トルク法によるボルト締め付けにおける注意点

ねじ

ボルトによる材料の固定は、ボルトを締め付けていくと、母材同士の接触面に摩擦力が生じることで、母材同士を固定できます。

ボルトの締め付けによって摩擦力を生じさせるためには、ボルトの頭が母材に接した後、ボルトを引張り方向に変形させ、軸力を発生させる必要があります。

この軸力が適切にかかっていることが、ボルトの締め付けにおいて非常に重要であり、
発生する軸力が適切にかかるように、工具を使ってボルトにトルクをかける必要があります。

この、ボルトを締め付けるためのトルクのことを「締め付けトルク」と言います。

軸力を直接測定するにはセンサーなどが必要となりますが、機械によってはボルトの固定箇所は数万点ぐらいにまでなります。

そのため、全ての締め付けに対して測定を行うのは非常に手間がかかります。

そこで、最も一般的に用いられるボルトの締め付け方法として、
締め付けトルクがある値(規定トルク)になるようにボルトを締めることが多く、このようなボルトの締結方法を「トルク法」と呼びます。

しかし、このトルク法には注意するべき点がいくつかあり、
そこがまたボルトに関するトラブルの種となることがしばしばあります。

今回は、そんなトルク法によるボルトの締め付けに関する注意点についてお話しします。

トルク法によるボルト締結の一般的な流れ

トルク法によってボルトを締結する際は、一般的に以下の流れで行います。

  1. 固定するボルトを仮締め(ボルトの頭が座面に接する程度まで締め付け)する
  2. トルクレンチを用意し、締め付けるボルトに合わせて規定トルクに設定する
  3. トルクレンチでボルトを本締めし、トルクレンチが空回りするまで締め付ける(カチッという音がします)
  4. 合いマークをつける

規定トルク(標準締め付けトルク)の注意点

トルクレンチの設定値になるトルクの値のことを「規定トルク(標準締め付けトルク)」と言います。

ググれば、ボルトの種類ごとの規定トルクの表が簡単に入手できます。

しかし、規定トルクは以下の特性があることに注意しなければなりません。

  • ボルトの潤滑条件が違うと、規定トルクは異なる
  • ボルトの締め付けに使用した工具の種類ごとに、規定トルクは異なる

つまり、規定トルクの値を参照するときは「これらの値が何を根拠に掲載された数値なのか」ということを確認をしなくてはなりません。

もしこのような資料を思考停止で参照している場合は注意してください。
その表には必ず(参考値)という表記がされていると思います。

参考値というのは「あくまで目安でしかない」という意味です。

標準締め付けトルク、潤滑条件や、使用する工具の種類によって、この値はかなり違ってくることに注意してください。

トルク法での締め付けは、軸力のばらつきが大きい

トルク法最大のデメリットでもあるのですが、トルク法での締め付けは、同じトルクで締め付けたとしても、発生する軸力のばらつきが大きくなります。

そもそもの前提として、ボルトにかけた締め付けトルクは、その全てがボルトの軸力を発生に寄与する訳ではありません。

では、軸力の発生以外にどのようなものに締め付けトルクが寄与するかというと、「ボルト締め付け時に生じる摩擦力」に寄与します。

ボルトを締め付けようとすると、ボルトの頭と座面との間、およびネジの噛み合い部にて動摩擦力が発生します。

締め付けトルクのほとんどは、この動摩擦力に打ち勝つために使用されます。
状況にもよりますが、ボルトにかけたトルクを100%とすると、約90%が摩擦力に打ち勝つために使用され、残りの約10%しか軸力の発生に寄与しません。

ただ、摩擦力が大きいこと自体はデメリットではないのですが、
問題なのが、この摩擦力がボルトの固定箇所ごとに個体差があることです。

そのため、同じトルクで締めたとしても、
軸力の発生が大きくなるケースもあれば、
軸力の発生が小さいケースもあるのです。

ボルト挿入部を潤滑すると、ばらつきが小さくなる

ボルト挿入部に何もしない場合に比べ、潤滑油等を塗布すると、摩擦力のばらつきが小さくなります。

そのため、規定トルクでボルトを締め付けた時に発生する軸力のばらつきがある程度小さくなるため、有効な手段であると言えます。

「ボルト挿入部を潤滑すると、滑りやすくなるから、ボルトが緩みやすくなる」と思いがちですが、これは違います。

たしかに、何もしない場合に比べて摩擦係数が小さくなるため、摩擦発生面は滑りやすくなります。

しかし、摩擦力は「摩擦係数」×「垂直抗力」であるため、摩擦係数が小さいのであれば、その分垂直抗力が大きくなるようにトルクをかければ済む話になります。

それよりも、摩擦力のばらつきを抑えることができることの方が、非常に重要なのです。

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