物理でよく出る近似の解説【テイラー展開】

数学

物理の問題では、ある物理量が微小である時に可能な近似式がしばしば出てきます。

よく見かけるのは、糸の一方の端を固定し、もう一方の端におもりを付けて、少しだけ振らせる「単振り子」の問題です。

詳細な導出についてはここでは省略しますが、この復元力F(振り子が中央に戻ろうとする力)は以下ようになります。

$$F=-mgsin\theta\cdots(1)$$

ここで、θが微小である時(このθはラジアン です)、

$$sin\theta\simeq\theta\cdots(2)$$

と近似ができるので、(1)式は

$$F=-mgsin\theta\simeq-mg\theta=-mgLx$$

というふうに求めることができます。

ところで、ふと突然(2)式の近似が出てきましたが、なぜこのような近似が適用できるのでしょうか?

それは、大学数学で習う「テイラー展開」をしているためです。
テイラー展開を理解するためには微分の知識が必要ですが、高校生の方でも、近似が適用できる理由を知っているだけで、納得をしながら物理の勉強に取り組むことができると思います。

そこで今回は、テイラー展開について解説をしていきたいと思います。

テイラー展開とは

まず展開とは、ある式や関数を多項式で表すことを言います。
たとえば、中学の数学で出てくる以下の式変形も、積で表されたものを多項式で表していますので、これも展開です。

$$(x+a)(y+b)=xy+bx+ay+ab$$

つまり、テイラー展開も、多項式で表すものなのです。
では、普通の展開と何が違うのかというと、
テイラーは「ある関数を、大雑把な足し算(多項式)で表す」のが目的です。

例えばf(x)という関数があったとします。
f(x)は関数ですので、xは様々な値をとりますが、「x=aとなる場所付近では、f(a)は大体いくらになるか」といったことを考えます。

ちなみに「x=aとなる場所付近においてf(a)が大体いくらになるのかを多項式で表す」ことを「aまわりで展開する」といいます。

f(x)をaまわりで展開すると、以下のように近似することができます(f'(x)はf(x)の1階微分という意味です)。

$$f(x)=f(a)+f^{\prime}(a)(x-a)+\frac{1}{2!}f^{\prime\prime}(a)(x-a)^2+\frac{1}{3!}f ^{\prime\prime\prime}(a)(x-a)^3+\cdots\\$$

これがテイラー展開です。
aまわりで展開するということは、xとaとの値が同じぐらいであれば近似が成り立つけれども、xとaとの値が離れていると近似が成り立たないということを表します。

これは、f(x)=2x2というような簡単な関数に対してはあまり有効ではありませんが、
f(x)=(1+0.3x)20というような明らかに計算が面倒臭い関数に対して、おおよその値を知りたいときに有効です。

テイラー展開の中でもa=0、つまり0まわりで展開することをマクローリン展開といいます。
特別な名前はついておりますが、テイラー展開の一種であることには変わりありません。

$$f(x)=f(0)+f^{\prime}(0)(x)+\frac{1}{2!}f^{\prime\prime}(0)x^2+\frac{1}{3!}f^{\prime\prime\prime}(0)x^3+\cdots\\$$

三角関数の近似

テイラー展開、マクローリン展開を踏まえた上で、冒頭でお話しした、sinの近似についてお話ししていきます。

f(x)=sinxとして、マクローリン展開(a=0まわりで展開)をすると、以下のように近似することができます。

$$\begin{align}
sinx&=sin(0)+(sin(0))^{\prime}x+\frac{1}{2!}(sin(0))^{\prime\prime}x^2+\frac{1}{3!}(sin(0))^{\prime\prime\prime}x^3+\cdots\\
&=(cos(0))x+\frac{1}{2!}(-sin(0))x^2+\frac{1}{3!}(-cos(0))x^3+\cdots\\
&=x-\frac{1}{3!}x^3+\cdots\\
\end{align}$$

ここで、x=θとし、θが微小な値であるとします。すると、θ3などはほぼ0になりますので、右辺の第2項以降を無視すると、最終的に以下のような近似となります。

$$sin\theta\simeq\theta$$

もちろん、第2項以降も含めて計算をすると、結果の精度が向上するのですが、
「計算結果にほとんど影響を与えないこと」「計算が大変になること」から、無視をしてしまった方がよいです。

微小要素で考える問題のテイラー展開

よく大学の物理などでは、微小要素という概念を導入して問題を解きます。

大まかな流れとしては、考えるべき領域全体を、ものすごく細かい領域(微小要素)になるよう分割し、最後に微小要素に発生した現象を積分して、全体の現象を把握する

では例題を使って、テイラー展開が導入される様子を見ていきましょう。

丸棒の長さ・断面積・密度をそれぞれL・A・ρ、x座標を天井の位置から鉛直下向きにとります。

ここで、この丸棒を微小要素に分け、x=x0と、そこからdxだけ離れたx=x0+dxに挟まれた微小要素に働く力について考えていきます。

このときF(x)をx=x0+dxまわりでテイラー展開すると、

$$\begin{align}
F(x)&=F(x_0+dx)+F^{\prime}(x_0+dx)(dx)+\frac{1}{2!}F^{\prime\prime}(x_0+dx)x^2+\\
&\frac{1}{3!}F^{\prime\prime\prime}(x_0+dx)x^3+\cdots\quad\cdots(3)\\
\end{align}$$

ここで、左辺にx=x0+dxを、右辺にx0=x-dxを代入すると(3)式は、

$$\begin{align}
F(x_0+dx)&=F(x)+F^{\prime}(x)(dx)+\frac{1}{2!}F^{\prime\prime}(x)x^2+\frac{1}{3!}F^{\prime\prime\prime}(x)x^3+\cdots\\
&=F(x)+\frac{F(x)}{dx}dx+\frac{1}{2!}\frac{d^2F(x)}{dx^2}x^2+\frac{1}{3!}\frac{d^3F(x)}{dx^3}x^3+\cdots
\end{align}$$

となります。しかし、dxは微小な値であるため、右辺の第3項以降の項については無視することにしますと、最終的に以下の近似式が得られます。

$$F(x+dx)=F(x)+\frac{F(x)}{dx}dx$$

この近似式は、本当によく登場するので、ぜひ覚えておくと良いでしょう。

コメント

  1. ななし より:

    単振り子は長さに反比

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