間違い】「ステンレスには絶対磁石が付かない」はウソ

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ステンレスって磁石にくっつかないんでしょ?だから、磁石が組み込まれた工具とか、磁粉探傷試験とかってできないんでしょ?

こういった話は、製造業界では非常によく聞く話ですが、結論から言うと「ステンレスには絶対磁石が付かない」というのは間違いです。

この記事を書いている現在で、機械メーカーの設計として4年間仕事をしているものです。

製造業では、磁石の力を活用した便利な工具・商品・測定器などがいくつかあり、例えば、

  • マグネットスタンド
  • マグネット付きドライバービット
  • マグネット付き水準器(水平器)
  • マグネットトレー
  • マグネット付きコンベックス
  • 磁粉探傷試験(非破壊検査の一種)

などがあげられます。

ただし、これらが使用できる条件としては、当たり前ですが「磁石が付く材料でなければならない」ということです。

一方で、ステンレスとして最も代表的であるSUS304は、一般的には確かに「磁石が付かない」という性質であることから、「ステンレス=磁石が付かないもの」という認識を持たれている方が非常に多くいます。

しかし実際は、マグネットに付くステンレスも多く存在するのです。

そのため、「ステンレス=磁石が付かないもの」という誤った発言をすると、とても恥ずかしい思いをしますし、何よりマグネット関連の工具等が使用できるにも関わらずそれを使わないというのは非効率的です

そこで今回は、ステンレスと磁性に関する知識の詳細について、お話していきたいと思います。

磁石に付かないステンレス・付くステンレス

一般的に、磁石に付かないステンレスと、付くステンレスの種類について、以下の図に示します。

この図を見て「ステンレス=磁石が付かない」という印象を持っていた人はびっくりかと思いますが、一般的に磁石に付かないステンレスは、SUS304やSUS316などのオーステナイト系のみしかなく、実はステンレスの種類でいうと、磁石につくものの方が多いのです。

そのため、ステンレスの中でもメジャーなSUS430という「フェライト系ステンレス」や、工具などによく使われるSUS440などの「マルテンサイト系ステンレス」もちろん磁石が付きます。

「えっ、ステンレスにも色々あるの!?」という人は、こちらの記事でお話をしていますので、参考にしていただければと思います。

ステンレスの種類と特徴【全部合わせると200種類以上あります】
ステンレスって調べてみると、いろいろな種類があるなぁ。でも、それぞれどんな特徴があって、どういうふうに使い分ければ良いのかな?このような疑問を持った人へお答えしていきます。

オーステナイト系でも磁性を帯びる

SUS304やSUS316などのようなオーステナイト系ステンレスも、実は磁性を帯びることがあります。

オーステナイト系ステンレスは、固溶化熱処理という製造工程を経て作られますが、この時点では非磁性体です。

固溶化熱処理というのは、オーステナイトに含まれる化学成分を固体(鉄)の中に溶かし込む工程のことを言います。これをすることで、化学成分が鉄中に上手く溶け込み、耐食性を向上させることができます。また、内部応力を除去するという効果もあります。

しかしその後に、曲げ加工や冷間圧延加工などといった外力が加わると、磁性を帯びてしまうのです。

「なぜ、このようなことが起こるのか?」といったことのポイントが「結晶構造の変化」です。

オーステナイト系は外力が加わると結晶構造が変化する

そもそも「オーステナイト」というのは、結晶構造の一種の名前です。

オーステナイトの詳しい内容については割愛しますが、ここで覚えていただきたいのは「オーステナイト系ステンレスに外力が加わるとマルテンサイト系になる」ということです。

ちょっと専門的な話をすると、オーステナイト系ステンレスの結晶構造は準安定(ある程度安定はするが、大きなエネルギーが加わると構造が崩れる)という特徴があります。

そして、オーステナイトの構造が崩れた結果、マルテンサイトの構造として安定するのですが、マルテンサイト系ステンレスは先ほど少し解説したとおり「常磁性」のため、磁石にくっつくのです。

そのため、オーステナイト系ステンレスを曲げ加工したり、圧延したりすると、その部分が磁性を有してしまうのです。

ただ、「オーステナイト系ステンレスを加工するとめちゃくちゃ磁石にくっつくのか?」というとそういうわけではなく、「若干磁性を帯びる程度」というのが実際のところです。

もし「SUS304に磁性が付与されてしまったのを無くしたい!」ということであれば、熱処理をして、オーステナイト系の結晶構造に戻してあげる必要があります。

ちなみに「マルテンサイト系ステンレスは硬い」ので、オーステナイト系ステンレスに力を加えるとその部分が硬くなります。

このことを「加工硬化」といいます。

なぜ間違った知識が広まっているのか

「ステンレス=磁石が付かないもの」という間違いは本当によく聞きますが、なぜこんなにも広まっているのでしょうか。

これは私の個人的な考察ですが、おそらく、ステンレスの中でもオーステナイト系(SUS304やSUS316)の使用率がダントツで高いせいではないかと思います。

ステンレスは「錆びを嫌う」「耐食性が欲しい」という場合に採用することが多いのですが、その中でもオーステナイト系ステンレスであるSUS304は、耐食性が高い上に、入手性・価格の面からも実用レベルで使えます。

そのため、まず「ステンレスといえばSUS304」という印象を持った人が多く、さらに「SUS304=非磁性体」ですので、「ステンレス=磁石が付かないもの」という風に変換されてしまっているような気がします。

しかし、常磁性ステンレスであるSUS430は、家庭用器具に使われるなど、使用率がそこそこ高い常磁性の材料です

ですので、「ステンレスなのに磁石にくっついた」という場合でも慌てないようにしましょう。

まとめ

今回のポイントについてまとめると、以下の通りとなります。

  • 磁石が付かないステンレスは、一般的にはオーステナイト系のみ
  • オーステナイト系のステンレスでも、曲げ加工や冷間圧延などをすると、若干磁性を帯びる

今回は以上となります。

ご一読いただき、ありがとうございます。

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