【解説】締め付けトルクと軸力の関係式の導出(5)

ねじ

前回までは、締め付けトルクと軸力の関係式のうち、ネジ部に限定をして話をしました。

今回は、ボルトの頭(またはナット)と座面との摩擦についてお話ししていきます。

ネジ部の計算は、少々ややこしかったと思いますが、ボルトの頭(またはナット)と座面との摩擦の原理はは、割とシンプルです。

座面の摩擦力と締め付けトルク

ボルトを締めるために必要な条件は、ボルトの頭(ナット)と座面との摩擦力は以下の式で表すことができます。

$$T_w>\frac{D_w}{2}\mu_w F_a\cdots(1)$$

Tw:座面に作用する締め付けトルク
Dw:等価摩擦直径
μw:ボルトの頭(ナット)と座面との滑り摩擦係数
Fa:軸力

右辺は、締め付けトルクに対抗する力(距離×最大静止摩擦力)なので、この値を超えるように締め付けトルクを発生させれば、ボルトを締めることができます。

等価摩擦直径

ボルトの頭(ナット)と座面は「」で接しています。そのため、このままでは計算が少し複雑です。

そこでこのような場合では、面ではなく、ある一つの代表的な径を選択することで、計算をしていきます。

この径のことを「等価摩擦直径」と言います。

$$D_w=\frac{2}{3}\cdot\frac{D_o^3-D_i^3}{D_o^2-D_i^2}$$

これの導出は、積分さえ知っていれば、さほど難しくありません。

下の図の緑の領域は、ボルトの頭と座面との接触面を表しております。

この接触面のうちの微小要素に発生する摩擦力について考えます。

今、単位面積あたりpの軸力が発生しているとします。
すると、締め付けトルクに対抗する力は以下のように求めることができます。

$$\begin{align}
T_w’&=\int_{r_i}^{r_o}\int_{0}^{2\pi}r rd\theta dr \mu_w p\\
&=\mu_w p\int_{r_i}^{r_o}\int_{0}^{2\pi}r^2d\theta dr\\
&=\mu_w p\int_{r_i}^{r_o}r^2[\theta]_{0}^{2\pi} dr\\
&=2\pi\mu_w p\int_{r_i}^{r_o}r^2 dr\\
&=2\pi\mu_w p[\frac{1}{3}r^3]_{r_i}^{r_o}\\
&=\frac{2}{3}(r_o^3-r_i^3)\pi\mu_w p\cdots(2)
\end{align}$$

ここでpは、単位面積あたりの軸力なので、

$$p=\frac{F_a}{\pi(r_o^2-r_i^2)}\cdots(3)$$

となります。(3)式を(2)式に代入すると、

$$\begin{align}
T_w’&=\frac{2}{3}(r_o^3-r_i^3)\pi\mu_w\frac{F_a}{\pi(r_o^2-r_i^2)}\\
&=\frac{1}{2}\frac{2}{3}\frac{D_o^3-D_i^3}{(D_o^2-D_i^2)}\mu_w F_a\\
&=\frac{D_w}{2}\mu_w F_a
\end{align}$$

となり、(1)式の右辺の値となります。

締め付けトルクと軸力の関係のまとめ

ボルトを締めるのに必要な締め付けトルクは、ネジ部の力の関係と、ボルトの頭と座面での力の関係とを合わせて、以下の通りとなります。

$$\begin{align}
T&>\frac{D}{2}\cdot F_a(\frac{\mu_s}{cos\alpha}+\frac{P}{\pi D})+\frac{D_w}{2}\mu_w F_a\\
&=F_a(\frac{D}{2}\frac{\mu_s}{cos\alpha}+\frac{P}{2\pi}+\mu_w\frac{D_w}{2})\cdots(4)
\end{align}$$

同様に、ボルトを緩めるのに必要な締め付けトルクは、

$$\begin{align}
T>F_a(\frac{D}{2}\frac{\mu_s}{cos\alpha}-\frac{P}{2\pi}+\mu_w\frac{D_w}{2})\cdots(5)
\end{align}$$

また、締め付けトルクと軸力が釣り合っている場合、(4)(5)式の不等号が、イコールで結ばれることになります。

以上で、締め付けトルクと軸力との関係式の解説は終わります。

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