【設計者なら知っておきたい】インロー部品の加工・組立におけるポイント

設計 更新:

インローって何かと便利だから設計でどんどん使っていこうと思うんだけれど、何か注意しないといけないこととかってあるのかな

このような疑問を持った人へお答えしていきます。

私は普段機械設計の仕事をしており、現在5年目です。

私が設計するものは機械加工品が多いため、しばしばインローの構造を採用することがあります。

インローとは2つの部品がはまり合う部分において、一方が凹形、もう一方が凸形であるような入れ子構造のことをいいます。組立誤差があまり許容できないような部品を位置合わせ、組立てするのによく使われます。インローについてわからない方は以下の記事をご参照ください。

インローは組立誤差をほとんど発生させることなく組立ができるため、ほぼ設計した通りに部品を組み上げることが可能となります。

そのため、特に精密な装置を設計する際には、ついつい導入したくなる構造です。

ですが実際インローを使用する際にはいくつか注意しなければならないことがあります。

この注意点を理解しておかないと、想像以上に時間や費用がかかってしまったり、加工屋さんや組立業者から「何でこんな面倒くさいことさせるんや!」と困らせてしまったりしてしまいます(実際私はそのように怒られたことがあります・・・)。

そこで今回は、部品をインローで設計する際の注意点についてお話していきます。

この記事を読んで、スマートに設計ができるようになるために役立てていただけると幸いです。

加工費が高くなりやすい

インローを採用する場合、加工費が一気に高くなることがあります。

最近は加工する機械の性能が非常に高いのは確かですが、それでも加工における誤差の発生をゼロにすることはできません

いくつか例を挙げると、以下のとおりとなります。

  • 材料を機械にセッティングした時に、ゴミや切粉が噛み込んでしまう
  • 加工中に刃が摩耗していってしまう
  • 刃を部品に当てた時に発生する摩擦熱によって、部品が熱膨張してしまう
  • 部品の剛性が小さく、刃を当てる力によってたわみが発生してしまう

一つ一つは小さなことだと感じる人もいるかも知れませんが、精密な部品にとってはどれも致命傷になります。

さらに、加工工程で部品の付け外しが多くなるほど、加工精度が悪くなります(なるべく一度機械にセットしたら、そのまま全ての加工をすることができるような構造にすることが、設計の腕の見せどころです)。

場合によっては、失敗を見越して部品を多めに製作するような加工屋さんもいるため、その分値段が高くついてしまうのです。

出図前に加工屋さんに相談してみよう

気軽に相談できるような加工屋さんがいる場合は、出図前にシレっと加工についての相談をしてみるのがいいと思います。

部品をどのように加工したらよいかを具体的に想像しながら設計できると、優秀な設計者になることができますが、とは言っても最近のメーカーは「設計だけ自社でやって、加工は外注」という部署が多いため、設計の部署で加工に関する知識を得る機会が非常に少ないのです。

そのため「設計の知識だけしか学んでいない人が描いた図面は、加工屋さんからしてみれば実現不可能な芸術作品にしか見えない」ということがかなり多いです。

相談してみると「これをしようと思ったら倍ぐらい値段が変わるよ」とか「例えば、こういうふうにしてくれたら簡単にできると思う」と言ったように加工のプロからたくさんのアドバイスをもらうことができます。

その際のポイントは「相談は出図前にやること」です。

出図済みの状態だと、図面変更の手間(「図面を描き直す手間」+「設計変更理由を説明し承認を得る手間」+「最新図面を更新するという管理上の手間」)が発生するためです。

また、部署の縦割り文化が強い会社ですと「ベンダーとやりとりするのは資材・調達の仕事!設計は設計の業務をしろ!」なんて言われることもありますので、なるべく「こっそり」「シレっと」やりましょう。

加工屋さんが無償でちょっとした相談に乗ってくれるか・・・ということもありますので、日頃からベンダーさんとの付き合いは大切にしましょう。

加工屋さんへの相談が難しいときは、ご自身で勉強して身についけておきましょう。

加工の知識を独学で得るには、以下の図書がおすすめです。

高精度測定ができる検査装置・検査環境が必要

製作された部品は「検査」の工程を経て出荷されますが、インローのような高精度が要求されている部品を検査し、図面通りに製作されていることを証明しようと思ったら「高精度測定ができる検査装置と検査環境」が必要となります。

検査装置は目安として、測定したいオーダーのさらに10分の1の分解能が必要です。

インローの公差は少なくとも0.01mmオーダですので、直尺や一般的なノギスではまず測定することができません。

また測定は、適切な検査ができるような環境で行う必要があります。

ちゃんとした検査環境を持っているところは、検査室という「検査をする専用の部屋」が用意されており、空調を効かせて常に室温が保たれているようにしています。

このように作業場とは独立して検査室を設けることによって、異物やゴミが混入することによる測定誤差を防げたり、夏場の熱膨張や冬場の収縮の影響を低減することができます。

ひどい業者だと、錆びた直尺とノギスぐらいしか持っていないというところもありますので、製作を外注する際はそのあたりを事前に確認しておくようにしましょう。

施工がしにくい

インローははめ合わせる部品同士の遊びが非常に少ないので、組立てるときに2つの部分をキッチリ合わせないとはめ込むことができません。

特に、はめ合わせる入り口の部分を合わせるのが非常に難しいのです。

また、組むことが難しければ、分解することも難しい構造です。

締まりばめのインローを採用していたりすると、部品が「はめ殺し」状態になるので、逆さにしても部品が抜けません。

二度と分解しないのであれば気にする必要はありませんが、メンテナンスのことを考えるなら少し工夫が必要です。

凸側の先端にテーパをつけよう

インローで設計するときには、凸型の先端部分にテーパをつけるようにしましょう。

テーパとは、細長い部品において、先端側が細くなるようになっている構造のことを言います。また、先端側が細くなるように加工することを「テーパをつける」とか「テーパをかける」などと言ったりします。

テーパの角度は数°程度で構わないですが、面取りを大きめにとるのでもOKです。

このようなちょっとしたところまで配慮して設計できるようになると、周りの人から「この人はわかってるなぁー」となります。

抜きタップを設けておこう

隙間ばめのインローであれば、部品を逆さにすると抜くことができますが、それよりもキツいはめあいにしている場合は必ず「抜きタップ」を設けるようにしましょう。

抜きタップは、インローのようにはめ合わされた部品同士を分解する時に使う、タップ穴のことです。分解する時にこのタップにボルトをねじ込んでいくと、ボルトの先端が底づきした時に、ボルトがジャッキとして機能してくれるようになります。

ねじによるジャッキの力は、小さなネジでも数kNほどにまでなるので、人間の手で抜こうとするよりも圧倒的にラクに抜くことができます。

締まりばめのインローを使うときは、それなりの工具が必要なことを認識しよう

締まりばめのインローは施工が大変です。

組み立てるときには凹側の部品を加熱して熱膨張させれば組み込みやすくなりますが(焼き嵌めという)、特に分解では凹側のみ暖めることが難しいので、分解が難航しやすいです。

そのため、締まりばめのインローを使用する際は、以下のものを準備しておくようにしましょう。

まとめ

今回のポイントについてまとめると、以下の通りとなります。

  • インローは加工費が高くなりやすい
  • 製作を依頼する業者が、精密な検査装置や検査室などが備わっているかの下見は必要
  • 施工するのが大変。特に分解が大変。

今回は以上になります。ご一読ありがとうございました。


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りびぃ

この記事を書いた人

機械設計エンジニア: りびぃ

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