ボルトの軸力はばらつくというのが常識【トルク法】

ねじ

ボルトを締める際に、あらかじめ定めておいた規定トルクの値になるようにトルクをかける締め付け方法を、「トルク法」といいます。

トルク法は「トルクレンチを使うだけでよいので、簡便であること」や「ボルトが弾性変形する範囲内で締め付けるため、取付け・取外しの頻度が多い部分に適している」ことなどから、非常に多くの場面で使われます。

しかし、トルク法による締め付けは、軸力のばらつきが大きいという欠点があります。

軸力のばらつきが大きいということは、どういうことかといいますと、
母材やボルトが同じ材料・同じサイズで、同じトルクをかけて締め付けたとしても、
軸力が小さすぎたり、大きすぎたりするということです。

そのため、トルク法でボルトを締め付けるときには、ちゃんとした知識を持って行うことが必要なのです。

ということで今回は、トルク法における軸力のばらつきについてお話ししていきます。

主な原因は「摩擦係数のばらつき」

トルク法による締め付けで、発生する軸力がばらつく主な原因は、ネジ面および座面の滑り摩擦係数がばらつくためです。

トルク法における、締め付けトルクと軸力の関係は、以下の式で表されます。

$$T=F_a(\frac{D_2}{2}\frac{\mu_s}{cos\alpha}+\frac{P}{2\pi}+\mu_w \frac{D_w}{2})$$

T:締め付けトルク
Fa:軸力
D2:ネジの有効径
μs:ネジ面の滑り摩擦係数
α:ネジ山の半角
P:ネジのピッチ
μw:座面の滑り摩擦係数
Dw:等価摩擦直径

軸力Faは、ボルトの耐力の70%程度とすることが多いです。

トルク法では、この関係式を使って規定トルクを算出しますが、この計算において最も難しいのは、「摩擦係数の値をいくらで見積もるか」です。

摩擦係数の値は、材質の組み合わせや接触面の粗さ、温度、湿度などによってかなり値が変わるため、ばらつきも大きくなります。

摩擦係数の値を可能な限り高い精度で設定するためには、実験による測定をするしかないですが、
当然ボルトやナットの個体差もあるため、全ての締結箇所が同じ摩擦係数の値になることはありません。

だいたいの目安ですが、同じ材質で同じような加工をしても、摩擦係数は±30%程度はばらつくと見ても良いでしょう。
もちろん、材料の組み合わせによっては、これよりもばらつきが大きい場合もあれば、小さい場合もあります。

材質の組み合わせごとの摩擦係数の一例については、以下の書籍に記載されております。

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軸力のばらつきを試算すると・・・

軸力のばらつきについて試算してみましょう。

摩擦係数が平均よりx%高い場合に計算される軸力をFa,max、摩擦係数が平均よりx%低い場合に計算される軸力をFa,minとします。

そしてFa,minに対して、Fa,maxの値がどの程度になるかは、一般的に以下の値程度となることがわかっております。

$$\frac{F_{a,max}}{F_{a,min}}\simeq\frac{1+(x/100)}{1-(x/100)}$$

ここで、x=30%を代入すると、

$$\begin{align}
\frac{F_{a,max}}{F_{a,min}}&\simeq\frac{1+(30/100)}{1-(30/100)}\\
&=\frac{1.3}{0.7}\\
&=1.86
\end{align}$$

となります。
つまり、およそ2倍弱程度の差があるのです。

軸力のばらつきの対策

軸力のばらつきの対策としては、摩擦係数の値を小さくすることが有効です。

摩擦係数の数値にかかわらず、値のばらつきが±30%あったとしても、摩擦係数の数値自体が小さければ、軸力のばらつきをある程度抑えることができます。

具体的な対策としては、潤滑油の塗布が最も一般的です。

また、ロックタイトというネジ用の接着剤を塗布することによっても、摩擦係数を下げることができます。さらにロックタイトは固まれば緩みどめとしても効果を発揮します。

ただしロックタイトは、どの程度塗布するかというところがなかなか定量化しにくいので、過信は禁物です。

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補足

締め付けトルクと軸力の関係式の解説については、こちらをご覧ください。

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