今回は、少し設計職の方々向けの話になりますが、
材料をネジで締結する方法についての話です。
部品の組立において、多くの場合ネジが使われますが、
ネジを使うには、ボルトと、ボルトが挿入されるめねじが必要です。
ボルトを締結するにはいくつか方法がありますが、
その中で、
- 加工の容易性
- 組立作業性
- 分解・メンテナンス性
などを考慮して、締結方法を選択します。
では、主にどのような締結方法があるのか?
設計するときの参考にしていただけると幸いです。
- ボルト・ナット
- めねじ加工
- バーリング
- 裏ナット
- ヘリサート
- ポップナット
ボルト・ナット
材料を、ボルトとナットとで挟み込むようにして固定する。最も一般的な締結方法。

メリット
材料に対しては穴あけ加工のみでよいので、加工が容易
特殊工具がいらない
デメリット
ネジを締めたり、緩めたりするときに、ボルトの回転を抑えながらナットを回さなければならない。
ネジを締めるのに、両手を使ったり、2人がかりで行う必要がある。
めねじ加工
材料の一方にめねじを加工する。(タップ加工)
板厚が厚い材料に対して使うことができる。

メリット
ボルト挿入側の面から、ボルトを締めるだけで組み立てができる
片手でもボルトを締めることができる
加工自体は、それほど難しくない
デメリット
材料が薄い場合は不可能(目安として、ネジが3山かかる程度の厚さは必要)
硬い材料にめねじを加工するのは難しい
ステンレスなどでは、慎重にやらないと加工硬化を起こし、めねじ加工の工具が折れることがある
バーリング+めねじ加工
材料に対して、パンチャーで立ち上がり加工(王冠を形成させるようなイメージ)をすること。
立ち上がり加工をすることで、薄い材料に対してもめねじ加工をすることができる。
薄い材料を使うことが多い、カバーなどでよく使われる。

メリット
板厚を増やすことなく、めねじを形成させることができる
ボルト挿入側の面から、ボルトを締めるだけで組み立てができる
片手でもボルトを締めることができる
デメリット
比較的薄い材料にしかできない
伸びやすい材料にしかできない(硬い材料や、脆い材料は不可)
立ち上がりをさせた分だけ、材料の裏側が出っ張る
裏ナット(溶接ナット)
材料の、ボルトを挿入する穴とは反対側に、ナットを溶接する。

メリット
溶接の道具があれば、簡単にできる
ボルト挿入側の面から、ボルトを締めるだけで組み立てができる
片手でもボルトを締めることができる
デメリット
溶接の道具が必要
溶接作業をする上では十分な知識がなければならない(感電や衣服への燃え移りなどの事故が起こりやすい)
材料によっては溶接がやりにくかったり、できなかったりする
ナットと、被溶接材料との相性によっては、溶接ができない
ヘリサート
強度が低い材料にめねじを加工したい場合に、予めあけておいた穴に挿入することで、めねじが損傷しないように保護する。
材料がアルミや鋳物、樹脂の場合などによく使われる。
ネジインサートとも呼ぶ。

メリット
強度が低い材料にも、めねじを加工することができる
ボルト挿入側の面から、ボルトを締めるだけで組み立てができる
片手でもボルトを締めることができる
デメリット
ヘリサートを挿入するのに、専用工具が必要
めねじの長さは、「ネジの呼び径程度」~「2×ネジの呼び径程度」まで
薄い材料には使用できない
ポップナット
片側施工を可能にする部品。
まず、材料に対して決められた大きさに穴をあけておき、そこにポップナットを挿入して、専用工具で締める。
すると、ポップナットつぶれることで、ポップナットが材料に固定される。
ポップナットの内面にはめねじが切ってあるため、ボルトで締結することができるようになる。

メリット
ポップナットの取り付け作業自体は比較的簡単
ボルト挿入側の面から、ボルトを締めるだけで組み立てができる
片手でもボルトを締めることができる
デメリット
ポップナットを取り付けるのに、専用工具が必要
材料との間に隙間ができるので、材料が軋んだりする場合がある
比較的薄い材料にしか使えない
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